あべこべ世界で配信者

ヴぃーたー

1話

朝、気が付くと男女の価値観が逆転していた。

ニュース番組では女が男を襲う事件を取り扱っており男子キャスターが人気を集めていた。



自分はオタクであり、SSも嗜んでいたため直ぐに状況を把握した。

ここはあべこべ世界だと!

これは選択肢は選り取り見取りじゃないか!

残念なのは自分は一人暮らしで絶賛ニート中。

学校などでの出会いがないじゃないか!

幸い親からの仕送りはあり自由に行動できる。

ここは小説にならってビッチムーブからの逆レイプなど狙うか…?

街に繰り出せばナンパの一つや二つされるだろう。

男は度胸、やってやるぜ!!



駄目でした。

ナンパはされたさ…しかしニートにビッチムーブなんて繰り出せるわけねぇよなぁ!

逃げ帰ってきた俺は悩み別の行動に移す事にした。

配信者になろう と

直接対面しなければいけるはずだと。



PCの前に座り、配信の準備を進める。

いくら男といっても初配信では人は集まらないだろう。

故に一人でも場を持たせられることの出来るゲーム配信を選んだ。

さぁここが勝負の時、俺は震える手で配信開始のボタンをクリックした。




「はじめまして!コウと言います!初配信ですがよろしくお願いします!」


視聴者は10名程度、きっと大人気ゲームを配信するということで集まったのだろう。

プレイするゲームはデッドバイバイ、生存者4名、殺人鬼1名に分かれての鬼ごっこのようなものだ。


『初見』 『男性ですか?』 



「早速、コメントありがとうございます!初見さんいらっしゃい!男性ですよ。

よろしくお願いしますね。

このゲーム、初めてプレイするのでアドバイスなどくれると助かります!」


『男性配信者って珍しいね』 『顔出ししてー』 『生存者で悲鳴期待』 『アドバイス任せて』『大和男児って感じだね』


大和男児は大和撫子のようなものだ。


「コメントありがとう!性別は男ですよ。顔出しはしないです。アドバイス有難うございます。早速プレイしていきますね。生存者でプレイしていきますよ。」


早速マッチングを開始し、ゲームが始まる。

生存者は発電機を直し脱出を目指し、殺人鬼は文字道理、こちらを殺せば勝利だ。

ゲームはあまりやったことないけどどうなるか…




「うおおおおおおおおおお、誰か助けて!死んじゃう!死んじゃう!」


『草』 『この悲鳴は男だわ』 『ガチ悲鳴で草』 『鼓膜破れた』



今、ゲーム内で殺人鬼に追い回されてるけどガチで怖ええよ!後ろからチェーンソーの音がブーンブーンと鳴ってる!



「いつまで経っても、追いかけてくるんだけど!味方助けてくれよぉ!!頼むから!お願いだから!てか味方どこなんだよぉ!!」


『ぐるぐる回ってたら逃げれるわけないんだよなぁ』 『味方が助けてくれるゲームじゃないゾ』 『道中にある板倒して距離とってから隠れるといいよ』 

『味方頼りだして草』



「板ってどこにあるんだよぉ!あっ…あぁぁ」


板を探して走りまわっていたところ、チェーンソーに切られてやられてしまった…難しいし板探すのなんて無理なんだけど!



『あっエッロ』 『リピートしなきゃ』 『子宮が疼く』 『早速死んでて草』『まだチャンスあるから』『味方が助けてくれるの信じろ』


ゲーム内のキャラが貼り付けにされ苦しんでいるがどうやらまだチャンスはあるらしい。

てかエッロって…意識してないのにこういうの言われると男でも恥ずかしいな…


「張り付けにされてもまだチャンスがあるんですね。アドバイスありがとうー味方は助けに来てくれるかな…」


来ませんでした。 ずっと近くに殺人鬼いたからね仕方ないね。

分かってはいたけど早速無残な結果に…


「あぁ…死んでしまいました。初配信という事もあり疲れてしまったので今日はここまでにします。また見に来てくれると嬉しいです。それじゃあさようなら!」  


『もう終わりか…』 『いかないで』 『初配信で疲れたいうてるししゃーない』 『面白かったよ!』 『またホラーやって悲鳴聞かせて』


配信終了ボタンをクリックし、一息つく。短時間の放送だったのに非常に疲れた。画面越しでもここまでダメージが来るとは…!

