第16話 新たなる技能と武具
「……優遇って、隊服のこと?」
「隊服も、いろんな装備も。なんで第五にだけ? それとさ、通称の“双子隊”ってのは何?」
「装備は、俺だって分からないよ。隊長はああいう人だし、それと双子隊のってのはこの双子山が由来らしいよ」
にも関わらず最初から隊服など
なにせ、
そして、
先日、
曰く、
その視点で現実を俯瞰すると、第五隊の現状は
技能持ちの
四人の連携。
思えば、
また、双子隊という愛称も、
双子隊としての指示や命令は、
つまり、この一泊訓練にも何らかの意図はある。
「おーい、
「……え? なに?」
「何じゃないよ。さっきから声掛けてたのに、ずっと黙ってるんだもん」
「ゴメン、ちょっと考え事を……」
「
「ななななななんでだよ」
「しー、声大きいってば」
「ご、ごめん」
「じゃあさ
「……細かいことは分からないけどさ、前にも言ったじゃん。救助隊だからこそ、最高の装備を与えられてるって」
詳細を隠すため、以前、二人に装備を説明した時にも言ったごまかしを繰り返す。
「救助隊ってさ、あたしも何をする隊なんだろう? って不思議だったのよ。カードがあれば緊急下山できるし、それまでだって救助隊を頼むなんて場面はなかった……あ、
「建前はね。実際は違法入山者の救出ってのもあるよ」
「この二週間、訓練ばっかりだったよね」
「いいことじゃん。要救助者がいないってことなんだから」
「
「……一回」
「まあ、
「……分からないよ」
「もしこの装備を登頂隊が支給されて、ここで同じように訓練すればさ、ひょっとしてどこかの山って、とっくに解放できてると思わない?」
だが、青い熊や、
ただ、青の熊との戦いを説明するには、その顛末を語る必要がある。
そして、倒せたという事実は、彼女の更なる増長を招く恐れがあった。
『そんな力があるなら、日本中の山核を解放すればいいじゃない』
もしそんな問いかけをされたならと思うと、
その時、
「
「何があったの?」
それは彼女が覚醒した状態だったことを表していた。
「魔獣の気配がする。警戒してくれ」
「なんでそんなこと分かるのよ」
「
「……分かった。
驚いたことに、
彼が
「気配がするって、武具の力?」
「うん。たぶん山核の中だと使えるかもしれない」
「……使えるにしても、使うの?」
「いざって時はね。いつまでも隠していられないだろ」
ただ、その辺りを矛盾なく説明できる自信はなかったため、
「
「魔獣だって? どこ?」
「隊服をしっかり整えて、ヘッドライト点灯、ポール装備」
「
「上からだ! 防御!」
全体的に細長いシルエット。
小枝で創られたような四肢と、異様な飾り?
「鹿! 白い?」
「白の鹿?」
双子山では初めて見る青以外の魔獣は、大きく複雑な形状をした角を持つ白い鹿だった。
「俺が前衛、
「顕現せよ、丁丁発棘」
走りながら左手で右腕の丁丁発棘を具現化する。
特殊能力は使えなくても、盾替わりにはなる。
闇の中ならば、武具もまともに視認はできないだろう。そしてこの敵は、自重しながら勝つことはできない!
鹿の角は、まるで歪な剣の集合体だ。
跳躍の間に突進したり首を振ったりして
それを丁丁発棘で止め、ポールの“斬”で手傷を負わせる。
これまでも鹿との戦闘はあったが、色違いだとずいぶんと性格が違う。
この個体は、
また、跳躍すると後衛から“射”を浴びると気付いてからは、
幸い、白く光る魔獣が逆光になり、
ポール一本で鹿と斬り結んでいるように見えていた。
ただ、鹿のいくつかの攻撃の際、
「俺、加勢してくる!」
「あ、あたしも!」
犬との戦いに慣れた二人が、初めて見る鹿の恐怖に突き動かされるのは仕方ないことだとは思う。
ただ、それは冷静さを欠いていた。
「待って!」
その時、白い鹿は眩い光を放つ。
それは闇夜の中で目を凝らしていた全員の眼を灼いた。
三人の悲鳴が上がる中、
伸ばした左手から、白を侵食する赤い光が放たれ、それは鹿を一瞬で瀕死に追いやった。
ただ、そんな事象を正しく認識できた者はいなかった。
視界を断たれ、
同じく
視力を失った
彼らがそこで目にしたものは、白い魔核と、一振りの剣だった。
「みんなゴメン!」
「なんかまた技能を手に入れちゃったの!」
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夜警中の開は優実の疑念に答えながら、卓磨たちが双子隊に介入する理由に、百合香を守る意図があると想像する。そんな中、白い鹿の魔獣が現れる。全員の強力で鹿を倒した後、武具がドロップし、優実が新しい技能を手に入れた。
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