第9話 褒美
10分ぐらい経っただろうか?
夫婦とその娘が部屋から出ていってすぐ執事のトマスさんがお茶を淹れてくれた。そのお茶も今少し冷めている。
ガチャッ
来たか。
「すまなかった。少々早とちりしてしまったみたいだクロエから事情は聞きました。ノリユキ殿は我が娘の命の恩人だったのですね」
はい、命の恩人です!とは答えにくい。
「、、はい、、、」
「感謝する。褒美に娘を!っと言いたいところだが、両者望まないことをするのは嫌だろう。褒美は身元の保証と仕事の保証?と聞いたが、、、そんなことでいいのか?」
「はい、、、、この世界のことが全くわからないので」
「身元の保証はまだしも、仕事の斡旋も身分証も冒険者ギルドでできることだが、、、、魔道具を持っているような人がなぜ私に、、、敵国のスパイか?でもそんな奴が人の命を救うような、」
何か、独り言モードみたいなのに入ってしまった。
「冒険なんて、、、戦える自信がな「いいだろう我がアーガイル家の名前を使えるようにしよう」」
ひょっとしなくても貴族に身分を保証してもらうってことは凄いことなんじゃないだろうか。
「だが、いくらお礼とはいえ我が家と関係なしに保証することはできない。だから仕事も我が家で働いてもらおう」
至れり尽くせりだ。
「そうだな、是非とも娘の専属の使用人に、ニヒヒ。そのまま恋仲に発展して、、、、失礼。命の恩人なのに使用人という立場は申し訳ないが、給金は弾もう。そして我が家では仕事はしてもらうが客に近い立場を用意しよう」
なんかアーガイル主人の思惑が見え隠れした気がする。
「それでいいか?」
よくないわけがない。
なんか異世界で浮かれていたが、この機を逃したら幾分かの大金を持って路頭に迷うことになるだろう。
「いいのですか?こんな至れり尽くせり」
今にも飛びつきたい話だが、ここは日本人としてワンクッション。
「いいのだ。本当に娘の命の恩人に対して失礼だが、我が国の情勢的にスパイの可能性も否定できないのだ。我が家で娘の使用人(お守り)として働いてもらうことでその可能性を否定してもらいたい」
まぁ俺、怪しすぎるもんな。
「お願いします。頑張ります」
これで多分身分と生活は保証されただろう。
「うむ」
アーガイル主人が頷くと、トマスさんが契約書であろう紙を持ってきた。
「この文字、、、」
見覚えがない。なのになんとなくわかる。変な字体の日本語か?
「なんだ、知らないのか?」
この世界では識字率が低いのか?
「いや、、、知ってます。書けそうです」
なぜかわかるのだ。これは神秘的な何か、とかではなく日本人なら多分あれ?ってなるような文字だ。意味もわかる。
俺は契約書をしっかりと読み、所定の欄にサインした。
「堅苦しくなってるけど、仕事の内容は私の趣味の手伝いだからね。身分差なんてないから気軽にしててね」
クロエの趣味?作業場がなんたらとか言ってた気がするが、、、
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