第4話 思わぬ覚悟
昨日手術が無事終わり、今朝は早番で仕事だったので準備して家を出た。電車に揺られている時、相方さんからLINEが入った。
「たっくん、昨日は遅くまでお疲れ様でした。LINE見たの今です。ごめんね。」
「かまわないよ。歩き回れるとは聞いたけど安静に。」
その後返事はこなかった。昨日の今日だしまだ動ける状態じゃないだろうな。そう思い携帯をしまった。
最寄り駅に到着した時、珍しく佐伯部長に会った。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。昨日は無事終わったか?」
「はい、無事終わりました。ご心配ありがとうございます。」
「いいや、よかったな。お大事にな。」そして僕は仕事の話をしながら、従業員入口までご一緒した。
事務所で昨日の売上チェック等をして、惣菜部の扉を開けると、リーダーの河野さんが出勤してきていた。
「河野さん、今日休みじゃなかったですか?」
「そうだったんですが、部長が昨日こちらに入ってくださるとのことで、お休みさせて頂いたんです。」
「えっ、そうなんですか?」
「はい、部長は奥様のことご存知なんですよね?それで、何かあると行けないからと。」
「朝お会いしたんですが、その時にはそんな事何も言ってなかったから知りませんでした。」
「ご心配だったんだと思います。まぁ私が連勤だったこともありましたし、前日に呼び出されてそうなりました。」
「申し訳ありませんでした。ご迷惑をお掛けしました。」
「いいえ、ところで奥様はどうですか?」
「昨日無事終わりました。今朝もLINE入ってました。ご心配をおかけしました。」そう言うと、よかったと笑顔になった。そしてその後また部長に会った時に、改めて感謝を伝えた。
仕事が終わり今日はどこも寄らずに帰ってきた。しばらくすると、相方さんからLINEが入っていた。
「しんどいから寝る。」
「今さっき帰ったとこ。ゆっくり休んどき。」相方さんからこれ程連絡ないのも珍しいことだ。今日は歩けたんだろうか?ご飯も食べれたんだろうか?やはり心配になる。明日連絡してみよう。そう思いながら、シャワー後に、相方さんが準備してくれていた冷凍おかずを取り出して、レンジで温めて食べた。テレビの電源を入れ、ニュース番組を予約した後、適当な番組をかけた。ニュースは毎日のように感染症の情報から始まる。時事問題はやはり知っておいた方が、色々と役に立つので必ず見ている。
食事も終わりニュースを見た後は、携帯小説を読んであっと言う間に寝る時間になっていた。僕は携帯を充電し布団に入った。
翌日は相方さんからのおはようスタンプのLINEで起こされた。痛みがあるらしく、あまりLINEはできないようだ。僕は朝の挨拶だけして、今はLINEを控えた。
もう起きて準備する時間だったので、身支度をして朝食を摂りしばらくして家を出た。
今日もいつも通りの業務につき、売り場ではお客様対応をしていた。土曜日なのでお客様が多く、品揃えもセット物の惣菜を用意していた。バックヤードでは、人の配置を変えながら売り場が品薄にならないようにみんなが動き回っていた。
あっという間に休憩時間になり、食堂で定食を食べながらホッと一息ついていた。携帯を見ると、相方さんからLINEが入っていた。
「今日は早番だね。」
「うん。今日は帰ってから牛丼食べようかな。もう動けるようになったの?」
「洗濯をしてきたよ。お腹は痛いけどね。ご飯もあまり食べれなくて残してるよ。お腹すぐいっぱいになるの。」
「それはそうだろうな。お腹触ってるしな。ゆっくりしとき。」
「今日はシャワー浴びる予定だよ。昨日は看護師さんが身体拭いてくれた。皆さん親切だよ。凄くありがたい。」
「そろそろ仕事戻るな。また晩にLINEするからね。」
そして僕は売り場に戻り、午前中以上に忙しくしていた。あまりにも作業が追いつかず、今日は一時間残業になった。
仕事が終わり家に着くと、あまりにも疲れていたので風呂を溜めゆっくり浸かった。風呂上がりに一杯のお茶を飲み、晩御飯の冷凍牛丼を温めて食べた。後片付けも終わりLINEを開いた。
「晩御飯ね食べたけど残した。シャワーは十九時に予約してもう浴びてきたんだけど、気持ちよかった。」