しかし、人から反応もらえるのは嬉しかったなぁ、今後も続けていこう!

そしてコミュ症克服したら街に今度こそ繰り出すんだ…






 

 男性配信者捜索スレパート8



243:6ちゃんから名無しがお送りします

新人男性配信者きたぞ


245:6ちゃんから名無しがお送りします

釣り乙


247:6ちゃんから名無しがお送りします

はい アーカイブ

https://yourdouga.com/v98492434id


251:6ちゃんから名無しがお送りします

悲鳴聞いた感じ男っぽい

まじで本物?


256:6ちゃんから名無しがお送りします

言葉遣い基本丁寧で大和男児って感じするわね


259:6ちゃんから名無しがお送りします

キラーにやられた所エッッッ


263:6ちゃんから名無しがお送りします

》256

初配信だから緊張してるだけでしょ


266:6ちゃんから名無しがお送りします

緊張してる男の子イイワァ


270:6ちゃんから名無しがお送りします

あー私も男とゲームしたい


272:6ちゃんから名無しがお送りします

》270

分かりみが深い


275:6ちゃんから名無しがお送りします

視聴者参加型ゲームを提案しまくればわんちゃん男の子とゲームができる…?


278:6ちゃんから名無しがお送りします

本格ホラーでもっと悲鳴が聞きたいんですけど


281:6ちゃんから名無しがお送りします

顔出しはしないのかなぁ 


284:6ちゃんから名無しがお送りします

オフ会はまだですか?


288:6ちゃんから名無しがお送りします

》284

気早すぎワロタ


291:6ちゃんから名無しがお送りします

男性と触れ合うチャンスほしい…ほしくない?


292:6ちゃんから名無しがお送りします

》291

配信見るだけで我慢しておきなさい


295:6ちゃんから名無しがお送りします

まだ初配信のアーカイブしかないんだよなぁ

毎時配信して


299:6ちゃんから名無しがお送りします

お前らあんまりがっつくなよ

本当に男性だったらすぐ消えちゃうぞ


302:6ちゃんから名無しがお送りします

スパチャとか実装しないのかな

実装されたらお金を口実に…


304:6ちゃんから名無しがお送りします

》302

はい 事案









初配信が終わり、休憩してから掲示板を漁ってたら俺の事もう話題になってる…

このあべこべ世界を深く知るために見てたんだけどな。

もう話題になるとか嬉しはずかしだなぁ。


しかしこの世界の女たち予想以上に飢えてやがる…

顔出ししてオフ会…

街に繰り出すより難易度低いかも知れねぇな。

配信の事が話題にできるしな!

そしてオフ会といえばオフパコ。

これで俺もこの世界で羽ばたける…!

駆け抜けろ…!俺…!!


とりあえず配信もっと頑張らないとな。

視聴者参加型やホラーゲームか。

視聴者参加型だと姫プレイが出来るのか。

男としてなんだかもやっとするがゲーム下手だしな…視聴者参加型だと、どんだけヤル気だしても姫プになっちまうか…

ホラーゲームも捨てがたいな

悲鳴で男認定してくれてるようだし、もっと信憑性を持たせるためにやるのはありだな。

しかし本格ホラーゲームって一体どんなのなんだ…?

前やったゲームですら怖かったし正直やりたくねぇ…


顔出し出来れば手っ取り早いが度胸がでねぇよ。

配信前に街に繰り出した時、ナンパはされたから顔の造形は問題ないはず!

まぁ、あの時はつい逃げちまったんだけど。

話題があれば行けるはずだ!










