第5話 二人乗り

「せいぜい2時間も歩けば着くよ?」


えぇ、あのペースで2時間、、、

普通はそんなに歩くのはしんどいだろ。バイクに乗せてくれって言うのを遠慮しているのか?


でもこんなの押しながら2時間はきつい。

後ろに乗ってもらおう。うん。決して後ろから押しつけられる胸が目当てなのではない。


「街まで後ろに乗って案内してくれませんか?」

ヘルメットもなしで後ろに女性を乗せるなんて日本ではお巡りさんに怒られそうだ。


「いいの?貴重な魔道具。永遠には使えないでしょ?」

きっとそれが魔道具の常識なのだろう。

日本の技術の結晶のこのバイクも比較的少ないとはいえガソリンを喰う。永遠には使えないという点ではあながち間違いではない。

でも、流石に2時間は歩きたくない。


「まぁ乗ってください」

女性は渋々、、、を装いながら笑顔で乗ってきた。


「この礼もいつかしないとね」

とか言いながらさっきほど密着せずに捕まってきた。


まぁ胸押し付けられても、ライジャケのプロテクターでよくわからんのやがな、、、


クロエが肩と車体にしっかり掴まったのを確認して、ゆっくりと発進する。


ガチャン

この一速に入る時の独特の振動が好き。

ゆっくりとクラッチを繋いで、クロエに負担をかけないように進み出す。


「ずっと真っ直ぐよ。速いわね。このペースなら30分もしないうちに着くわ。門が近くなってきたら降りた方がいいかもしれないわ。怪しまれるかもしれないから」


周りは草原。ただ平された道が一本続く。


「わかった」

いいペースで走っていく。

心地よい陽と綺麗な空気。ヘルメットのシールドを開けざるを得ない。

ミラーで見えるクロエも綺麗な髪を揺らして心地良さそうにしている。


「あれが街よ」

本当に30分もしないうちに見えてきた。


「どうしたらいいですか?」

門といっても、ETCゲートみたいにすんなりとはいかないだろう。


「身分証はある?、、、あとそろそろ乗り物から降りたほうがいいわ。怪しまれる」


身分証、、、この世界で免許証な訳がないだろう。


「身分証なんてないです」

降りた方がいいそうなので、少しずつ速度を落としながら答えた。


「そう、まぁなんとかなるわ」


バイクから降りて歩き出す。

段々門の様子が見えてくる。


「窓口みたいになっているのか」

遊園地みたいな感じか?


「そう、あそこで身分証を見せるの。犯罪者とか敵国のスパイを入れない為ね」


スパイ?

なかなか物騒な話だ。

まぁこの程度でスパイを防げるとは思わないが。


でも俺は入れるのだろうか?客観的に見て怪しさ満開だ。

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