6
そういえば。
後ろを振り向くな。
この電車。
振り向くな。
後ろはどうなって。
見るな。
見たくない。
考えたくない。
思い出したくない。
体が引っ張られるような感覚。
前へ、上へ、下へ、右へ、左へ。
後ろにだけ、決して行かない。
それでも頭をゆっくり横に向けてみる。
体が燃える。
酷く熱く、苦しい。
それでも体ごと動かして、後ろを振り向いた。
瞬間、私の体が白い電車から投げ出された。
何も無い。
深い紫色の空間に。
何も無いのに、ハッキリしている事がある。
私は、ここが嫌いだ。
息が苦しい。
よく見るとこの空間は、煙だ。
深い紫色の煙が、充満している。
何で、何も無いと思ったのだろう。
ここには、まだ何かがあるはずだと思えば思うほど。
口から入って来る煙が、私を蝕んでいく。
頭が割れるように痛い。
全身の関節が思うように動かない。
目も充分に開けられず、かろうじて薄目。
何かがあるはずだ。
薄目から見える景色が。
見ようとすれば、薄目でも、見えるはずだ。
「最後までやりなよ」
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