 

初配信から2週間が経ち、視聴者数が激増した。

このあべこべ世界では男性配信者は珍しく、そこに掲示板などで話題にされたことが原因のようだ。

俺も6回ほど配信を行い、ゲーム配信者としては多少の知名度を得た。

ゲームの腕がからっきしなのが悲しいけどね…


そして、視聴者の意見をフィードバックするべくメールアドレスも作り公開した。

エゴサは下ネタが激しく、流石の俺でもSAN値削られちまう…

男性というだけで、ゲームの腕がからっきしなのも指摘されると悲しいし…


ある程度の知名度を得たのにオフ会はまだなのは、きっかけがなかったからだ。

決して勇気が出なかった訳じゃない。


メールを確認していくと、


『貴方の事が好きなんです!会いませんか?』


『最新の配信機材買ってあげるから、一度会ってみない?』


『いつも配信楽しく見させてもらってます。貴方の配信のお陰でお仕事頑張れます!』


『オフ会などしてみる事に興味はありませんか?こちらで計画を立てますよ。』


などと言った内容がどんどん出てくる。

たまに来る、まともな内容に心が温かくなるのを感じる。

正直、配信は女の子との触れ合いが目的だったが、純粋な応援は心に響く。

女の子とつながりたいという気持ちにブレはないが、配信にも、もっと頑張りたい、楽しませたいという気持ちが生まれてきた。


メールを消化していくと一つ気になった内容があった。


『はじめまして!咲リリムいいます!私もゲーム配信をしてるんですが、コラボしませんか?ご連絡待ってますね!』


咲リリムは中堅ゲーム配信者だ。明るくゲームを楽しむ姿を配信し人気をえている。

俺も配信の参考にと見たことがある相手だ。

コラボすればリリムさんと知り合えるだけでなく配信にもプラスになる。

リリムさんは顔こそ分からないが、楽しくゲームをしてる姿は魅力的で声も可愛く是非知り合いたかった。

俺は早速、了承のメールを送った。


『お返事ありがとうございます!了承してくださって本当にうれしいです!一緒になんのゲームをやるかなどコラボの詳細を決めたいのでスカイコードで話しませんか?』


スカイコードは無料で通話ができるツールだ。

俺は少し悩んだが、通話するだけだしと勇気を出して通話することにした。



「はじめまして、コウと言います。今回はコラボ誘っていただいてありがとうございます。」


「こちらこそはじめまして!咲リリムといいます!いやー、一度男の人とゲームするのって夢だったんだよね!コラボ受けてくれて本当に嬉しいです。

今回一緒にやるゲームは人気の協力ゲームのレフト3オブザデッドとかどうかなって思ってるんですが、どうですか?」



自分は持ってなく、やったこともないゲームだったがプレイしている配信を見たことがある。

非常に面白そうだったし、ここで断ってコラボ前に水を差すのもためらわれた。



「大丈夫ですよ。ただ自分そのゲームあまりやったことがなくて…足を引っ張ってしまうと思いますけど…」


「問題ないですよー。コウさんの配信はいつも見させてもらってますからゲームの腕があまりよくないのもしってますからねっ」


「そう言ってもらえると助かります」



その後日時など細かい所を決め、通話はお開きとなった。

リリムさん、本当に明るい人で、声も可愛いし楽しみだな。

俺もコラボが待ち遠しく、少しだけ練習してその日をまっていた。



そしてコラボ当日

ついにコラボ配信が始まった。

配信は相手のチャンネルで行い自分はゲストとして登場する形だ。


「みなさんこんばんわー! 咲リリムだよっ!今日はね、前から告知していたとうりコラボ配信ですよー」


『コウの初コラボ期待』 『リリムちゃんどうやってコウ誘ったの?』 『このコラボ配信むっちゃ楽しみしてた』 


「それじゃ皆さっそくまってるみたいだしゲストよんじゃうねーコウさんどうぞー!」


