残暑お見舞申し上げます
仲村 嘉高
第壱話
人は酔っ払うと必ずする話がある。
恋愛と怪談だ。
僕の周りでは、なぜか怪談へ傾く人が多い。
「この前さ、夜の公園に行ったらさ」
あぁ、また始まったようです。
【夜の公園にて】
まだ大学生である語り主は、友人と三人で夜の公園に行ったそうだ。
特に悪い事をするタイプでは無い彼が公園に行った理由は「お金が無いから」。
飲みに行くほどお金は無いが、解散するにはまだ早い時間。
ちょっと缶チューハイとツマミでも買って、公園で飲む?となったそうだ。
後で考えるとソレ自体がおかしな事だったとか。
酒を買ったコンビニから同距離で反対方向に友人宅が在るのだから。
今は桜の季節にはまだまだ早く、コートを着ないと外へ行こうとは思わない。
まだ一滴もアルコールが入っていないのに、なぜ寒空の下で飲もうとなったのか、その切欠さえ思い出せないそうだ。
友人がおかしいと気付いたのは、友人二人の口数が妙に少なくなったから。
黙々とツマミとして買った唐揚げやポテトフライを食べていた。
いつもより早いペースで酒を飲む。
寒いからかな?
そんな事を思った時、キィと微かな金属音が聞こえたそうだ。
振り返ると、ブランコが揺れていた。
ブランコが揺れるほどの風は無かったはず。
だがブランコから少し距離があったから、気付かなかっただけで今まで誰か居たのかもしれないと前に向き直った。
目の前の二人は、空になった物はすぐにコンビニ袋へと放り込んでいく。
いつもは最後に纏めて片付けるのに、急かされているようで落ち着かない。
キィ
また音がしたので、反射的に振り返った。
ブランコが揺れていた。
先程と同じように。
いや、先程よりも大きくなっている。
「なぁ、ブラン」
「早く飲んじゃえよ!」
「寒いから、飲み終わったら帰ろうぜ!」
言おうとした言葉を遮られ、背中がゾクリとしたそうだ。
背中を向けていた友人は気付かなかったが、誰も乗っていないのにブランコが揺れ始めたそうだ。
少しずつ大きくなる揺れの不自然さに、何かヤバいと二人は思ったそうだ。
そして友人が振り返った途端に、更に揺れが大きくなった。
何か理由がないと離れられない!
なぜかそう思った二人は、急いで帰る理由を作っていたのだとか。
そして、気付いている事を気付かれてはいけないとも。
缶チューハイの残りを一気飲みして、
特に何かいわくのある公園ではないそうで、昼間は近所の子供達が普通に遊んでいる。
ただ、友人はその日から、昼間でもその公園には近付かないそうだ。
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