心を読む

タマさんに挨拶をした私は

秋兎に裏に連れていかれた。


ナニされるんだろ?


「ナニする気よ?」


「別に何もしないよ、ただ休憩するだけ」  


「…ワザとなの?」


「……すまん、今のはワザとだ。」


少し照れ臭そうにするな。

頬を染めるな。

ちょっとカワイイでしょうが。


「お前を紹介するだけだよ。」


「両親に?」


「お前、俺を好きなのか嫌いなのかハッキリしてくれ。」



「これから、決めるわ」


「あっそ。」


溜め息付きながら言われた。

我ながら中々ヒロインっぽい感じを出したのに

少しだけ不服である

遺憾の意を唱えながら殴り飛ばしたい。


「ほら、着いたぞ」


カウンターの横の扉を開けて少し廊下を進むと

奥に扉があった。

ここに来る途中にも何個か扉があったけど

タマさんの部屋とかかな?


「ただいまぁ~…って居るわけないか。」


なに?二人っきりなの?

やっぱりワンナイトカーニバルなの?


「お帰りアー君…遅かったね…」


あ、だれか居た。

……別に残念とか思ってない。


「いや~…ちょっと色々あってな。」


「ナンパでもしてきたのかな?ナンパマン?」


「……聞いたばかりのアダ名だ」


「あら、そう。」


秋兎がそんなやり取りをしている相手を

私はようやく見た。

ダメね…初対面はいつも怖いわ。


しかし私は勇気をだして前を見てみる

そこには、後ろ髪がボサボサで腰くらいあり

目に隈があって眼鏡をかけた女性が

精気の無い目で椅子に座って

テーブルに肘を着いていた。



美人ではあるけど…残念系の匂い


「あらあら、誰が残念系?」


「え?」


「あなたよ、あなた。初対面の相手に失礼ね?」


口に出してたかな?


「口には出してないわよ。」


「なに、あなた心でも読めるの?」


「さぁ、どうでしょう。」


この人も私達と同じ不思議な力が

使えるのかな?



分からないけど心底めんどくさそう。


「しかし、ナナシがこの時間にここに居るの珍しいな?何時もはもう休んでる時間だろ?」



「何となくだよアー君。ワタシもロボットじゃないから毎回同じ行動をする訳じゃない。」


「そりゃそうだ。」


秋兎は納得して頷く。

素直か。


「それで、君はここで働きたいわけね?」


「は、はい。」


彼女はこちらを興味なさげな目で見ると

コーヒーだろうか?

ひとくち飲むと溜め息を付いて


「いいよ。好きにして」


……え?


「なに、キョトンとしてるの?ここで働いて良いと言ったの。部屋も勝手に空いてるところ使って良いから。」



「あ、ありがとうございます!」


なんだ!感じ悪いけどいい人じゃん!


「ただし」


そう言うと彼女は立ち上がり猫背で

歩いてきて私の前に立つと


「ワタシ達の邪魔はしないでね?」


声色を変えること無く

ただ、国語の教科書を嫌々朗読させられる時

みたいに棒読みで何の感情も無く

彼女は言った。

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