第10話 おっさん、買い物する

街をぶらぶらしながら食料を買い集めていく。

今は出来合いのものばかりを買っているが、そのうち台所用品でも買って自炊もしたいところだ。


食料がだいぶ集まったところで鍛冶屋を覗いてみることに。

「すみませーん」

店頭には誰もおらず、声をかけてみると奥から小さな女の子が出てきた。

「いらっしゃいませ!何かお探しでしょうか?」

「すみません、武器じゃないんですけど、オーダーメイトって受けてもらえますかね?」

「はい!多分大丈夫だと思いますが、少し待っていてください。親方に聞いてみます!」

そう言うや否や女の子は奥へかけていった。

しばらく待っていると、女の子がずんぐりむっくりした親父さんを連れて戻ってきた。

「オーダーメイドしたいってのはあんたかい?どんなものかにもよるよ。ウチじゃ出来ないことは少ないが既にあるものなら既製品を買うか他を当りな」


たまたま入った鍛冶屋だったが、どうやら当たりっぽそうだ。すぐにオーダーメイドを受けてもらえるとはラッキーだ。


「えっと、少なくともこの街では見かけたことがないから、まだないと思います。こんな感じでボトルを作ってほしくて…本体は二重構造で作って、ここの間の空気を抜いて貰いたいです。飲み口は小さめで、蓋は中身が漏れなければ問題ないです。可能でしょうか?」

「うむ。確かに見たことも聞いたこともないな。空気を抜くということをしたことがないが、その行動に意味はあるのか?それに空気を抜く方法なんぞ聞いたこともないが?」

「空気を抜くことによって、中に入れた液体の温度変化を和らげることが出来るはずなんです。そうすれば、保温や保冷が出来る水筒が出来ると思って…うーん、確かこんな感じの真空ポンプが作れれば可能だと思います。この真空ポンプでなるべく内側の空気を抜いてもらえれば…」


あまり詳しい原理は知らないが、魔法瓶について少し説明して、小学生の頃に科学館の体験教室で作った、真空ポンプのレシピを思い出せる限り教える。


「なるほど。真空ポンプなるものも作らなければならないから、製作日数的には少なくとも5日はかかるな。このボトルの形を作るのは簡単だがうまく空気が抜けるかどうかは正直分からん。それでもよければやってみよう」

「はい。ぜひお願いします!費用はどのくらいですか?」

「うーん、オーダーメイドなんで、ボトル本体の作成で金貨15枚、真空ポンプの作成で金貨10枚ってところだが、この真空ポンプや保冷保温のボトルは初めて聞く発明品だ。この情報だけで金貨50枚はくだらないほどの価値がある…」

「なるほど。ではこんなのでどうでしょうか?私があなたへ支援金として大金貨5枚支払います。またこの情報はあなたのみに公開とします。ボトルの製作が成功した暁には、魔法瓶と称してあなたのところで売ってください。その売上の2割をこれから2年間私に納めて貰うというのはどうですか?」


正直お金には困ってないので、技術者リスペクトな利益配分を提案してみる。


「ふむ、悪くないな。しかしあんたに利益が少ないように感じるが?」

「私はこの魔法瓶がすぐに手に入るくらい売ってもらえればありがたいのでそれでいいですよ。それじゃあこれが支援金の大金貨5枚です」

「了解した。魔法瓶か!いい名前だな!お金も貰ったし、さっそく取り掛かるので悪いがまた5日後に来てくれ」

「では、よろしくお願いします!」

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