「あとね、今日停電になるみたい。」
「そうなんだね。明日退院日聞いといて。二十二日と二十三日は一応休みにしてるけど、今なら変更もできるから。」
「明日先生に聞いてみるね。」
「看護師さんが、旦那さん優しくて穏やかな人ですね〜何かねホッとしましたって言ってたよ。かなもね、凄く優しいですよって応えた。」
「えっ、普通に対応しただけなんだけどな〜。どの人だろ?」
「師長さんではないよ。たっくんと同じ年くらいの人。」
「四人くらい言いに来てくれたからわからんね。」
「家族の人で、待つの怒る人もいるんじゃないかな?仕方ないことやから、私も大丈夫ですよって言ったんだけどね。」
「早くしてくれってキレたりするのかな?でも家族にまで気を遣わないといけないのは大変だなとは思ったよ。」
「そうだね。私の手術は三時間くらい?」
「いや、十五時五分スタートで電話きたのが十九時半だったから四時間半くらいだよ。それぐらいはかかるって、事前に聞いてたよ。長いひとは六時間くらいかかるらしい。」
「そうなんだ。知らなかった。あとね、足の付け根や腕に蕁麻疹でて、冷やしてる。」
「あらら、お大事に。そろそろゆっくりしようかな。」
「そうだね。たっくんありがとう大好きよ。」
「はい、ありがとう。ではおやすみ。」そしてLINEを終えた。
翌日相方さんより連絡がきて、明日診察してからだけどおそらく二十二日退院だろうとのことだった。丁度休みをとっているので、近隣スーパーへ品揃えなど調べにに行ってから向かおうと思う。
入院中は毎日のように相方さんからLINEが来て、様子を知らせてくれている。今日のLINEでは、排尿痛があると言っていた。手術してすぐなので色んな症状がでるんだなぁと思っていた。お腹の痛みに蕁麻疹も出てるし、僕は良くなってくれるようにと願っていた。
今日はやっと退院する日だ。朝から先生の診察を受けた時に、あまりにも蕁麻疹がひどいので、皮膚科の診察を受けてから退院判断になったようだ。僕は予定通り近隣スーパーに向かい終わったタイミングで退院許可が出たので、病院まで向かった。
病院に到着し六階ナースステーションで、看護師の方に声をかけた。病室に呼びに行ってもらい、しばらくすると看護師の方が荷物を持って付き添い、相方さんが現れた。
荷物を全て受け取り、僕らはナースステーションでお世話になりましたとご挨拶をし、受付フロアで会計を済ませ、タクシーに乗り込んだ。
帰り道は空いていたので、十五分ほどで家に着いた。
「たっくん、迎えにきてくれてありがとう。」
「お疲れさん。ベッドで横になったら。」
「うん。そうする。」僕も疲れていたので、炬燵に足を入れて横になった。
いつの間にか眠っていたようで、外は暗くなっていた。時間を見ると六時半を回っていた。
「かなはん、晩御飯どうする?」
「ご飯は炊いてる?惣菜のおかずが冷蔵室にも入ってるよ。冷凍の惣菜セット残ってたらそれでもいいし。」
「惣菜セット残ってるから、それにしようか。」
「うん、悪いけど温めてくれる?」
「うん。できたらいうから寝てて。」
「ありがとう。」そして二人で久々に晩御飯を食べた。
その後は二人してシャワーを浴びて、相方さんをベッドに寝かせ、僕は自分の布団に入った。
翌日も僕は休みだったので、午前中に昼食と夕食の買い物を済ませた。相方さんは今日もベッドで安静にしていた。
「たっくん、明日から少しずつ動いていいらしい。」
「でもまぁ、無理はしないようにしてくださいな。」
「うん、わかった。」そんな話をしつつ、僕は洗濯をしたりゴミをまとめたりしていた。手術をしてから、まだ下からの出血のようなものがとまってないらしく、よくトイレに行っていた。
「明日ね、ネットスーパーで買い物しておくから、仕事終わったら寄らずに帰ってきてね。」
「わかった。」相方さんはよくネットスーパーを利用している。家まで宅配してくれるので、こう言う時には有難い。
翌日、僕は早番の為相方さんが寝ている間に家を出た。僕が仕事に行っている間に、トイレや部屋の掃除をしてくれていた。その後はしんどくてベッドに横になっていたようだ。相変わらずお腹が痛いとは言っている。切ってるから痛みがまだ治らないんだなぁと思っていた。