「皆さんこんばんは。コウです。今回はリリムさんからお誘いいただきこのコラボとなりました。自分はあまりゲームが上手くないので迷惑かけたらごめんねリリムさん」


「ぜんぜん問題ないですよー。このゲームはハチャメチャしながら楽しむものですしね。気楽にたのしみましょうっ!」


『コウキター』 『リリム通話しててむっちゃうらやましいんだけど』 『コウはゲームまーじ下手だからね…リリムちゃんがどこまでフォローできるか期待』


早速ゲームを始めていく。

今回のゲームは俺とリリムさん、そして人数の都合上NPCが一人の3人でゾンビに溢れかえった街から脱出するのが目的のゲームだ。

互いにフォローしながら時には貴重な回復すら相手に使いみんなで脱出を目指す。

出来る限り足を引っ張らないように頑張らないとな



「リリムさーん!ゾンビが大量にきて…!助けて!」


「パイプボム投げるから今のうちに壁を背にすると楽ですよー頑張っていきましょ!」


『安定のクソ雑魚ムーブ』 『コラボ先でも人頼み』 『リリムはやっぱ安定してるね』 『リリムちゃんは介護しきれるのか?!』



「女の人の鳴き声がする…生存者とかいましたっけ?リリムさん」


「それはくっそ強いゾンビですから近づいたりしたら駄目ですよ!コウさん!」


「えっ…」


『コウ、早速ウィッチに襲われてて草』 『クソ雑魚すぎへん?』 『悲報 リリムでも介護しきれない』


ウィッチは近づかないと無害だが近づくと突如襲ってくる非常に強いゾンビだ。

俺が少しやったときはこんなの出てこなかったのに…

俺が死んだことで戦線は崩壊し、今回はゲームオーバーになってしまった。

俺が死んだまま進行することをリリムさんが考慮してくれたのかもしれないな


「今回は残念な結果になってしましたっ!でもむっちゃたのしかったですっ!!」


「足を引っ張って申し訳ないです、リリムさん。でも俺も凄く楽しかったです。またコラボやりたいですね!」


「そういってもらえると嬉しいです!次はクリア目指したいですね!」


『もうおしまいか』 『いかないで』 『リリコウ てぇてぇ』 『コウは私の夫だから』



無事コラボ放送が終わり、コラボに誘ってくれた礼をリリムさんに送る。



「リリムさん今回は本当にコラボ誘っていただいてありがとうございました。凄く楽しかったです!でも、最後はご迷惑おかけして申し訳ないです。」


「こちらこそ受けていただいてありがとう!私もむっちゃ楽しかったよっ!そうだ!良かったら定期的にコラボしませんか?一緒にゲームしてたら腕前もあがるだろうし!」



定期的にコラボか…リリムさんと定期的に遊べるというはそれだけで魅力的だし、ゲームも上手くなりたかった自分には渡りに船の提案だった。


「いいんですかリリムさん!ぜひお願いしたいです。」


「いえいえ、コウさんと一緒にゲームするの楽しいですし、色んなゲームやっていきたいですねっ!」


そうして、リリムさんと定期的にコラボすることが決定した。

ついにできた女の子との繋がり、これを大事にしていきたいなぁ

リリムさんとのコラボのお陰で視聴者も増えるだろうし配信にとってもプラスだし良い事づくめだな!

ゲームに関しては…頑張ろう…







咲リリムは非常に緊張していた。

最近話題の男性ゲーム配信者コウにコラボのお誘いのメールを送ったのだ。


つい、興奮してメールを送ったのはいいけど、流石に受けてくれないだろうなー

男性と一緒にゲームしたかったし、仲良くなってあわよくば…

そう思ったけど、今になって冷静になってきちゃったよぉ

ゲームしてる男性なんて滅多にいないし、仲良くなりたいなぁ


送った時から細かくメールチェックをしてしまっているが、やはりメールが返ってくることはなく柄にもなく落ち込んでいた。

ゲリラ配信でもして気分転換でもしようかな。

そう思っていたいたとき、待ち望んでいたメールアドレスが目に飛び込んできた。

コウからの返信だ。

コラボを受けてくれるという内容を読み、歓喜に震える。


やった!優勝した!!

