「木枯らし」でワンライ 途中まで

 青タイルで装飾されたタイルの柱が立ち並んでいる。床は全て、黄土色の堆積岩。職人が丁寧に磨き上げたかのように見えるが、実はこれ全部木枯らしが掃除してくれている。

 大図書館は”どこにでもあって、どこにもない”。

 大図書館は”昔完成したが、現在は未完成”。

 そういった場所だから、館や廊下によって季節が違うこともよくあることなのである。

 さらに言えば、大図書館の職員は大体研究肌で本が大好きだ。つまり、本を守る事には命をかけられても、自分の命を守る事には驚くほど無頓着になってしまう。


「あー! ロマンちゃんの首が飛んでったァーーー!」

「ミッドネスカ先生、ミッドネスカ先生! 書類! 書類が嵐に!」

「誰だ! こんなところに教科書用高級お手入れセットを忘れて行ったのは!」


 この廊下は、丁度北西に三つ葉模様の飾り窓が開いている。飾り窓といっても外側から風だけはびゅうびゅう入る作りになっているから不思議なものだ。そして、埃や髪の毛だけを南東に飛ばしていく。掃除をするのは至極楽な作りだが、時折いたずら心をのぞかせるのか、掃除時間以外に風を吹かせる。

 丁度今が、その時だった。


「あちゃーですヨ」


 吹き飛ばされた首を追いかけながら、首なし騎士デュラハンの姿をした少女は溜息をついた。なにせ、この廊下で首を飛ばされるのは3度目だ。そろそろ管理課に文句を言っても許される気がしてくる。

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