偽りの王子
そらり@月宮悠人
第1話 お花畑
交通事故で意識を失った私は、気づいたら見たことのない一面花畑に座り込んでいた。
「……あれ? 私は確か交差点で車に――!」
そこまで思い出してゾッと鳥肌が立つ。
そうだ、私は車に轢かれたんだ。飲酒なのか発狂なのか故障なのかは分からないけど、暴走した乗用車がものすごいスピードで横断歩道に突っ込んで来て……。
「……?」
でも、そうだとしたら、どうして私は花畑なんかに? 道路に横たわっているか、救急車の中か、病院のベッドの上のはず。こんな観光地のような場所にいるはずがない。
「やあ、目が覚めたかい?」
「――!」
声に振り向くと、後ろにイケメンの青年……少年? 男性が立っていた。民族衣装のような服を着ている。
「誰?」
「ああ、これは失礼した。僕はクハル。君は?」
「……宮野」
「ミヤノか、面白い名だ」
そんなに面白いかな? クハルのほうが面白いけど。なんて言いたかったけど飲み込んだ。
「なにしてたの?」
「僕かい? 僕は君を見ていたよ」
「ふーん」
普段ならゾッとするようなセリフなんだけど、なぜだかそんなに悪い気はしない。
「あ、そうだ。ねぇ、ここってどこ?」
「ここ? おかしなことを聞くね。ルーハル草原だよ」
「ルーハル草原?」
まったくもって聞いたこともない。ルーハルというからには外国の? いやいや、どうして交通事故に遭ってこんな外国の花畑にいるのよ。その過程がスッポリ抜けちゃってるじゃない。
もしかして、しばらく意識が戻らないうちに療養のために外国へ連れて来られた? でもウチの両親がそんなことするとは思えないけど。
「国は? スイス? ドイツ?」
「スイス……ドイツ? 聞いたことない国を知ってるんだな。どこかの小国かい?」
「えっ、小国……?」
「ここはルニーハ王国だよ、ミヤノ」
「ルニーハ?」
なんだそれは、聞いたことない。そんな国あったかな? もしかして最近できたとか? いやいや、そんな話あったら絶対ニュースになってるでしょ。
「うーん、じゃあ、近隣の国教えて!」
「近隣の? いいよ。カニッサとボークロとガンザニアとダークロだ」
「……全っ然聞いたこともない」
「……君はいったい、どこから来たんだ?」
「日本よ」
「ニホン?」
「あのさ、もしかしてだけどさ、アメリカとかイギリスとかヨーロッパとか、知らない?」
「うーん、……初耳だ」
ウソ……。
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