第8話 勘違い

「さぁ上がって!」

俺が戸惑いながらバイクを置くと、既に廊下の奥の方にいたクロエが言う。


執事とクロエが立っている方へ行き、開けてくれた扉の中に入った。


「うわ」

家の外観に劣らない部屋だ。

落ち着いているが、確実にその値段を突きつけてくる調度品。家具も含めて気品が漂ってくる。


「掛けて」

座るってあのソファか?あの豪華な。


「それではお父様とお母様をお呼びして参ります」

執事が出ていった。


部屋で女性と二人っきり、、、気まずい。


「多分褒美の話が出ると思うけど、何を希望するの?お金でもなんでもいいわ」

うーん。貰えるのは嬉しいが、この世界のことがいまいち分からない。

お金を貰うのもいいが、生活すらままならないのに金だけあっても悪い人にカモにされるだけだろう。


「俺、さっき言ったみたいに、身元を保証するものがない。働き口もない。お金も、、、多分この世界では使えない」


こんな怪し人、今更ながらよく家にあげるよね。


「あらそんなこと?夜伽ぐらい覚悟してたのよ?いいわ。後で同じことを親に伝えておくわ」

そんなことを話していた時だった。


「男を連れてきたのか!?」

廊下の方からドタドタと凄い勢いで足音が聞こえたかと思うと、勢いよく扉が開いておじさんが入ってきた。


「!?!?!?」

多分この人が彼女の父親なのだろう。


「あらま、なかなかいい殿方を連れてくるじゃない」

後ろに続いて落ち着いた感じの女性が入ってきた。


「ちょっとちょっと、ねぇトマス?なんて伝えたわけ?」

トマスはやれやれといった感じだ。


「あの男っ気の一つもなく、縁談を持ってきても全部失敗。お茶会もほとんど顔を出さず作業場に篭るか冒険に行くかのお前がついに男を連れてくるとは」


ん???

なんか話が入ってこないんだけど。


「平民でも敵国のスパイでもなんでもいい!もう貰ってけ!駆け落ちじゃないだけよかった、、、」

涙ぐんだ目を突然ガッ!って開けたかと思うと俺の方に向き、迫るように言ってきた。


「あのー、、、」

ちょっと何がどうなってるのかわからない。


「ん?なんだ結納か?ご祝儀か?なんでもいい。弾むぞ!」


えぇ。


「あの、クロエさんの話聞いてもらえませんか?」

圧倒されないように、ちょっと強めに言った。


「ん?、、、」

俺の言葉を聞き、チラッとクロエの方を見る。


「お父さんやめて。その人は私の命の恩人な「ほう!お前はクロエの命を救って心を奪っ」違うって!」


クロエがさっきから迫ってくる男性の腕を引っ張って部屋の外へ連れていってしまった。


クロエの母だろうか?ご婦人と目が合う。


「ごめんなさいね、私もちょっと様子を見てきますわ」

そう言って廊下に出ていった。

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