第62話もう僕に構わないで!

あれから美怜さんとは一言も喋っていない。

「まさ、夜ご飯は?」

「勝手に食べました」

「そう」

僕は部屋から出れずにいた。


もう疲れた。ニコニコしている自分も、誰かを好きになるのも。

もう美怜さんには頼ってはダメだ。

今まで甘えすぎていた。

中学校の頃の僕が見ればきっと嘲笑うだろう。


って。


「やっぱり僕は…」

苦しい人生を送るのがお似合いだ。


美怜さんも僕に縛られてる。きっと僕がいたら幸せにはなれない。僕は長い夢を見ていただけ。

楽しくて、ドキドキした長い夢。


もうそろそろ覚めないといけない。


僕は服や食料を適当に詰め込んで、美怜さんにバレないように部屋から出た。

「さようなら」


僕は走り出した。

ただひたすらに。できるだけ遠くに。


~~~~~~~~~

「まさは大丈夫か?」

「正直に言うとあれは大丈夫じゃない。恐らくあいつらに何か吹き込まれたのかもしれない」

「そうか。多分あいつらはまさの地位に嫉妬して精神的に追い詰めていったんだろう。

くそ、あいつら…。とりあえず私もシーナと一緒にそっちに向かう。なるべくまさに寄り添ってあげるんだぞ」

「分かりました」


私のせいだ… もっと注意しておけば。

私がまさと一緒に作業するから無理とでも言えば…

まさはこういう時自分自身で抱え込む。どんどん自己嫌悪になっていくと思う。

嫌な予感がする…


「まさ?大丈夫?」

反応がない。

「開けるよ?」

ドアを開けるがそこにまさの姿はない。

「私が電話している間に…」

遅かったか…。


「SP 周囲の状況は?」

「今追跡中です。見つからないように見張ります」

「頼んだ」

最悪の場合を想定しておいて良かった。

もう私は君を離さない。何があろうと。


~~~~~~~~~~


「はぁ…」

気づけば僕は前にみんなで来た海に着いた。

今は誰もいない。ただ満月の明かりが海面を照らしているだけ。


僕は座り込んだ。

「これからどうしよう」

まずはどこかで働き口を見つけないと。

それから…は…

「もういいや。今はやめよう」

今は何も考えたくない。


疲れた…体力的にも精神的にも。

「もう…全部嫌だよ…」

しばらく僕はうつむいて泣いていた。


「まさ?」

「…!」

嫌だ。もう会いたくない。

「どうしたの?大丈夫?」

話しかけないで。

「顔を上げて欲しいな」

「もう僕に構わないで!僕はもう美怜さんとはいたくない!1人で…勝手に生きていくから…もう…う」

言いかけたところで強く抱きしめられる。

「君は1人じゃない。私がいる。」

「でも、美怜さんは…いつか僕のこと捨てるんでしょ!分かってるから!だったら早く捨てればいいじゃん!早く新しい人見つけて…それで…!」


「好きな人を捨てる?私がそんなことするはずがない」

抱きしめるのをやめて僕の顔を見る。

「それでも僕は普通の人じゃないんだよ?親にも捨てられて、僕の心なんてとっくに壊れきってるんだよ?そんなやつなんて…もう相手にするだけ…っ!」


パチンッ!


脳天に衝撃が走った。頬が少し熱くなったことにすぐに気づけなかった。


「本気で別れたいの…?なんでそんなに自分を卑下するようなこと言うの…?」

「だって僕なんか魅力のない人だし…」


すると両肩を掴まれた。


「私から見たら君は魅力しかないよ。毎日可愛い笑顔を見せてくれるし、私や友達、誰にでも優しくしてくれるところとか、たまにかっこいいところ見せてくれたりするんだよ?

そんな人に魅力ないなんて有り得ないよ。」


「でも僕めんどくさいよ?すぐこうやって泣くし、すぐ逃げようとするし、それに…」

また美怜さんに強く抱きしめられる。


「めんどくさくなんかない。泣いても私がすぐ慰める。辛いことがあったら私に任せて。何でも対処する。だから1人で抱え込まないで?


。」


僕はさっきよりも視界が歪んで見える。もうほぼ涙のせいで何も見えない。


「美怜さん。僕…僕…!」

しゃくり上げてきて口が利かない。

「もっと早くこうするべきだったね。私も臆病になってた。ごめんね。」

僕はしばらく嗚咽を漏らしながら美怜さんの胸で泣いた。


《今から爆速でもう1話作ります!》

追記・疲れて無理でしたすみませんm(_ _)m







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