第2話 双子隊、入隊式
「
「同じく、
黒い短髪、身長170センチ程度の童顔な少年と、栗色ショートボブに小動物を思わせる幼顔、150もない低身長の少女が挨拶し、揃って真新しいカーキ色の制服をぎこちなく曲げてお辞儀する。
「「双子隊にようこそ!」」
ハルナ
隊の宿舎にある食堂は学校の教室程度の大きさで、新人二人を含めた六人では広すぎる空間だ。
「おほん、新入隊員の自己紹介に続きまして隊長の挨拶を」
司会進行役の長身の女性がにこやかな笑顔のまま隊長を促す。
(背、俺よりずいぶん高いな……)
(ぼんやりしてる場合じゃない、やっとここまで来たんだ!)
胸に秘めた決意を思い出し、気を引き締めて隊長に正対する。
「
「そりゃ無理ですよぅ、
「
「誰がお母さんよ、もう!」
大柄で岩の様な隊長が笑顔で歓迎の言葉を述べ、隊長の隣に立つふんわりとした可愛らしい女性が辛辣な突っ込みをいれ、端にいるイケメンが会話を繋げ、進行役の女性が赤面し、新人以外の四人が声を上げて笑う。
そんな緩い雰囲気に新人の二人は困惑を隠せない。
(あれ? 地獄の双子隊とかって呼ばれてたんじゃ?)
新人二人は、お互いに今日初めて自己紹介する関係だったが、頭に浮かんだ感想はまったく同じものだった。
地獄の双子隊。鬼の第五救助隊。お気の毒さま。
配属が明らかになってからこれまで、ハルナレイクタウン周辺で聞く評判は彼らを必要以上に警戒させていた。
二人とも手に入る情報はできるだけ仕入れていた。
ただ、国の統括機関や管理団体の再編や変更が相次ぎ、諸外国との情報同調に合わせ、公的な情報が矢継ぎ早に切り替わる過渡期にあって、どの情報が正しく最新版なのか当事者たちでもはっきりしない状況が続いている。
そんな中でも、ハルナ山核救助隊の第五隊はクレイジーだ! という悪評のようなものだけは共通して聞こえていたため、今日この日を迎えるにあたり、
「ほらほら、新人ちゃんたちが困惑してるでしょ。次、
赤かった顔を平静に戻し、進行役の
「
「こら、勝手に担当を決めるんじゃない。二人が誤解するだろうが」
「補足するとね、専門の役割というのはないの。チーム全体が得手不得手に関係なく、やるべきことをやるの」
「だって私、守りたいだけで戦闘は苦手なんだもん」
頭を抱え涙目の
このご時世、山に登る職を選んだ人が戦闘を嫌がることに違和感を覚える。
「守りたい……分かります」
小さな呟きをこぼす隣の
(そうか、セイバーなんだから誰かを守りたいって動機もあるのか)
彼は山核内で手に入るドロップ品に拘っていた。
だが、三隊共通の学科試験はともかく、体格や筋力といった戦闘に対する数値が足りないことが理由でハンター能力試験は不合格になった。
それでも、走力や俊敏さを認められ、セイバーに合格できただけでも僥倖だったと言える。なによりこれらの組織は生まれたばかりで、実績や適正の再考によって相互異動があることは確認済みだ。
セイバーは三隊の中では一番目立たない裏方みたいな組織だったが、開にとっては山核に関われるなら本音はどこでも良かった。
「僕は
(好きになるなよ子猫ちゃんってことかしら)
「最後は私ね。
(お母さんだ)
(お母さんだわ)
おっとり穏やかな
(ま、俺は母親なんて知らないけどな)
「さて、自己紹介も済みましたけど、隊長、隊の説明などされてはいかがです?」
「
「僕もそう思います。僕らの時を思い出してください」
「失礼だなお前ら。何を知って何を知らんか分からんから一から説明しただけじゃないか」
「人類の山登りの歴史や山核発生以前の、山登りがレジャーだったころの話を延々と語られた私たちの時間を今からでも返してください」
「あの時は最初の一週間が座学だったもんな」
「じゃあ歳も近いことだし、
「そんな訓練はされておりませーん。だいいち毎日のように情報や行動が変化してるのに、そんなふわふわした情報って学ぶ必要あります?」
「そうだな。二人とも入隊試験の学科を受けてるんだから、知っておく情報なんてあのくらいでいいぞ」
ワイワイとした内輪話の最後に
「それじゃあ歓迎会は終了だな。では、解散」
隊長の言葉に新人以外の面々がそれぞれに動き出す。
「えっと、取り急ぎ何をすればいいのでしょう?」
困惑した
「ああ、それはちゃんと決めてある。大事なお使いを任せよう」
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・開と百合香はハルナ山核救助隊第五隊に入隊し、郷原、真鍋、望月、湯狩、四人の先輩隊員と顔を合わせた。
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