第6話
異世界人を地下牢に運び込んで、しばらく様子を伺ったが何の変化も起きなかった。中年のおじさんが縛られて気絶しているだけだ。
稀に意識を失うと覚醒してめちゃくちゃ強くなる者がいたりするので注意していたが、大丈夫そうだな。
牢屋の外から彼の体を棒でつついて起こす。
「うぐ、うう、ぅう」
猿轡を噛ませているのでうまく喋れないようだ。
私がパチンと指を鳴らすと猿轡が外れた。
「●●●▲▲☓☓☓」
何か言っているので翻訳機をかざす。
ちなみにこの翻訳機はいつぞやの異世界人から没収したものだ。どうやら神の加護がかかっているらしく、どんな言語でも翻訳出来る便利なやつだ。
『痛い、酷い、出して』
異世界人のおじさんは泣いていた。
うーん、情けないなぁ。
でも、戦士としての訓練を受けていないなら当然の反応だとは思う。
良くしてくれる人だと信じてついて行ったら、殴られて縛られて地下牢に転がされているのだ。私も訓練を受ける前の子供だったら泣いていただろう。
「このあと君を元の世界に戻す。だがその前に聞いておきたいことがある」
私は翻訳機を使って話しかけた。
「君を転移させたのは何者だ」
『私はそれを知らない。見ることをしない』
だろうな。他の異世界人も同じことを言っていた。
「そいつは自分を神だと言っていなかったか」
『言っていたと思う』
やはりそうか。
私達も神とやらはには接触したことがない。だが、どうやらこの世界に異世界人を送り込んで問題を起こしている輩がいるということはわかっている。一番最初の魔王も神によって作られたのではないかと疑っているぐらいだ。なんなら神とは魔王と等しい存在なのではないか?
「君の神の加護は飛行能力だったかな?」
『そうです。自由に飛ぶが可能性です』
言葉が少しおかしいのはこの翻訳機が異世界人向けに作られているかららしい。彼らからは正常に翻訳されているらしい。
しかし、自由に飛べる能力か。なかなか強力だ。こいつが我々に敵対したら弓矢や攻撃魔法で迎撃できないかも知れない。逃げられると再び捕らえるのは困難だ。
「わかった。では元の世界に帰ってもらおう」
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