今日は晩御飯の準備もしてくれていた。時短で済むお鍋だった。出汁スープと野菜や肉を入れるだけだけど、相方さんの手料理は嬉しかった。
「そうそう二十七日休みなんだけど、退院祝いにかなはんの好きなお寿司食べに行く?」
「うん、でもお腹痛いからゆっくり歩いてね。」
「うん。わかったよ。」
「楽しみ。」そして温かい鍋を二人で食べた。シャワーも昨日と同じように一緒に入り、背中を流した。相方さんはまだ出血のようなものがあるので、お湯を溜めて入ることができない。なのでシャワーにしている。寒い時期だから、身体は堪えるだろう。シャワー後はお互いにベッドと布団に入って寝た。
今朝は相方さんから、甘いもの食べたいということで、レトルトのぜんざいを頼まれた。手術前はダイエットをしていたので、甘いものを控えていたのでその反動かもしれない。
従業員入口で、相方さんの部門の主任に会って、病状を聞かれた。ご迷惑をおかけしている事と、退院はしてるけれど十二月一日に経過診察があるので、復帰はそれ以降になるかと思われる旨は伝えておいた。
事務所から惣菜売り場に戻る時、しばらくは会う機会がなかった野間課長と久々に顔を合わせた。
「しばらく顔みなかったな。」
「そうですね。」
「山辺さ、俺に冷たくない?」
「……」
「奥さんと出かけたりしてるのか?」
「……」僕は何も答えずにいると、野間課長の後ろから歩いてくる人影があった。
「何してるんだ?」佐伯部長だった。
「部長聞いてくださいよ。最近山辺俺に冷たいんですよ。奥さんとデートかとか聞いても、答えずにはぐらかすし。」
「野間くん、前にも注意したことを忘れたか?人のプライベートは詮索するものではない。君はまたトラブルを起こすつもりか?次はないと言ったはずだが。」
「はっ、すみません。つい…。」そう言うと野間課長は青ざめていた。
「本当に次はないぞ。それと、山辺借りていく。」
「あっ、はい。」野間課長の返事を聞いて、僕はその場から立ち去った。
部長としばらく歩いていると、持ち場に戻るように指示された。ただ助けてくれただけで、用はなかったようだ。これで野間課長も大人しくなればいいが…。
持ち場に戻り作業をしているとあっという間に時間が過ぎていく。それぐらいに常に作業に追われる。同じ惣菜部で働く人達は、交代で休憩をとっていく。その間人数を見ながら配置を変えていくが、一日のローテーションは大体決まってるので、僕が指示を出すまでもなく動かれるので、非常に助かっている。
お昼も終わりまた夕方まで、作業に追われる。途中ミーティングがあるので、売り場をリーダーの河野さんにお願いし抜けることがあるが、それ以外は売り場で作業していた。
そして今日も仕事が終わり、頼まれものを調達してから家路につく。電車に乗ったところでまた野間課長に会ったが、今度は部長の言葉が聞いたのか、話しかけてこなかった。
家に着くと、また温かい晩御飯ができていた。
「ただいま。これ頼まれてたぜんざい買ってきたよ。」
「ありがとう。後で頂くね。」
「先に一緒にシャワー浴びるでしょ?」
「うん。」僕らは風呂場に向かいシャワーを浴びて背中を流した。最近の日課になっている。シャワーを浴びながら、今日あったことを相方さんに話した。
「よかったね。少しはあの課長も大人しくなるかな?」
「どうだろ。そうだといいけどな〜。」そんな会話をしていた。
シャワー後は食事をし、相方さんはぜんざいを食べていた。僕はテレビを見ながら、炬燵に横になっていた。
今日は約束の二十七日、昼前にゆっくり歩いて駅向こうのスーパーの近くにある、回る寿司屋に行った。お腹に痛みがあるらしく、途中相方さんは止まって休憩しながら歩を進めた。
久々のお寿司は美味しかった。相方さんも凄く喜んでいた。食事の後は、スーパーで少し買い物をして来た道をゆっくり歩いて帰った。
家に帰ると相方さんはベッドに横になっていた。少し無理させてしまっただろうか。座る時にもお腹に響くらしい。
またしばらくは外出は控えた方が良さそうだとこの時は思っていた。
翌日の夜、相方さんが何か寒気がするといい出し、熱を測ると37.5度だった。痛み止めを貰っていたようで、飲むと下がったようだった。
