第九章 待ち合わせ 2-1

「遅いっ・・・!」

ようやく姿を見せた僕に向けて、妻は頬を膨らませた。


「ゴメン、ゴメン・・・」

流れる汗をハンカチで拭いながら近づいていった。


「中々、会議が終わらなくて・・・。」

背の高い僕は190㎝の身体を窮屈そうに折り曲げて、妻を見つめた。


あの頃の僕とは、正反対の身長だ。

僕達はは去年、結婚した。


幸せな新婚生活だが、時折、脳裏に浮かぶ切ない記憶に胸がキュンとなる。

小さかった僕の切ない記憶が、何度も思い出されるからだ。


由美が、今では僕の妻になった彼女が腕をとり、甘い声を出す。


「今日は、どこへ連れてってくれるの・・・?」

「言ったろ、プールさ・・・水着、持ってきた・・・?」

「さっき、買ったばかり・・・見たい・・・?」


巷のカップル以上に、何だかなぁ的に甘えてくれる。

最高に嬉しい。


幸せの温もりに包まれ、僕達はプールに向かっていった。



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