そうだ異世界でツーリングしよう〜のんびり相棒と異世界旅〜え!鍛冶娘も来るの!?

@sae_na

第1話 許すまじグルグルマップ

何千回と通った慣れた道切り裂くように走る。高校卒業時に念願の青い250ccのバイクを買い、それでこの道を早朝一番に走るのが俺のお気に入りだ。早朝は交通量が少なくて走りやすい。道は広くはないが、車とすれ違うぐらいは何のストレスにもならない道だ。自然とスピードも出てしまう。法定速度+10までが自分の法定速度だ。慣れ親しんだコーナー手前でブレーキを掛ける。なんてことない。いつも通りだ。コーナーは法定速度-10ぐらいで安全に曲がるようにしている。過去に一度盛大にやらかしたことがあるからだ。


先の見えないコーナーのその先を見るように目線を送る。バイクの基本だ。コーナーを抜ける直前、スマホのナビが指し示す脇道が見えた。


「ええ、、、ここを通るの、、、、」

思わず独り言を呟いてしまう。

なかなかのそれなりに飛ばしていたのと、見つけたのが分かれ道の直前だったこともあって直進した。


どうせ、すぐに代替のルートを提案してくるだろう。そう考えていたが、このポンコツナビは引き返すことを提案してくる。


「あの道、舗装されてなかったよな、、、」


仕方がない。

秘境巡りツーリングなんて舗装されてない道がほとんどだ。


砂利道と林道の境目のような道とは不釣り合いなフルカウルのバイクで突き進む。

最初はオフロードにしておけばよかったと思ってしまうが今は慣れた。インドでは舗装されてない道もスーパースポーツのバイクでガンガン行くらしい。

そう思うとこの程度の道にどうってことないや、、、なんて脳内でぼやきにも近い独り言を永遠と話す。


ブレーキを握ればすぐタイヤがロックするような道を神経をすり減らしながら走る。


「そろそろじゃないのかよ!」

速度はゆっくりではあったがかなりの距離を進んだ気がする。


分かれ道とかなかったからナビを見ていなかった。


「ん!?」


ふとスマホホルダーに目を落とすとそこには『圏外』の文字と、先程のカーブで止まったままの地図があった。


「マジかよ」

まぁこれも秘境巡りにはよくある話だ。


「引き返すかあ」

流石に少し不安を覚えるほど林道を攻略してしまった。人も車も全く見ないし、野生動物との接触も怖い。


乗ったままでUターンは厳しそうなので降りてサイドスタンドを出す。


サイドスタンドを支点にしてバイクを回す。こんな狭い道で助かる技だ。


「ふぅ」

バイクに乗る前にバックパックの中にあるお茶を飲み気持ちを落ち着かせる。

焦ってこんなところで事故でもしては洒落にならない。多分誰も助けがこなくて白骨化するパターンだ。


「行きますか、相棒」

バイク乗りならやってしまう謎行為。バイクに話しかける。

何となく、こんな道はやだよーって言われた気がするのもバイク乗りの妄想力とやらだろう。


よく周りを見渡してみたら山の木、草、鳥の鳴き声、、植生が面白いことになっている。


日本にここまでの秘境があったのかぁ


「俺どれだけ山に突入したんだよ。マジ、熊とか出ませんように」


単気筒のドコドコした心地よい排気音を響かせながらのんびりと来た道を戻る。


「それにしても自然豊かだな。こんなジャングルみたいに蔦まで伸びて」

来た道がこんな風景だったかと違和感を一瞬覚えるが、初めてきた道なんてこんなもんだと特に不思議には思わなかった。

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