第7話 高級住宅街

10分ぐらい進むと先ほどよりも規模が小さいが門と騎士が見えてきた。


やっぱり、例に則るなら貴族ってやつか?


「ちょっと待ってね」


俺はバイクに乗ったままで、クロエが騎士の方に話しかけに行った。


「あの人は私の客よ。通してちょうだい」

先ほどのカードを見せながら言った。


「はっ!どうぞお通りください」

先ほどのぶっきらぼうな態度と違って今回の騎士は終始真面目な感じだ。


「さぁ行くわよ。ここから5分もしないわ」

そう言いながらまた後ろに飛び乗ってきた。


騎士さんに会釈をしてゆっくりと走り出す。


豪邸が連なる閑静な住宅街を進む。


「そこ右曲がって二つ目の角を左ね」

先程から案内された通りに進んでいる。


えっと、、、完全に高級住宅街。しかも日本のトップクラスの高級住宅街でもなかなか敵わないような街並みだ。


「あれよ」

そう指さされた先を見るとヤバい家が目に入った。

うん。もうヤバいとしか言いようがない。

友達と一緒に高級住宅街ツーリングとかって言って某衆議院議員とか大臣の家の前を通って職務質問されたのはいい思い出だが、、、それに匹敵するかそれ以上だ。


綺麗に整えられた生垣に、装飾の施された門。その中に見える家も大きいし庭も大きい。


きっと俺はとんでもない人を今後ろに乗せているのだろう。


俺は聖人でもなんでもない。

俺は凄い人を救ったのだ。褒美に期待するような下心も持ち合わせている。何ももらえなくても別に、、、ガッカリするぐらいで済むが。


せめてこの世界で生きていけるように力ぐらいは貸してほしいな。

ただ、それらの下心をも忘れさせてしまうほどに家、その権力の象徴に圧倒された。


「到着しました、、、」

緊張しながら言った。きっとこんな家の娘さんなら俺の首なんて一発で飛ばせるのだろう。


「緊張しなくてもいいわ。あなたは命の恩人なんだから」

クロエは後ろからおりて門を開けてくれた。


俺もバイクから降りて、クロエの後に続く。


「俺みたいな怪しいやつが、いいのか?」

少しでも不審者感を和らげるためにヘルメットを取ったが、それでも不審者だろう。

この街の人と服装も違う。


「いいのよ」

そう言って扉に手を伸ばした。


ガチャ


クロエが手を触れる前に扉が勝手に開いた。

「おかえりなさいませお嬢様、、、、そちらは、、、」

中から執事のような人が出てきた。


「ただいま、この人は客よ。丁寧に扱って」

俺の方をチラチラと見ながらそう言った。


「、、、、わかりました。客間に案内いたします。お嬢様も客間でお待ちください。お父様をお呼びします」


「クロエさん、、コレどうしたらいいですか?」

バイクのことだ。


「そうね、この辺りは治安がいいから気にしなくてもいいけど、魔道具は万が一のこともあるから、、、、そうね、ここあたりに置いておくことはできるかしら? いいかしら?トマス」

俺の返事を聞く前に執事の方に向いてしまった。


「もちろんでございますお嬢様」


「いいのですか?こんな大きなものを」

って言ってもこの家の大きさからすればバイクの一台や二台大丈夫なのだろう。


「いいわ、後で私の部屋にでも移せば」

私の部屋!?そんな女性の部屋にこんなの置くの!?

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