5
ふと気が付くと、そこは白い電車の中だった。
がたん、ごとん。
酷く、頭が痛い。
私は何を、していたのだろう。
とにかく立ち上がった。
この電車のように、前に進もう。
後ろには何もないのだから。
濁りの無い白一色、何だか距離感がつかめない。
後ろには何もないのだから。
覚束ない足取り、震える手でドアを開く。
後ろには何もないのだから。
次に私は、灰色の砂漠に立っていた。
次に、どろりとした黒い溶岩が街を燃やしていた。
人も、私自身も。
なのに何故だろう、私は燃えている気がしないのだ。
見て見れば確かに燃えているし、熱さも感じている。
でも、一番大事な事が分かっていない。
故に、燃えていないと思える。
試しに誰かに、黒い溶岩を浴びせる。
身を悶えさせて苦しみ、動かなくなった。
やはり、熱いのだ。
やはり、燃えているのだ。
そんなはずはない。
だって、これは。
「普通だから」
気が付くと、白い電車の中に立っていた。
小さな隙間から流れ込んでくる風は、冷たかっただろうか。
体を覆う、どろりとした黒い溶岩は、私を燃やしているのだろうか。
灰色の砂は、行く足を蝕んでいるのか。
あの景色が、思い出せない。
前を見ても、濁りの無い白一色。
なんにでも色を変えられるだろう。
なんにでも染まるだろう。
白のままでも良いだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます