おとぎ話/世界観を短く説明
むかしむかし、言葉はとても強い力を持っていました。
「がんばる」と言うと、人は限界まで頑張ります。
「雨が降る」と言うと、自在に雨が降ります。
「眠れ」と言うと、「起きろ」と言われるまで相手は眠り続けます。
人々は今のままでは不便だと考えて「言葉よ、力を少し失うように」と言いました。
たちまち世界は一変します。
生活を支える言葉は弱くなりました。
働こうにも感情が立ちふさがります。
道具はひとりでには動きません。
雨も風も太陽も、思った通りにはできません。
眠ることにも起きることにも、努力が必要になりました。
やりたいように物事を進めることは、格段に難しくなりました。
仕方がないので、人々は今の自分たちに合った暮らしを、また一から作りました。
──人々は忘れました。
言葉は少し力を失くしたけれど、まだとても強かったのです。
石ころ気分で投げた言葉が、運悪く人を殺しました。
人々が揃ってあげた声が、暮らしの在り方をまた少し変えました。
言葉は今も、ただの力としてそこにありました。
けれど昔々に少し力を失ったので、人々は言葉のおそろしさを実感することがあまりなくなったのでした。
めでたし、めでたし。
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