真しやかな失礼な独白




 君の名を呼んでしまう。

 そう、いつも、この時間に、君の名を呼んでしまう。

 布団に入って、すぐに、君の名を呼んでしまう。


 思い返せば、もう、十年くらいになるか。

 なぜに、君の名を呼ぶようになったのか、自分でもわからない。

 今更、君の名を呼んだところで、どうにもなるわけでもない。

 なのに、なぜに、君の名を呼んでしまうのか。


 会いたい?

 いや、?マークは要らない。

 呼ぶ理由がわからないなんて嘘だ。

 そう、君に会いたいからだ。


 会ってどうする?と問われれば、せいぜい、時候の句を短く言って、そして、謝るだけだ。

 謝ったところでどうにもなるわけではないが、謝りたい。

 謝ることで、君との時間がまた始められるのなら、ありとあらゆる表現や、ありとあらゆる言い回しや、ありとあらゆる比喩を駆使して君に謝りたい。


 しかし、この願いは、テレビドラマのような万に一つの偶然でもない限り叶わない。

 それがわかっているから、今夜も君の名だけを呼ぶ。


 謝る言葉のひとつ前の言葉だけ、君の名だけ、今夜も呼ぶ。





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