第弐話 【疫病神】
同窓会って、人の幸せな噂より不幸な噂の方が盛り上がる気がする。
僕が捻くれているからそう感じるのかもしれないけど、でも「ココだけの話なんだけど」と言った人物の表情は、大抵笑顔だ。
そしてやっぱり今日も始まる「ココだけの話なんだけど」。
二十年ぶりに集まった中学校の同窓会でも、始まったココだけの話は、ある意味予想と違い、ある意味予想通りの話だった。
【疫病神】
話を始めたのは、バンドの追っかけとかをしていたちょっと派手なタイプの女性だった。
インディーズ時代に追っかけしていたバンドがプロになり、彼女は熱が冷めてそのバンドから離れたそうだ。
そのバンドのボーカルが、最近亡くなったのだ。
デビューしてそれほど経たずにバンド自体は解散したのたが、ボーカルの人がキャラが面白く、そのまま芸能界に残っていた。
確か結婚して、子供が生まれて間もなく、本人は亡くなったんだよな。
「追っかけ時代に仲良くなった人が二人いて、一人はスタッフの友人で、一人はボーカルの彼女だったの」
それは
「スタッフの友人から流れてくる噂が面白くて、ギターの彼女がファンのフリしていつも最前列にいるとか、ドラムがウブなフリして婚約者と同棲してて結婚秒読みとか」
あ〜それは、ファンが聞いたら泣く話だね。
「ボーカルの彼女だと思い込んでる友人が、バンド内で単なるピーだと馬鹿にされてるとか」
えぇ!?何それ。
スタッフの友人と、馬鹿にされてる人も友人関係なんだよな?
てか、ピーって何?
「しかもベッドの中の様子まで面白可笑しく話題にされてたみたい」
最低だな、そのバンド。解散して良かったよ。
「ねぇ、ピーって何?」
あ、俺だけが解ってないんじゃなかった。
「グルーピーのピー。今で言うならセフレとか、ヤリ穴とか?」
意味は解るけど、普通ヤリ穴とか言わないからな!
「まぁそんな関係だから、友人はすぐに捨てられたわけよ。ボーカル本人と連絡取れなくなって、他のメンバーに『単なるファン』では知らない情報を混ぜながら、ボーカルと連絡取りたいってお願いしたみたい」
「でも、他のメンバーにも馬鹿にされてたんでしょ?」
「本人はソレ知らないからね。反対されたら悲しいからとか言われて、隠れて付き合ってるつもりだったから」
あぁ〜、本当に最低最悪だ。
「それで、私はバンドから離れたから、スタッフの友人だった方とは完全に切れたんだけど。もう一人とは相談を聞いたりするのでまだ繋がってたのね」
そこで、実は彼女じゃなくて、遊ばれたんですよ〜とは……言えないか。
「ある日、彼女から『もう別れる』と宣言されたから、ちょっとホッとしたんだ」
別れるってか、諦めるだよな。
「そしたらね、彼女が怖い事言い出したの」
それは、スキャンダルを売るとか?
『私、今まで不本意な別れ方した人が、全員不幸になってるの』
『一人は事故で未だに意識不明、一人は子供が死んじゃって自殺、一人は会社クビになって行方不明なの』
「四人目にならないと良いなって、笑ってたのよ、彼女。ボーカルに連絡を取ろうとしたのも、ちゃんと話し合ってキッチリと別れたかったらしいわ」
えぇと、それは彼女が何かしらの犯罪を?
「まぁボーカルの人も霊感あるのを売りにしてたし、正直『罰当たっちまえ!』と思ってたから、そのまま聞き流したんだよね」
本人にも説明のしようがないよな。「あなたは不幸になりますよ」なんて、単なる嫌がらせだ。
「そしたらさ、このまえボーカル死んじゃってさぁ。誰かに話したかったんだ!彼女、凄い熱心な○○学会の信者だったし、怖いよね〜」
うん。怖いね。
その彼女が宗教に嵌ったのは三人目の後らしいが、そういう問題では無い。
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