第5話 尊敬するよ…(以下略
「なぁ、本気で言ってんのか?」
「?ああ」
「……」
私は目の前に立つ男(と言っても同年代)に一言、そう答えた。私とて大層な覚悟があるわけでもない。ただ目の前にある惨状に全力を尽くして立ち向かうだけだ。
「お前の覚悟は尊敬するよ、でもな、その覚悟は…違うと俺は思うんだ」
「…なんでそんなに貴方が否定するかは知らない、ただ一言言わせてくれ」
「…なんだ?」
そうだ。たった一言、一言言うだけでいいんだ。
「俺は何も悪くない!」
「……いや」
「?」
「お前は……」
「お前はその…」
「お前はその逆だよ!」
へ?
「なんかさっきからスッゲェ覚悟決めてる感じしてたけど、お前今から何一つとして、いいことしようとしてないからな!」
へ?
「お前なんで俺んちの食いもん食い荒らした挙句、至る所にゲロ撒き散らしてんだよ!」
「ん?ああ、確かにそんなことしましたね。でも、そんなことで…「そんなことじゃねえよ!」…」
「しかもお前今から帰ろうしてたよな?」
「はあ、そんなわけないじゃないですか。隣町のホームセンターまで行って色々と必要なものを買ってこようと…「あるから」…」
……。
「食べ物、買ってきましょうか?ほら見てください、全然ないじゃないですかぁ」
「いや、お前のせいだから?」
「ははっ、……はぁ」
「あからさまに『クソォ…』みたいな顔してんじゃねえよ。片付けはしてもらうからな?」
そ、んな…………(ガクッッッッ)
「マジでお前反省してねえのな、てか、なんでこんなことしたんだよ?」
「それは……」
「それは?」
「食費を抑えるためです!」
「………」
「………」
「よし、お前がとことんクズだということは、はっっっっきりと理解した。それで、だ」
「?」
「なんでお前平然と飯食ってんだ?」
「ん?ああ、棚漁ってる時に引換券があったんで。それで」
「やってること犯罪だから!どうして…どうしてこんなにもクズなんだ、お前…。逆に尊敬するよ…」
「?あ、ありがとうございます!」
「……」
「もう、帰ってくれ。掃除は俺がやっとくから」
…ガチャッッッ…
これは……
「勝った……」
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