第6話 異議ありっ!って言ってみたい
「何か言い残すことはありますか?」
そう聞かれて私は、はっとする。慌てながら自己弁護をする。
「ち、違います!私は何もしていません!(決まり文句)そもそも何の証拠があって私を疑っているのですか!(決まり文句2)」
「証拠がないのに疑うはずないでしょう?」
「じゃ、じゃあ出してくださいよ。その証拠って言うのを!」
「いいでしょう。遅かれ早かれ出すものでしたから
そう言って目の前に立つ人間は、肩にかけているかばんを漁り出す。一応言っておくが私達が話している場所は喫茶店だ。…どうでもいいか。
「これです」
一言そう言ってテーブルにさまざまな書類を出した。それを見て私は思わず目を疑った。
「な、なんですか。これ…」
「驚くのも無理はないですね。これは私が探偵に依頼して撮ってもらった写真。次にこれが店の防犯カメラに映っていたものをコピーしたものです」
「そ、そんな…」
「これで分かりましたか?貴方の犯した罪は確定しているのです」
私はテーブルに乗り出していた上半身を元々座っていたソファに預け天井を見上げる。そして、こう一言…
「終わった……」
「ええ」
「終わりましたよ」
「貴方のバイト人生」
「クソォ」
「クソなのは貴方です。思い出してください、貴方がしでかしたことを」
「…」
「いつまでも長話する気はないので簡潔におさらいしましょう」
「…はい」
「まず貴方はレジ打ちのミスを521回、次にいたずらでブレーカーを落とすのを47回…、まぁ他にも色々とやってはいますが私もここで全て話す気はありません。もう一度聞きます、何か言い残すことはありますか?」
私は唾を飲み、息を整え、喋る。
「では、一言だけ」
「どうぞ」
「次の仕事先どうすればいいですか?」
「……」
「……」
「…え?」
「え」
「今なんて言いました?」
「いやだから次の仕事『いやいやいや』…」
「なんで仕事紹介してもらえる前提なんですか」
「普通は…」
「普通も何もないですから。貴方がしたことわかってます?あんなことした人紹介出来ませんよ、普通は」
そう言うものなのか?でも最初のバイト先は紹介してくれたぞ?
「もし、あの時は…、とか思っているなら大間違いですよ?おそらくですがそのひとは貴方が再犯するなんて思ってなかったんだと私は考えます」
「ぬぅ…」
「…もうそろそろ帰りたいのですが」
「あ、はい」
「では」
そう言って席を後にする。
「はぁ、これは」
「完敗だな……」そう言って私は帰路に着いた。
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