私もついに男性と接点が!!

いや~我が世の春がきちゃうなー

って浮かれてるだけじゃダメだよねっ。

ちゃんとコラボの内容考えないと。

通話して打ち合わせできるよね…コラボ受けてくれたんだし!


そして無事、通話も受諾され、短時間ながらも会話をすることが出来た。


配信外でもちゃんと対応してくれる…聖人かな。

よしっ!コウさんはゲーム下手なのは知ってるし、私がカッコよく守ってあげなきゃ!






守れなかったよぉ…

でも結局守れなかったのに優しいし、コウさんまたコラボしたいって言ってくれたし、わんちゃんあるのではー

コウさんの優しさがドバドバでやばいよ、ガチ恋しちゃうよぉ

もっと仲良くなりたいよぉ

男性と触れ合える機会なんて、めったにおとずれないし、粗相してなかったらいいけど。


初コラボも終わったんだし、初コラボの打ち上げで通話誘ってみようかな。

来てくれるといいけど…


早速チャットで打ち上げをしませんか?という旨を送り、返信を待つ。

コウからもすぐに返信がきて、答えはYESだった。


「お疲れ様でーす!コウさん。通話受けてくれてありがとねっ!」


「お疲れ様です、リリムさん。こちらこそ誘ってくれてありがとう」


「初コラボどうだった?」


「凄く楽しかったですよ。本当にまたやりたいですね。良かったら配信外でもゲームしたりしませんか?」


「ほんと!!?あっ急に大声だしてごめんね。男性から誘われるとは思ってなかったから。」


「本当ですよ。俺はここで落ちるのでまた遊びましょう!」



通話が切れ、私の心は喜びに塗りつぶされる。

男性とまともに話したことすら無かったのに、コウさんは私とゲームして楽しいと、オフでもまた遊ぼうと行ってくれたのだ。

私は次はどんなゲームをしようか、どんな話をしたら喜んでくれるか暫く悩むことになるのだった。





コウも通話を終え、非常に疲れていた。


俺からオフでも遊ぶ約束を取り付けたぞ…勢いに任せすぎて具体的な日時決めれなかったが、ここから頑張ればなんとかなるはずだ。

このまま仲良くなれば、オフで会うことだって出来るかもしれない。


いや、あべこべ世界のここなら向こうから誘ってすることだってあるかもしれない。

期待に胸を膨らませつつも、もっと仲良くなるために緊張したら出る取って付けたような丁寧語止めないとなぁと考えるも、緊張しない方法が思い付かない…

一体どうすれば緊張せずにすむのだろうか。


まずは配信で慣れていくしかないかな、中々難しいな。

数をこなせばきっとなおるかな。


しかし、数こなしてたらリリムさん誘えないし…いやまぁ誘うにしてもどうやって誘おうか…

やはり接点のゲームで攻めるべきかしかしゲーム下手だしカッコ悪いところ見せたくないしな。

リスナーにゲームのコツでも教えてもらうしか…

とりあえず頑張るしかないな、ゲームもリリムさんのことも。   








今日もいつも通り配信をする。

最近は視聴者数も右肩上がりで俺としても非常に嬉しい。

リリムさんとの通話の後、とってつけたような丁寧語をやめようと日夜頑張っているが未だにとれないのは悩み所だが。



「こんばんは。今日もゲーム配信をやっていこうと思います。」


『こんばんは』『今日は何のゲームだろ』『クソザコムーブ期待』


「今日はイビルハザード7をやります。ゾンビゲーの人気シリーズで最近はアクションになったと聞いてやってみたかったんですよね。」


『あっ(察し』 『今回ホラー要素モリモリなんだよなぁ』 『VR版?』 『これは死にましたね…』


「今回はVR版をやろうと思います。VRでの大作ゲームやってみたかったんですよね。」


『確実に死んだわ』 『VR版は想像を絶する怖さなんだよなぁ』『ガチ悲鳴きけるぞやったね』『悲鳴全裸待機』


今回やるゲームは、イビルハザード7。

もとはゾンビゲーのサバイバル物だったが、4からアクション要素が強くなり、代わりに怖さが薄れた作品でもある。

これなら自分でもできるだろうと思い、選択したのだ。


