第57話咲姉ちゃんと雅也の出会い

「はぁ〜私も夜ご飯一緒に食べたかったな〜」

そう言って窓の外に映るビル街を眺める。

「着きました」

「ありがとう。帰りもよろしくね」

とサングラスをつけた男に言う。


「今日はこの場面の練習をします」

「「よろしくお願いします!」」

私は今とある劇の監督をしている。

もともとは親が運営している有名劇団で女優をしていた。

私が出る劇はどれもお客さんが満員だった。アメリカにも行ってすることもあった。

そのため母さんと父さんは私を中心とする劇団をもうひとつ作った。

もちろん私も監督しているが劇にも参加している。

演出などに関しては助監督にかなり優秀な人がいるのでその人がいろいろやってくれている。


休憩時間、

「お疲れ様です咲さん。相変わらず演技力が凄いですね」

「いえいえそれも助監督さんがいてこそです」

「私もとてもやりがいを感じていますよ。なので私的にはもう少し一緒にやりたかった」

「すみません。でももう決めたことなんです。」

そう、私は今回の劇を終えたら引退する。

テレビや取材なども受けてきたがそれもこれから全部断る。


私がお芝居する理由がなくなったからだ。


~~~~~~~~~~~~~

私は小学6年生のころ、

「佐多さん今回も満点です」

「咲ちゃんすごい!」

「何で毎回満点なのー?」

「勉強しただけ」

成績は常に良くて、運動神経も男子に負けないくらいあったおかげで学校では常に中心にいるような人物だった。先生も私だけ敬語に使ってくる人もいた。同じ歳の子よりそこそこ精神年齢は高かったと思う。

当時は口数が少なく感情を表現するのが下手だった。そのせいで劇では思うようにいってなかった。


そんなある日、その日も劇の練習帰りもう暗いというのに公園でブランコに揺れている男の子がいた。

「ちょっと停めて」

「分かりました」

「変な人が私に近づこうとしたら倒しておいて。それまでは車の中で見張ってて」

そう言って私は車を降りる。

私が近づくとその男の子はビクッと肩を震わせて

「誰ですか?」

と聞いてくる。

「私は咲。君は?」

「僕は佐藤雅也」

「何でこんな夜に公園にいるの?」

「それは…お父さんが女の人を連れて来てるから外にいろって」

「そう…なんだ」

いくら精神年齢が高い私でもこの話は荷が重すぎた。体を見るとところどころ痣が見える。

私はそれで全てを察した。

「私も隣座っていい?」

「うん。いいよ」

それから少しお話をした。歳は私の一個下で同じ小学校に通っている人だった。

「じゃあ咲姉ちゃんって呼んでいいかな?」

そう言ってニコニコしながら私に聞いてくる。

その瞬間ドキッとした。

今思えばあれが私の初恋だったのかもしれない。


「咲姉ちゃんは劇をやってるんだ」

「うん。でも私口数が少ない方だから感情を上手く表に出せなくて…」

「大丈夫だよ!今僕と楽しくできてるし、きっと恥ずかしがり屋さんになっちゃうだけだと思う!」

どう考えても彼の方が抱えているものは重いはずなのに、


「ちょっとずつできるようになっていけば良いと思う。って今日の道徳の授業で習った!…

えっと、大丈夫?咲姉ちゃん?」

「え…?」

「何で泣いてるの…?」

「そんなこと…あれ?何で私…」

私は気づいたら涙を流していた。劇では出せなかったもの。

これが「涙」なんだ。そう感じた。

「咲姉ちゃん大丈夫?これ使って」

「ありがとう」

彼は苦しい中でこうして相手のことを気遣える思いやりのある人。

同じ歳で私より大人な人はいないと思っていたけど今隣に私よりずっと大人な人がいた。


「私、劇頑張ってみるよ」

「良かった。僕もいつか咲姉ちゃんの劇見たいなー」

「その時は招待してあげる」

「本当に!?やったー!約束だよ!」


帰り道はこのまま警察に保護してもらおうか考えたけど

「やめて!それだけは…そしたらお父さんが…」

過去に警察に保護されかけた時、彼は遠回しに言っていたけど多分警察が帰った後、酷い目にあったんだと思う。

「何も騒ぎ起こさなければ、普通に生活できるから…」

「分かった…でも、苦しくなったらいつでも私に言うんだよ?」

「うん!ありがとう咲姉ちゃん!」

その日2回目私は心臓の鼓動が早くなるのを感じた。


帰りは私が車で送っていった。車の中で私が昼休み図書室にいることを伝えると

「僕、会いにいってもいい?」

と聞いてきた。

私はもちろん

「いいよ」と言った。

それから毎日昼休みは彼と一緒に本を読むことになった。

「咲姉ちゃんは物知りだね」

「そうかな?」

「僕より頭いいと思う!」

「それは私より一個下だから」

なんてくだらない話をした。


彼と話しているおかげか、感情を表に出すことが上手くできるようになった。

劇でも注目を浴びるようになり、学校での友達もたくさん増えた。


