3
私は歩いた。
何もない、灰色の砂漠を。
心身を押しつぶそうとしている曇天を、意に介さないよう心掛けて。
辛くなると私は、目を瞑った。
ぼんやりと、徐々にはっきり。
あの人の笑顔が見えて来る。
深く深呼吸をすると、肺に冷たい空気が入り、頭を冴えさせてくれる。
ゆっくり息を吹きながら、どうにかして、目を開く。
中々開こうとしない目を。
このまま瞑っていれば、あの人が見える。
開いてしまえば、灰色の砂漠が見える。
意を決して目を開く。
灰色の砂漠は、いつもと変わらず広がっている。
これが当たり前なのだ。
足に纏わりつく砂の一つ一つは小さいのだが、歩くにつれてそれは、徐々に量を増して足を重くさせる。
私が重くさせているのだろうか、砂のせいなのだろうか。
「最後までやりなよ」
どこからともなく、声が聞こえた。
間違いない、あの人の声だ。
聞き間違えるはずもない。
曇天を斬り裂くように、赤い星が灯った。
代わり映えの無い灰色の砂漠の中で、赤い星はとても眩しかった。
あの光に向かって歩けば、何かが変わるかもしれない。
そう思えば思うほど、赤い星は輝きを増す。
長い間歩いても、思ったように距離が縮まらないので、あれに何の意味があるのだろうとぼんやり考える。
考えれば考える程、赤い星はか細くなっていく。
最初は舌打ちを打って、後ろを振り返ったり、違う方にふらっと歩いたりした。
でも、やっぱり。赤い星をちらっと見て見る。
そういう時に限って、ひどく眩しい。
なんだかおかしくなって、星に向かって、酷い言葉を浴びせてみる。
一言一句が飛ぶにつれて、か細くなる星。
逆の言葉を浴びせると、力強く光る、赤い星。
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