「お、早速目的の彼女見つけましたね。もう終わりかなー?」


『早速イきり』 『こっからどんどん怖くなっていくんだよなぁ』 『もうすぐ叫ぶぞきっと』


「彼女消えたと思ったらいきなり豹変して襲い掛かってきたんだけどこえェ!」


『ヤンデレ彼女』 『はいクソザコ』 『いつから彼女が味方だと錯覚していた?』


「ハンドガンきた!これで勝てるぞ!…チェーンソーは卑怯だろう!?」


『つよつよAIMだと・・・』 『VRだからね』 『なお攻撃は避けれない模様』


「やった倒した!これで脱出できるぞ!

うわぁぁぁ、なんかおっさんに殴られたんだけど!」


『チュートリアル終了』 『ここまでチュートリアルやぞ』 『もっと悲鳴聞かせて』



「VR版怖すぎない?もう音が怖い怖すぎやめたい。」


『逃げるな』『逃げないで』『7からホラーに原点回帰したからね』


「今日は一端ここまでにします…続きはいつかきっと多分いつかやるので…」


『ガチ逃亡は草』 『声震えてて草』 『絶対続きやらないゾ』 『声震えてる男の子イイワァ』



配信を切り、VRヘッドセットを外す。

イビルハザードがこんなに怖いのは予想外でかなり精神的に消耗してしまった。

VRで、銃をぶっ放せば行けると考えてたのに…

元々早めに配信を切り上げる予定だったのでまぁ配信を早めに切り上げたのは問題ないかな。


明日は配信外で、リリムさんとゲームをする予定があるからすっごい楽しみなんだよなぁ。

昨日は楽しみで全然眠れなかったんだよね。



「リリムさんこんばんは。今日は何のゲームをしますか?」


「コウさんこんばんは!今日は今人気の戦場空間5やってみますか!」


戦場空間5はFPSの戦争ゲーの人気シリーズ最新作だ。

基本は歩兵だが、歩兵でも4種類の兵科でそれぞれ特徴があり、さらに戦闘機や戦車が跋扈するゲームだ。


「いいですね。索敵はお願いします…」


「任せてください!慣れないと中々敵を見つけるのも一苦労ですもんねっ」


情けない事に未だにゲームの腕は上達していない。

そう簡単にゲームの腕が上達する訳がないのは分かっていたが、いつまでもリリムさんにフォローしてもらうのも情けない…

しかし、リリムさんは明るくそして楽しくゲームをプレイしているので、こちらも楽しくなってくるのだ。


「少し先に戦車がいますよ、リリムさん。どうします?」


「私たちの装備じゃ戦車を相手にするのは無謀ですし、一旦引きましょうか!」


一旦前線から退却し、人の少ないであろう道を進み裏取りをする事に。

緊張感を保ちつつも、敵と出会わない時間が続く。


「そういえばコウさんは彼女とかいるんですか?」


唐突な質問にドキリとする。

緊張しながらも平静を保って答える。


「いえ、いないですよ。リリムさん」


「なら、一度、オフで会ってみませんか?それで良かったら付き合えたらなって。」


リリムさんからの急なアプローチに驚愕する。

元々は自分からアプローチを仕掛ける予定だったが、いつももっと仲良くなってからと考えて中々出来なかったんだ。


俺は了承し、その後も少しゲームをして落ちた。

しかし衝撃が大きくあまりその後のことは覚えていなかった。



「初めましてコウです。よろしくお願いします。」


「こちらこそ……私がリリムです!。よろしくお願いいたしますね!。」


ついにこの日が来た。

今日はオフでのデート。

待ち合わせ場所に行くと、既に彼女は来ていた。

「早いですね。待たせてすみません。」


「私も来たばかりなので大丈夫ですよっ。それでは行きましょうか!」


彼女の服装はとても可愛らしく、清楚さを感じさせるものだった。

「あの服似合ってますね。とても可愛いらしいと思います。」


「ありがとうございます!実は今日の為に買ったんですよ?コウさんの為に!」


「そ、そうなんですか……嬉しい限りですよ。」


「ふふっ、照れてるところも可愛いですね!」


あべこべ世界とはいえ、予想以上にグイグイくる…!

