第2話

 家に帰る途中、真吾はあのレストランのことを考えた。あの女は何者だろうか。どうして幽霊の噂などに興味を抱いたのか。そして何より不思議なのは、彼女が幽霊について知っている様子だったことだった。

もしかすると彼女は、自分が見た幽霊と同じ人物ではないか。真吾はふと思い浮かんだが、まさかなと思った。

私は子供の頃から怪談話が好きでした。特に怖い話が大好きで、小説や映画の中でよく使われている、幽霊が登場するシーンを見るたびにワクワクしたものです。

ところが大人になって実際に心霊現象を経験してみると、それまで抱いていた幻想的なイメージとはかけ離れたものだということに気付きました。もちろん、それは私が特別臆病な性格をしているせいかもしれません。しかし、それでもやっぱり納得がいかないのです。

なぜ幽霊は人間を驚かせるのでしょうか。なぜ幽霊は人を呪ったり祟り殺したりするのでしょうか。そもそも彼らは本当に存在するのか。あるいは単に人間の想像上の産物にすぎないのか。そこで私は、霊能力者のところに行ってみることにしました。といっても、本物の超能力者が実在するかどうかは疑わしいところですが、少なくとも霊能者はたくさんいるはずです。中には本物もいるでしょう。

私は東京から大阪まで新幹線に乗って行きました。新大阪の駅を出ると、タクシーで西の方角に向かいました。やがて大きな国道に出ると、道なりにしばらく進んで行きました。

すると左側に、〈御祓い・除霊〉と書かれた看板が見えました。どうやらそこが目的地のようです。私はまだ昼間だというのに、すでに薄暗い雰囲気のする建物の中に足を踏み入れました。

受付カウンターがあって、女性が一人座っていました。年齢は三十歳前後でしょうか。髪が長くて、化粧が濃くて、あまり清潔感のない感じの女です。

「いらっしゃいませ」と彼女は愛想笑いを浮かべながら言いました。「どのようなご用件でしょうか?」

「あの……ここでお払いをしてもらえるって聞いたんですけど」

「はい、できますよ」

「でも、料金がいくらかかるのか分からないもので……」

「お金は必要ありません」と女性は言いました。「ただ、お名前をこちらに書いていただきたいんですけど」

「名前だけでいいんですか?」

「ええ、お名前は本名でなくても構いません」

「どういう意味ですか?」

「つまり、あなたのお名前を使って、この場で呪文を唱えるということです」

「へえ……」

「それであなたが今抱えている悩み事が解決すれば、それが本当のお名前ということになります」

「なるほど」

「いかがなさいましょうか?」

「お願いします」と私は答えました。

女性は私の書いた書類を手に取ると、ボールペンでサラサラと何か書きつけました。それからその紙を持って奥の部屋に入っていきました。

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