二十九日は相方さんの病状が気になりながらも、仕事に向かった。十五時ぐらいに入ってたLINEで38度の熱が出て、日赤病院へ電話したらしかった。僕は凄く焦った。感染症になってしまったのではないかと、ただ夕方には36度台まで下がっていたようだ。
相方さんの予定では、隣県のクリニックに持病の薬を処方してもらうことになっていたが、電話をし処方箋を地元の行きつけの薬局にファックスしてもらえるとのことで、仕事帰りに薬局に取りに行ってと頼まれた。
相方さんの熱が出た時点で部長には連絡し、念の為休むように言われた。僕は早退し、薬局により帰宅した。
三十日も同じような熱の出方をしていたが、翌日に診察を控えていたので、病院に普通に受付をして大丈夫か確認し、家で待機していた。
やっと今日は診察日だ。相方さんは歩くのもままならない感じで、熱は36度前半だったので、タクシーで病院に向かった。
病院の入口で、熱があって産婦人科に電話していたことを伝えると、受付で僕含め隔離され指示をまった。しばらくすると、先に血液検査を受けてくださいとのことだったが、相方さんは歩くのが難しいので車椅子移動だった。今日は皮膚科の診察も受ける事になっている。血液検査のあと皮膚科の前で診察を待ち、終わった後で婦人科に行った。
受付番号が表示されたので診察室へ入ると、血液検査の結果が伝えられた。
「炎症の数値なんですけどね、退院時の時に0.99だったのが、5.36なのね。」
「先生、お腹が痛いです。」
「ベッドに横になってくれる。」そしてお腹を押さえられ、はなす時に痛いと言っていた。
「腹膜炎起こしてるかも。エコーするわね。」
エコーをしてもらったが、膿が溜まっているような所見はないとのこと。
「山辺さん、入院。おそらく腹膜炎おこしてる。先に処置室で抗生剤の点滴と、PCR検査します。」
「先生お昼は食べていいですか?」
「ちょっとまだ待って」
「そしたら、今から処置室そのまま入って。」そして、車椅子のまま僕らは移動した。処置室で相方さんが点滴をしている間に、僕は病院内のコンビニでパンを買い、休憩スペースで済ませた。
相方さんの点滴が何本かされたようで、その間PCR検査の結果が出て陰性であることが確認されたので、六階の産婦人科へ再入院することとなった。僕は急いで帰り、着替えや入院に必要なものをリュックに詰め込み、病院へ戻った。慌てていたので不足しているものもあるかもしれないが、看護師の方に荷物を渡した。
相方さんは、病室に入ると血液培養検査をしたらしい。便秘もしていたので座薬の下剤を入れられたが、出ることがなく、漢方や、マグミット、ピコスルファナトリウム等を服用し、やっと朝に少し出たようだった。
その後に内診で術後の状態など確認したようだが、腹膜炎の原因がわからないようだった。部長へは相方さんの熱の原因をお伝えし、翌日出勤許可が出た。
今日は仕事だったので、お昼頃にLINEを確認した。
「お昼にお粥がでたよ。」
「よかったな。」
「お腹空いてたから食べた。夜は普通のご飯って言われたけど、お粥にしてもらった。」
「便はでた?」
「少しずつ出てるけど、頑固やわ。」
「また検査結果でたら教えてな。仕事戻るわ。あと職場連絡したか?」
「しといたよ。驚いてた。」
「了解です。」そして僕は売り場に戻った。
今日は仕事をしていても、気が気ではなかった。原因がわかってないからだ。そうこうしていると、部長から声をかけられた。
「山辺、どうした?」
「…妻が昨日緊急入院して腹膜炎ということはお伝えしたと思うのですが、原因がまだ判明してなくて。」
「そうなのか?君は大丈夫か?早退するか?」
「いえ、大丈夫です。LINEで状況は知らせてくれているので。」
「そうか、無理だったら遠慮なく言うんだぞ。」
「ありがとうございます。」そして、僕は今日の業務をこなしていった。
仕事が終わり、帰りにスーパーへ寄り弁当と飲み物を買って帰った。先にシャワーを浴び、食事をしていると、相方さんからLINEが入った。
「熱の原因がわかりました。」
「腹膜炎で、血液にまで菌が回っていて敗血症になるところだったみたいです。敗血症って多臓器不全になってしまって、あのまま家にいたら命が危なかったみたい。」僕は恐ろしくなった。一番怖かったのは相方さんだろう。
