第6話 巣立ちとともに
プロポーズしたのはええけど、結婚式何処であげようかと二人で話しよった。そんで、結婚式どれくらいの規模でするんかのぅって話しよったら、家族だけであげるのはダメですかって言われた。職場の人や友達呼ばんでいいんかって聞いたら、お互いにその方が気楽や思いませんかって言われたもんで、そうやなぁって返した。
爺さんとお父さんにも結婚式のこと相談したら、家族だけのこじんまりしたのでかまんって言われたもんで、そうすることにした。そんで何処にするか悩んでたら、前に行った熊野速玉大社で結婚式確かあげれたと思うけどってお父さん言うてくれたんやけど、優子さんに、ウェディングドレスって女性の憧れ違いますかそれ着るんやったら、別のとこがいいと思いますけどって言うたら、優子さんが、私ドレスより白無垢がいいですって言うたもんで、それじゃあ熊野速玉大社でできますねって言うて、場所は決まった。それをまた今度申し込みに行かんといけんのぅって話しよった。
この頃になったらクロと友は、長い時間家の外に出るようになった。そやもんで、もうそろそろかなぁと思ってた。友とクロに餌を庭にでて与えるようにしてみた。
他にも家の前に出て見たり。あと量を少なめにしたりもした。そうやって、ここから離れても大丈夫なように準備していった。最初の頃はカァカァって鳴きよったけど、続けてたらそれが普通になった。
会社では、部長にだけ報告した。まだ式場は申し込みしてないけど、家族だけでこじんまりした式にする予定ですって言うといた。そうしたら、慶長休暇とれるから、決まったら言うてくれって、それと、新婚旅行どうするんやって言われて、まだそれも決めてないのでって言うたんやけど、はっきり言うと忘れてた。結婚式のことしか頭なかったもんで、帰ったらどうするか相談せんといかん。
そんで家帰ってから、優子さんに新婚旅行も決めんといかんねって言うたら、私すっかり忘れてましたって言われてしもて、わし笑って、実は今日部長に言われてわしも気づいたこと言うたら笑ってた。新婚旅行かぁ、思い浮かばない。そんな話しよったら、爺さんに、親族顔合わせどうするんや、優子さんのお兄さんには報告したんかって言われたもんで、そうや優子さんのお兄さんにはって聞いたら、電話で言いましたって言うとった。和成さんは一人っ子ですよねって聞かれたもんで、そうですって答えよった。
そんでまず顔合わせやけど、再来週の日曜日に、近くの料理屋さんに予約入れた。まぁ一度顔は見てるけど緊張するわ。お兄さんやけど、年下なんよね。何と呼んでいいのかのぅ。
それでよう考えたら爺さん、スーツ持っとらんかったから、新調せんといかんかったもんで、優子さんに相談してみたんや。そうしたら、明日私休みなもんで、爺さんと行く予定にしてますよって言われたんじゃ。爺さんわしに相談せんと優子さんに相談しとった。そんで一式揃えなあかんもんで、優子さんに十万程預けといた。
最近は優子さんに頼りっきりなもんで、お父さんに申し訳ないですって言いよったんやけど、この前爺さんに助けてもろたんじゃって言うもんで聞いたら、お父さんが支払い期限あるもん払いに行こうとしてたみたいなんやけども、どうしても外せん用事できてしもて、代わりに爺さんが入金行ったらしい。そやもんでお互い様じゃって言ってくれよった。それ聞いて、なんかもう家族なっていっとるんやなぁって思うたんじゃ。
それから日が経って、料理屋さんで顔合わせしたんじゃ。お兄さん一家を紹介してもろた。お兄さん夫婦に甥の翔太くん、姪の柚月ちゃん、まだ二人とも幼稚園行くような子で、可愛いらしかった。そんで料理運ばれてきて食べてたんやけど、翔太くんがちょこちょこってわしのとこ歩いてきて、わしの膝に座ってくれよった。そうしたら、反対側の膝にも兄ちゃん真似して柚月ちゃんが座りよった。兄嫁さんが叱ってたけど、わしはそのまま話しよった。わし今日は車やから酒飲んでなかったしな。おっちゃんとも仲ようしてなって。そうしたら、おっちゃんとこ、今度遊びに行っていいって言うもんで、ええよ、そうしたら遊ぶもん用意しとかんといかんなぁって言うたら、今流行ってる事とかどんなのが好きなんかとか話してくれよった。そんでそれを後でメモっといた。顔合わせは終始和やかで、お兄さんからも妹のことよろしくお願いします言われて、はいって返事したんや。そんでお兄さんのこと何とお呼びしたらよろしいですかって、気になってたから聞いてみたら、笑ってお互い名前でいいと思いますよって言われたんじゃ。後な、リフォームの話して自分の親の部屋もあるからびっくりされたんやけど、もうね、お父さんも一緒におったから、わしら皆んな家族みたいなもんでね、居てくれた方が楽しいですわって言うたら、父のこともよろしくお願いしますって言って貰えたんでよかったわ。
それから次の休みに、結婚式の予約に行きよったんや。そんでいつにするかって話しよったんやけど、半年後くらいの十一月頃やったら空いてるいい日あったもんで、その日にした。それからは忙しかった。衣装決めたりせんといかんし、引出物も家族の分だけでも用意せんとならんし、大安の日に結婚を聞きつけた人がお祝いにきてくれるもんで応対せんといかんしな。そんでそうやって人が出入りするもんやから、クロと友はさらに家の外で過ごす日が増えたんや。そうしたらいつのまにか庭の木に巣を作りよった。そやもんで、そのままにしといた。クロと友にとったらここが安全な場所っていう認識なんかのぅ。よう見たら卵があってな、これはそっとしといたらんといかんって家族で話しよった。そやもんで家のリフォームはちょっと二ヶ月程延期した。そんでヒナが大きくなってきて、わしらがリフォームの為にしのばあの紹介で家借りて荷物の運びだしがあるもんで、その時にクロと友に言って聞かせた。ここにな、工事のもんが入ってうるさくなるからな、工事終わるまではの、この家近づくと危ないからの、子供ら連れて安全な場所へ避難せえよって言うたら、カァって鳴きよった。そしたら次の日の朝に、外でカァカァ鳴くもんで見たら、クロと友が三羽のヒナ連れてこっち見よった。その後家の外に皆んな飛んで行きよった。それからリフォームに入る前に可哀想やけど、造園業者の人に来てもろて巣を撤去してもろた。巣があったら帰ってきてしまう可能性もあるからな。
