赤い光が、視界を奪った。

 感じる、胸の高鳴りを。

 見える、群がる敵が。

 あれは誰だ、知らない奴だ。

 つまり、敵だ。

 どうでもいい奴だ。

 そう、敵だ。

 どろりとした黒い溶岩が、私を染め上げていく。


 ここはどこだ。

 気になって目を開けた。

 街だ。

 人が住む街。

 けど今は、黒い溶岩に燃やされて、跡形もない廃墟だ。


 風は冷たいはずなのに、熱を帯びさせられている。

 本当ならば、風だって冷たいはずなのに。

 本当に、あの風は冷たいのか。


 だって、私の体を撫でるこの風は、纏わりつくように熱い。


 「最後までやりなよ」

 黒い溶岩にまみれた拳で、誰かを殴った時に聞こえた声。


 「最後までやりなよ」

 言われるまでもない。


 「最後までやりなよ」

 こいつは何だ、誰なんだ。


 「最後までやりなよ」

 私に、こんな命令をしたのは誰だ。

 見当はつかないが、敵に違いない。

 口元が緩んで、涎が垂れる。

 全てが敵に見えて、それが正しいと思える。


 目の前を、誰かが横切った。

 すれ違いざまに、鼻をくすぐる匂い。

 知らない。

 どこか見覚えのある後ろ姿。

 知らない。

 襲い掛かる、黒い溶岩にまみれた拳。

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