「どの薬が合うか今調べ中みたいよ。」効かない場合もあるのだろうか。聞くこともできない。この年で独り身になる自分が想像できない。
「菌はまだ何かわからん。聞いてないから。一週間は入院になるみたいよ。」
「そうなんやな。」
「先生にね、あのタイミングで診てもらってよかったですって話したらね、看護師が電話もらってたのにって申し訳なさそうにしてたんだけど、いや、あのタイミングだったと思いますよって言っといた。」
「そうか。」
「あれより早かったら、帰されてたかもしれないし、遅かったら命危なかっただろうし。」
「また、わかったことあったらLINEしてな。」
「了解。」僕は驚き過ぎて、あまり返す言葉が出てこなかった。覚悟をしなければならないのだろうかとか、頭の中がぐるぐると色んな考えが巡っていた。普通に話ができている相方さんが信じられなかった。
翌日仕事に行くと、部長に呼ばれた。
「大丈夫か?」
「大丈夫ではないです。」
「うん。」
「妻から連絡があり、もう少し病院に行くのか遅ければ、敗血症で命を落としていたかもしれなかったようです。結果は敗血症になる前で、既に菌が血液に回っていました。一週間程の入院になるようですが、怖くなりました。」
「そうか。先生は一週間程の入院と言ってくれているのであれば、治療法があるからだろ?そうでなければ一週間程とは言わない筈だ。」
「はい、そうなんですが…。」
「奥さんの様子はどうだ?」
「妻は普通にしてます。」
「君が弱気になると、奥さんに在らぬ誤解をうむことになる。だから、しっかりするんだ。」
「はい。」
「今日は、僕の業務を手伝ってくれ。売り場には連絡入れとく。」
「はい。申し訳ありません。」そうして今日は一日事務所業務をしていた。
仕事が終わり今日も帰りにスーパーにより、弁当と飲み物を買って帰った。今日はあまり何をしていたのかが記憶にない。部長のお陰で売り場に出ることはなかったが、家に帰るとへたり込んだ。それでも生活に必要な行動はとっていたらしい。
携帯を見ると相方さんからLINEがきていた。どうやら菌が特定されたようだ。
「たっくん、大腸菌が原因だって。手術して体内の縫合したところがまだ一箇所くっついてなくて、そこから大腸菌が入り込んだらしい。ウォシュレット使ってたから、その時にたまたま運悪く入り混んだ可能性もありますって。」
「そうなんだ。」
「薬もね、いくつかの薬調べたけど、どの薬も効いてるらしい。炎症の数値も、外来で抗生剤投与されたことがよかったみたいで、1くらいになってるって。」
「よかった。薬効かなかったらどうしようと思ったよ。」
「そうだね。ご心配をおかけしました。」それを聞いてやっと胸を撫で下ろした。消毒も毎日のようにしているようだから、菌が消えてくれたら元の生活にもどれるかな。もうこんなことは懲り懲りだと心の中で呟いた。
相方さんが入院して六日目、そろそろ退院の話が出てくる頃だ。まだ体内の縫合したところはくっついていないらしい。時間がかかるようだ。相方さんと相談して、しばらくはウォシュレットを使わないようにしようと決めた。ウォシュレット自体悪い訳ではないが、相方さんの今の状態で使うと、再度同じ状態になりかねないので、そういう風にした。
「たっくん、退院日に外来診察も受けて帰ることになったよ。」
「了解です。」そして僕は八日に休みを変更させてもらった。
退院前日は、相方さんからほのぼのした内容のLINEが届いていた。
「病室からの紅葉。」写真付きだった。
「明日退院なんだけどね、病院食の煮物が本当に美味しくて、煮物ある時は楽しみなんだよ。」
「僕が入院したら食べれる物あるのかな?」
「わからない。でも食べなきゃよくならないよ。」
「そうだね。」
「最近一段と冷えてるよね。昼と夜に湯たんぽ貰ってる。肌寒いから。」
「暖房ついてないの?」
「わからない。でも寒いよ。」病気した影響もあるのかなぁと、この時は思っていたが、その日の夜にあることが判明したようだ。部屋のエアコンのスイッチが入っていないことに、スタッフの方がやっと気付いたというオチだった。まぁ今日一日だけでも温かい部屋で寝ることができるようで良かったと、二人で話をしていた。
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