第6話 入国

クロエと一緒に窓口に向かう。


「、、、身分証」

騎士?のような人がぶっきらぼうに言う。


「はいこれ、この人の身分は私が保証するわ」

そう言って一枚のカードのようなものを渡す。


騎士は胡散臭いものを見るような目をしてそのカードに視線を落とす。


「っ!?」

息を飲み目が見開かれる。


「失礼いたしました。承知しました。そちらの方はアーガイル様の付き人として処理します」


??

何が起きたんだ?


「ありがと。さ!行くわよ」

さっさと門をくぐって言ってしまう。


いくら鈍感な俺でもなんとなく分かったけど、ひょっとして、、、権力者とかの娘!?


失礼のないようにしよう。

いや既に失礼をいっぱいしてきたような気もする。そもそもそんな娘さんをスポーツバイクの後ろ、ましてや男の乗るバイクの後ろに乗せたとなったら、、、、本人は良くても父親とかにぶち殺されるんじゃないか。

家に招待してくれるとのことだが、不安だ。



ただ、この世界のことは何もわからない。クロエについていくほかないだろう。



クロエの後を追い街に入る。


「おお」

思わず感嘆の声が漏れてしまった。


中世ヨーロッパ風の街並み。活気ある人たちに屋台。どこからともなく漂ってくる美味しそうな匂いが俺をさらに興奮させた。

本当は日本じゃないこんなところに来てしまったことを不安に思い、帰ることばかりを考えることが普通なのかもしれないが、正直感動の方が勝った。


そもそも秘境にツーリング行く時は日常に飽き飽きしている時だから、ある意味、異世界なんて秘境ツーリングの最高潮なのかもしれない、、、なんて考え始めている。


クロエは地元の街で感動している俺を見て誇らしそうにしている。


「クロエさんの家はここからどれくらい?」

馬車が走っているし、道も舗装されているのでバイクも走れるだろう。


「あの大きな建物、そうね街の端から真ん中までだから1時間も歩かないわ」

もう彼女も何を言うか分かってきているのだろう。


「乗ってかな「乗るわ」」

被せて答えられた。


早速バイクに跨ってエンジンをかける。

クロエも先ほどと同じように乗ってきた。


「行きますね」

馬車の流れに合わせて走り出す。


知り合いなのかクロエが誰かに笑顔で手を振っているのがミラー越しに見えた。


結構有名人なんだな。


結構大きい街に見えるが、人口密度は東京とか大阪に比べると圧倒的に低い感じがする。多分それが理由でコミュニティも発達してて知り合いも多いのだろう。


そしてバイクを見たことがないのであろう人たちが好奇の目を向けてくる。

バイク乗りとしてちょっとイキリたくなるがぐっと我慢した。


ただ我慢して我関せずに走る俺カッケェって思ってしまうのもバイク乗りあるあるかもしれない。

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