第9話 おっさん、ランクアップする
翌朝、朝食のサンドイッチを食べながら、冒険者ギルドに向かう。
依頼の貼ってあるボードの前には既に何人かの冒険者がいた。
E級の依頼を見てみると、基本的に森の手前に生えている薬草集めか、街のお手伝いしかないようだ。
D級になると、森の手前ら辺にいるゴブリンや角ウサギの討伐依頼もある。
C級では、森の中にある超高級薬草やキノコ類、中型魔物の討伐依頼がある。
とりあえず、薬草系の出来そうなものをいくつか見繕って街から出てみることにする。
「お、早速薬草の群生地発見!」
鑑定を使ってみればあっという間に必要な薬草の群生地を見つけられた。
「結構簡単にギルドランク上げられるかも?」
そんなことを考えながら次々と必要な分を丁寧に採取していく。
4、5箇所を周って、ある程度依頼を終えると、ちょうど昼頃となっていた。
「お腹も空いてきたし、腹ごしらえがてら休憩するか」
昨日街で買った串焼きをアイテムボックスから出して食べる。
串焼きを4本食べて、ギルドで手に入れた革袋の水筒から水を飲む。
「街に戻ったら保存用食料と水筒を用意しないと…この革袋の水筒は飲みにくいったらありゃしないな…」
お腹もいっぱいになったところで、昨日から試したくてうずうずしていた魔法を使ってみることにする。
「とりあえず基本の属性魔法から…」
特にスキルは持っていないので、手のひらにそれぞれの属性の球を出してみることにする。
「まずは…水!」
手のひらの上に水球があることを想像する。昨日行ったように魔力を循環させて手のひらに流していく…
「できた!」
小さいながら、水球が手のひらに現れた。水球のお手玉をしながら、数を増やしていく。
「なかなか面白いな!」
5つほど出したところでやめる。
水球を消して、次々と同じようなことを火、風、土の属性でやってみる。
面白いことに、自分の魔力で出した火球は触っても火傷をすることはなかった。
ここでも様々なことを検証する。
とりあえず、ボール系アロー系カッター系ウォール系はしっかり想像すれば簡単にできることがわかった。これらの魔法1つ発動するのにMPは1消費されたが、意識をすればそれ以上にMPを込められて、より強力な魔法が放てることもわかった。
他にどんなことができるのか、他人の使う魔法を見てみないと思いつかないので、ひとまず検証を終える。
「検証すると、今度は魔法を使って魔物を倒してみたくなっちゃうなぁ」
自分から魔物を見つけに行って狩るのはE級ではルール違反になるので一応やめておく。
思いつく限りの魔法を試して、MPが200増えたところで帰路につくことにした。
ギルドに戻り依頼を終えた手続きをする。
「薬草の依頼を終えたので、手続きをお願いします」
「身分証を見せてください…はい、E 級クエストですね。それでは薬草を出していただけますか?」
「これで全部です」
マジックバッグから出す振りをしながらアイテムボックスから取り出す。アイテムボックスは時間停止の魔法がかかっているので非常に便利だ。
「はい、それでは今から確認してくるので呼ばれるまであちらの席でお待ちください」
待合席では、既に何人かの人が待っている。
空いている席に腰をかけて周りを観察すると、どうやらここで待っている冒険者たちはC〜E級の人だけらしい。
それ以上の、ランクの冒険者はそもそも少ないが、おそらく別室で対応しているのだろう。
たまにB級の冒険者が階段を上がっていくのが見られたし。
ちなみに、通りすがりの冒険者のランクが簡単にわかる理由だけど、みんな水晶玉を見えるように身につけているからだ。
「ヒロさん!お待たせいたしました!確認が終わりましたのでこちらへどうぞ!」
受付に行くとなぜか受付嬢がニコニコしている。
「今回ヒロさんは20依頼分の薬草を完璧な状態で持ってきてくださったので、ランクとしてはCまで上がれます。しかし、まだ討伐クエストはこなせていないので、あと2つほどD級の討伐クエストをこなしていただければC級に上がれます!…今からランクアップの手続きをするので水晶玉をここに置いてください」
思ったよりたくさん集まったと感じてはいたがまさか2つ分のランクアップができるほどとは驚いた。言われた通りに水晶玉を置くと色が紫から緑に変化した。
「おめでとうございます!今日からD級です。本日のクエスト分の報酬は金貨2枚です」
「ありがとうございます」
まさか今日だけの活動で本当にランクアップするとはとても驚いた。
冒険者ギルドを出ると、まだ外は明るかったので街を歩きながら食料調達をすることにした。
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