彼を劇に招待した時も

「咲姉ちゃん。凄かったよ!」

「ありがとう。どう?見てて楽しかった?」

「うん!周りのお客さんもみんな楽しそうだったよ!」

「それは良かったよ」

いつでも私を励ましてくれた。


なので私はある日の帰り、彼と帰っていて

「ありがとう」

「うん?何が?」

「雅也と出会ってから変われたと思う」

「確かに咲姉ちゃん最初より変わったと思う。なんて言うか元気になったていうか」

「うん。私もそう思う。だから何かお返しがしたいな」

「お返し?いいよ。お返しを貰うために咲姉ちゃんといるわけじゃないよ?」

「分かってる。けど、させて欲しい。」

「じゃあ、考えておくね。明日言うね」

「うん」

その次の日は卒業式。言えば私たちのお別れの日。

私は私立の中学校に行くので彼は多分公立の近くの中学校に進むだろうから一緒になることはない。

でも、春休みや中学にいっても私から会いに行けると思った。


「じゃあ咲姉ちゃんにして欲しいこと言うね。」

「うん。」

告白されるのではないかとドキドキしていた。

「【これからも劇でみんなを笑顔にして欲しい】です!」

「でも、それっていつもしていることじゃあ…」

てっきり物をプレゼントするつもりだったが彼らしいとは思った。

「でも、ずっとして欲しいっていうわけじゃないんだよ?苦しい、やりたくないって思ったら逃げ出すことも大切って道徳の授業で先生が言ってたし。」

「雅也が考えてないんだ」

と2人で笑う。

「だから、期限を作ります!」

「期限?」

「うん。ここまでは劇を頑張って欲しいなーっていうところ」

「いつまで?」

「うーんと。また僕たちが会う日まで」

「それって…?」

「じゃあ咲姉ちゃん。僕帰らないといけないから最後に指切りげんまん、しよ?」

「うん、分かった」


「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます指切った!」」

「じゃあ、またね!」

「また明日」

明日もまた3時に会えると思っていた。

でも、次の日から彼の姿はなかった。

2日たって私は雅也が引っ越したことを知った。夜逃げらしい。借金が膨らんだらしい…。

私は執事や親にお願いして情報を探したが分からなかった。


1週間は凹んだが、それからはいつか有名になったりすればまた会えると思って

私は、劇で人を笑顔にしようと頑張った。

会う頃には忘れられているかもしれない。でも、それでも私はあの約束を忘れない。


それから私は頭の良さから中学の途中からアメリカのハーべード大学にいったし、劇も頑張った。

日本に帰ってきて、劇団をつくり、沖縄で講演することになり、

親戚が泊まっている旅館があるという情報を掴み彼女と会おうと最初はそんな考えで

行ったのだが…


「かわいいね」

とお決まりの落とし文句を彼女の彼氏さんとやらに言った。

すると、その彼氏さんは昔約束した彼に似ていた。

似ているだけであって、他人だと思って、

可愛がっていたが、


まさと美怜に呼ばれていることから悟った。

聞くとやっぱり私が探し続けていた「彼」

だった。

彼女は雅也を狙って私が来たのだと誤解しているが本当に奇跡に近い、と私は感じた。


それと同時に私は彼女を羨ましいと思った。


調べると、今は彼女の親が運営している学校に通いながら執事兼彼氏をしているらしい。

あの親から解放されてとても嬉しいと思った反面、その時彼の隣が私だったらと考えてしまう。

人の彼氏に好意を抱いているのは良くないことだが今の私に違う人を好きになれる余裕はない。


せめて彼が拒絶をしてくれればと思うが彼は昔から変わらない優しさで私と接してくる。


私は海で美怜に提案をした。美怜の誤解を解こうとは考えたけど後で話そうと思い、とりあえず

「これからも、彼のことを見守らせてくれるくらいはしていい?もう悲しむ顔は見たくないから」と言った。

~~~~~~~~~~~

「お疲れ様です」

「「お疲れ様です」」

私は2人を劇に招待しようと思う。最後まで私は劇をやり遂げる。人を笑顔にする。

彼が気づいても気づかなくても私はそれで前に進んでいける。


《どういう展開にしようか2週間くらい迷ってました。いざ書くと1つの短編くらいの量になっちゃいました!また咲姉ちゃんと呼ばれる日が来て欲しいですね(*^^*)》

今回は文章量が多いため誤字、脱字があるかと思います。コメントで教えて頂けると幸いです。

もしよろしければ星☆やコメントを頂けるとやる気に繋がるのでよろしくお願いします

読んでいただきありがとうございます( . .)"

























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