そんでリフォームはうちの会社でお願いした。設計はだいたいしとったんやけども、キッチンは優子さんが希望するもんがあったもんで、ちょっと変更した。爺さんとお父さんのはそのままやった。どこも行き来はできるようにはしといた。晩御飯はみんな一緒に食べるしな。でもお父さんの方には小さめのキッチンは用意しといた。お兄さん夫婦が泊まれるようにもな。
三ヶ月程して荷物も運びいれて、お兄さん一家も呼んでお披露目した。そうしたら、お兄さん夫婦びっくりしよった。自分たちも泊まれるようになってるからな、それにわしらのとこに、子供らが遊べるようにもしとったもんで、甥と姪が喜んで走り回ってた。
しのばあにも世話になったもんで、後日家に招待しよった。そうしたらクロと友はおらんのかって聞いてきたもんで、引っ越し前に家出て行ってからは来とらんって話しよった。そうしたら巣立ったんかのぅ。って言いよった。それでよう考えたら、クロと友が引っ越し前に子供ら連れて顔見せたきりおらんなったのぅって言うたら、おお、ようやっと夫婦になりよったんか、子供まで作ってお前先越されたのぅってしのばあに言われたわ。わし苦笑いしたわ。
庭の木はそのまま残してもらった。クロと友がまた来るかもしれんからの。ただまだ顔見せにはきとらんけどな。これからも避難場所になるかもしれんもんでな。
そんでな、あっという間にもう十一月に入りよった。結婚式も近づいてきて、会社でも冷やかされよった。中には奥さん一回りも若いなんて羨ましいですわって言うやつもおったわ。そんで新婚旅行のことも聞かれた。
わしら新婚旅行どうしようって話したんやけどな、これといって思い浮かばんかった。海外の話もあったんやけども、国内で美味しいもの食べたいねって言うもんで北海道にした。食べること以外にも動物園や牧場行ったり夜景みたり色々考えてるんやけどな、あと食べるところはジンギスカンとかスープカレーとかラーメンとかかのぅ。そんで旅行会社行って希望全部言うて手配してもろた。結婚した翌日に出発するもんで、式したら空港近くのホテルで一泊することになってる。
優子さんの方は、職場の人がこれまで優子さんに色々あったもんやから、結婚が決まってそらもう喜んでくれたらしいわ。一週間程お休みもらうんやけども、ゆっくり楽しんでこいって言われたみたいや。
そんで結婚式当日、朝早うから起きて四人で向かった。優子さんの準備があるもんで、それに合わせて出たんや。後からお兄さん一家も来てくれて、翔太くんも柚月ちゃんも、ビシッと髪型も服装もきまっとったわ。
用意ができて神前に移動する時にな、近くでカラスの鳴き声がしたみたいやねんけども、わし緊張してそれどこやなかった。
神前に入って式が始まった。神主さんが祝詞をあげて、そのあと、わしと優子さんが三々九度の盃をかわした。そんで誓いの言葉述べて、玉串を捧げて二拝二拍手一礼をして、その後指輪の交換をした。指輪は結婚式申し込みした帰りに見に行って申し込んだから、早うにできとった。そんで一通り終わったら、みんなで写真撮ってわしらのアルバム作ってもらうので写真撮ってもらった。その時にまた、カラスの鳴き声がしたんや。そうしたら翔太くんが白いカラスと黒いカラスが飛んでるって言いよったもんでびっくりした。そんで優子さんとクロと友がお祝いにきてくれたんかもしれんのぅって話しよった。
その後は予約してたところでみんなで食事して、引出物や翔太くんと柚月ちゃんにおもちゃ渡したりして、無事に終わった。
みんな折角やからここで一泊することになってたもんで、その後車をお兄さん夫婦に預けて、わしと優子さんは新宮駅から和歌山まで行って、関空近くのホテルに泊まった。
ホテルの部屋で、わしは優子さんとしみじみと話しよったんじゃ。
「わしはこの歳やから、もう結婚あきらめとったんじゃ、けどもな、友を保護してからな、色々変わりはじめたんじゃ。職場の人からも言われたんやで。そうやって変わっていく中でな、優子さんに出会うた。料理上手で気遣いできる人で、可愛いしな、まさかわしの嫁さんになってくれるとは思わんかった。優子さんありがとうな。そんでこれからもよろしくな。」そう言って優子さんを抱きしめた。そうしたらわしの胸に顔埋めとった優子さんが、言ってくれた。
「私も和成さんに出会えてよかったです。優しくて思いやりあって、私を守ってくれて、そして支えてくれた。私もクロに出会えたから和成さんに出会えたんです。凄く不思議ですよね。白いカラスと黒いカラスが縁結びやなんて。」それで二人でそうやなぁって言うてた。
カラスがわしらの元から巣立って自然にもどり、そしてわしらも新しく二人で人生歩むことなった。
幸せを運んでくれた白いカラス、どうか自然の中で幸せでいてほしいと願うばかりだった。
白いカラス 渡邉 一代 @neitam
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