第2話 走る木
そろそろか?
こう思い始めて3回目。ガソリンのメモリがまた一つ消えて半分になろうとしている。このバイクは燃費がかなり良い。どれだけ走ったのか、、、
流石に若干の焦りと違和感を抱き始める。
「俺こんな山奥に入ったか?あとなんで携帯の電波が復活しねぇんだよ。せめてGPSだけでも復活しろよ」
携帯がフリーズしたのかと思って再起動しても変化なし。
むしろ地図が消えて最悪の状況になってしまった。
諦めてもう少し進もう。そう決めて携帯から目を上げた時、奥のカーブの先から土煙が見えた。
「車か!?」
やっと道を尋ねることができるジモ民が来た。どう期待したのも束の間、一人の全力疾走する女性、自分と同い年ぐらいの少女を見つけた。
土煙をあげているのはあの少女か!?????
答えは違った。土煙はもっと後ろから上がっていた。
「誰か!助っ」
軽装で走りやすそうな服装をした女性が俺を発見する。
俺と目があって体感時間3秒が経過した。
「助けてー」
後ろの土煙の正体がカーブの先から姿を表す。
木!???
周りと同化していて一瞬目がバグったが確かに気が動いている。それもなかなかの大木だ。
根っこがもじゃもじゃと動いて移動する大木には鳥肌が立たずにはいられなかった。
女性は半泣きになりながら全力疾走している。
俺の進行方向からくる女性と大木。
Uターンは、、、できない。道幅が足りない。
女性と大木が大体100メートルぐらい離れている。そして、その女性と俺の距離も100メートルほど。
20秒もしない内にこちらに到達するだろう。
やばい。バイクを止めてサイドスタンドで方向変換する時間もない。
咄嗟に思いついたのがアクセルターン。後輪を空転させてターンする方法だがやったことない。
やってみるか。
今のままではバイクを捨てて走って逃げるしかない。
「思い切りが大切だ!」
独り言で心を奮い立たせアクセルを煽る。
ハンドルを完全に切り足をついてバイクを傾ける。
今だ!
レブに当たった瞬間にクラッチを繋げる。
後輪が滑り出す。
ズァー
バイクの後輪が180度移動する。
これで逃げる準備は完璧だ。
女性が到達するまであと5秒もない。
「飛び乗って!」
叫ぶ。
それが聞こえたからか、初めからそうするつもりだったのかはわからないが、かなり綺麗な踏み込みとジャンプをして後ろに飛び乗ってきた。
「捕まって」
そう叫ぶとその女性は最も簡単にその豊満な胸を押し付け胸に腕を回してきた。
きっと俺が男だということを気にする余裕もないのだろう。
さっきと同じように豪快にアクセルを煽りクラッチを繋げる。
砂利道で滑りそうになる車体をクラッチで調整しながら前へ打ち出されるように加速する。
2速、3速、シフトと共に直線的に上がる速度。
逃げ切れる見込みができて少しの余裕が生まれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます