二年後
「――ッ!?」
眠りから覚めた昂輝は、ベッドから勢いよく起きあがった。
(……またあの夢か)
あれから昂輝は、あのときの出来事を夢で見るようになった。何度も何度も……繰り返し見ているせいで、心を病んでしまったこともあった。
とうとう自殺未遂まで引き起こし、このままではいけない、と判断したダニールが、昂輝の祖父がいる北海道・函館へ連れていった。
祖父・
祖父のおかげで、昂輝は少しずつ元気を取り戻していった。
(じいちゃんに預けられてから、もう二年がたったのか)
昂輝はサイドテーブルに置いた写真立てを手にとる。そこには金髪碧眼の女性と幼女が写っていた。
「おはよう。アーニャ、紬星」
写真のなかのふたりに朝のあいさつをすると、昂輝は自室をあとにした。洗面所で顔を洗い、歯をみがいてから居間へ向かう。そこには新聞を見る朱鷺の姿があった。
「じいちゃん、おはよう」
「おはよう。気分はどうだ?」
「夢は見るけど、気落ちはしなくなったよ」
昂輝は朱鷺と談話しながら、コーヒーを
「相変わらず戦争は続いているんだね」
「情勢は
昂輝が生まれるずっと前、朱鷺が若かりし頃。
当初は地球人と友好関係を築いていた
地球侵略など、多様な
それから
最初の戦争と比べて、彼らの兵器はより強力なものへ進化し、地球人を圧倒した。
そして、“パンドラの箱”と呼ばれる重力爆弾を日本へ投下。日本は北海道・九州・沖縄を残し、重力の穴へ沈んでいった。――のちの“パンドラ事件”として知られるようになる。
残された日本の島国は、
そして、地球人側は“地球連邦軍”を、
「欧州は降伏。アジアは抵抗するも敗北。地球連邦軍の壊滅も時間の問題だな」
「……そうだね」
テレビ画面に首都モスクワの光景が映される。なにもないだだっ広い大地だけが広がっていた。
昂輝の瞳に
「忘れろ、とは言わないが……。おまえはもう軍人じゃないんだ。さっさと新しい生活に慣れろ」
そう言って、朱鷺は
「おまえが前に撮影した
「マジで!?」
昂輝が目を輝かせて雑誌を広げた直後、トースターの食パンがポンッと勢いよく飛び出した。
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