内心ビビりながらもこのチャンスを逃したくない。

「あ、リリムさんはどんな所に行きたいですか?」


「私はコウさんの好きな所で構いませんよ。コウさんは何処か行きたいところありますか?」


「俺の好きな場所でいいんですか?だったら……」


「おぉー!ここが水族館なんですね!綺麗です!」


「ここはイルカショーが有名でして……見ていきますか?あとペンギンとか」


「もちろん見ていきたいです!!でもまずはイルカからでお願いしますねっ」


「了解しました。」

イルカショーが始まり、イルカ達が華麗にジャンプしたり泳いだりする姿は圧巻の一言に尽きた。

「凄かったですね〜。次は何をみる予定でしたっけ?コウさん」


「えっと、ペンギンを見ようと思ってました。」


「ペンギン……コウさんはペンギン好きですか?」


「はい。好きですけど……どうしてそんなことを?」


「ちょっと気になっただけですよ。ほら早くいきましょ!」


ペンギンのエリアに入ると、大勢の人がいてかなり混雑していた。

「かなり混んでますね……これだとゆっくり見られないかも知れませんよ?」


「それでも良いですよ!コウさんと一緒に見るのが大事ですから……」


またグイグイ来るなぁと思いつつ、確かにゆっくりとは見られないかも知れないなと思った。

なんとかペンギンが見れる位置にたどり着いたが、リリムさんが近い!

隙あらばボディタッチをしてくる!



「わぁ、近くで見ると可愛いですね!コウさん!」


「そ、そうですね。」


心臓がバクバク言っているのを感じる。

これがリアルだったら汗だくになっていただろう。

「あっ、あっちにはアザラシがいるみたいですよ!行ってみましょっ」


「分かりました……」


何とか落ち着こうとしたが、全く無理だった。

「うぅ……ごめんなさい……。私、ついついテンションが上がってしまって。」


「いえ、気にしないでください。楽しかったので。」


「なら良かったです。次は何か見たいのありますか?」


「そうですね。少し疲れたので休憩したいです。」


「私も結構歩き回って足痛めちゃいました。じゃあそこのベンチで休みましょうか?」


「そうしましょうか。」


二人並んで座る。沈黙が少しの間続いた後、リリムさんは口を開いた。

「あの、コウさん。私の事、どう思っていますか?」


「俺は……まだ出会ったばかりですけど、あなたの事が大好きになりました。ずっと一緒に居たいと思える程に。」


「ふふっ、嬉しいですよ。私もコウさんのことが大好きです!」


「よかった……じゃあお付き合いしてくれますか?」


「はい!これから末永くよろしくお願いしますねっ!」


こうして俺はリリムさんとお付き合いすることになった。


付き合う事になったその日の夜。

俺は眠れなかった。

幸せすぎて寝れないなんて初めてだなと苦笑する。

でもこれで遂に俺もリア充への一歩を踏み出したんだ……

すると、スカイコードに着信があった。

「もしもし、コウさんこんばんはっ」


「リリムさん、こんばんは。」


「今日は付き合ってくれてありがとうございます。とっても嬉しくて幸せな一日でした!」


「こちらこそありがとうございます。俺もリリムさんと過ごせてすごく楽しい時間でした。」


「そう言って貰えて何よりです。」


「本当にありがとうございます。リリムさん。」


「いえいえ、こちらこそ。」


「それでは、おやすみなさい。」


「おやすみなさい、コウさん。」


リリムさんとの通話を切り、布団に入る。

そして眠りについた。

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