第2話 大豪邸
「私が大貴族の令嬢!?」
クハルと別れる時、自分がこの世界で何者か知りたいと言ったら、都市部であるオルオという街に行くといいと言われやって来ると、「ミーヤさん!」と何人もから声を掛けられて一瞬で情報が集まった。
「そうですよ! マクライア家のご令嬢、皆からお姫様と慕われる聖女ミーヤ・マクライア様です!」
興奮して説明してくれる男性に若干引きつつも、近くにあった鏡を見て納得した。
サラサラの金髪に大きく愛らしい深い海を
これは……推せる。
「どうなされたのだ?」
「どうやら記憶が混乱しているらしい。自分の名前も街の名前も分からないそうだ」
「なんとお
「使者はもう送ってあるよ」
時が経つにつれて人垣がどんどん厚くなる。こんなに注目されたことは今まで無かったので、さすがに気恥ずかしい。
と、遠くから「マクライア様がご到着なされたぞ!」と大きな声が聞こえたかと思うと、まるでモーゼの海割りのように人垣が左右に割れ道が開かれた。
「ミーヤ、無事でなによりだ」
おそらく私、ミーヤの父親だと思われる30代半ばの男性が私を抱き締めた。
「えっと……」
「話には聞いている。記憶が混乱しているんだって?」
「はい……」
本当は違うけど、こんなにも暖かく優しそうな父親に迷惑はかけたくない。なのでミーヤを演じることにした。
「心配ない、医者に声をかけてある。家に帰ろう。皆さんもありがとうございました! 少ないですが、ささやかなお礼です。受け取ってください!」
と言って、父親はコインのような物を人垣になっていた全員に配っていた。気前の良さ、人柄の良さがすごく分かる。嫌味や
「ありがとうございます!」
「ミーヤ様お大事に!」
「お気をつけて!」
馬車に乗り、この場を後にする。馬車なんて初体験だ。
オルオの人たちに触れて、ミーヤが愛されているのが
こんな世界、夢見たいだ。今までとは大違い。もしかしてどっきりカメラじゃないかしら? と何回か周りをキョロキョロと見るけど何もない。
「さあ、着いたぞ。ここがミーヤの家だ」
「えぇ……」
まさかの超超超大豪邸だった。いや、大貴族だって聞いてはいたけど、こんなにもすごいなんて……想像の斜め上を軽く100倍は超えてる。だってそもそも門が10メートルくらいの高さあるし、建物が遠い。日本だったら固定資産税すごそうだなぁ。ていうか日本にこんな土地無いか。
「侍女のマーヤには話を伝えてある。周りも上手くやってくれるだろう」
「マーヤ……?」
「そうだ。なにか分からない事があったら、マーヤに聞くといい」
「えっと、お父様……?」
「はは、呼びにくかったら思い出すまで好きに呼んでいいよ。私はオノルだ」
「オノルさん?」
「ああ。オノル・マクライアだ。よろしくね、お姫様」
「――!」
そう言って私の手の甲にキスをするオノル。初めての事で顔が真っ赤になってしまった。
「なんだか娘という気がしないね、可愛いお嬢さんとデートしてる気分だ。ははは」
「えっ。わ、私も、オノルさん素敵だと思いますよ」
「本当かい? はは、嬉しいな」
もしかしたら、本当はもうミーヤという女性はいないと気づいているんじゃないかな? そう思わせるほどにオノルは一人の女性相手のように接してくれた。
「旦那様、いくらお嬢様が分からないからって、手を出しちゃいけませんよ?」
「おいおい、私はそんなに信用無いか?」
運転手の際どいジョークに笑うオノルは、けっこう楽しそうだった。
家というよりもはやホテルのような建物に入ると、メイドさんがいっぱい並んで「おかえりなさいませ、ミーヤお嬢様」と言う、映画などでしか見たことがない光景があった。
「た、ただいま……」
申し訳ないけど引いた。こんなの幼い頃から当たり前じゃないと恥ずかしくなるわ。
「おかえりなさいませ、ミーヤお嬢様」
一人、美しいメイドさんが前に出て所作美しく挨拶する。
「ただいま。……あなたがマーヤ?」
「はい。そうです。ミーヤお嬢様の身の回りのお世話をさせていただいています」
「そうなんだ、よろしくね。じゃあ、とりあえず私の部屋に案内してください」
「かしこまりました。ご案内致します」
マーヤに付いて行って3階まで上がると、「こちらでございます」と言われた。
え? まさか廊下……じゃないよね? もしかして侍女にイジメられてる?
「あの……ここって?」
「3階が全てミーヤお嬢様のお部屋でございます」
「……え?」
待って、理解が追いつかない。なんて言った?
適当な部屋を選びドアを開けると、そこには高級ホテルの一室のような広く快適な空間だった。
「わぁ……」
真っ白なシーツの天蓋付きキングサイズベッド、歩くと分かる高級絨毯、窓からは絶景のオーシャンビュー。ていうかここって海が近かったんだ。
「……え? ここが私の部屋?」
「はい。ここも
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