第4話

でも、こうも囲まれてしまっては逃げられないし、武器が無いので戦えない。

僕が戸惑っていると、人垣が割れて、一人の少女が現れた。服装は動きやすそうな旅人風の服の上から部分的に鎧を身に着けている。この娘もおそらく冒険者なのだろう。

そして、サラサラの青髪、西洋人のような整った顔立ち、猫耳!

「うおお、本物の猫耳っこだ!」思わず声が出た。

夢にまで見た猫耳娘が目の前にいる。色々なアニメや漫画に登場する猫耳キャラを見るたびその存在に憧れていた。猫耳メイドカフェに足を運んだこともあった。持っている抱き枕は全て猫耳キャラ!会えないとわかっていてもどこかで会えないかといつも考えていた。

モモモたんにハマっていたのは彼女が猫耳キャラのアイドルだったからというのもある。

その夢の存在が目の前にいる。しかも滅茶苦茶かわいい。

これはもしかして、メインヒロインか?だとしたら最高だ!神様ありがとう!

僕が感動していると、猫耳娘が何かを差し出した。なんだ?

それはスマホのように見える四角い板だった。というか多分スマホだ。どうしてここに?

『あなたはどこから来ましたか?』

スマホが喋った。機械音声だ。もしかして、この世界の言葉を日本語に翻訳しているのか?

「僕は異世界からきました」

僕は素直にそういった。

『◆〇▼△×□●〇◎』

スマホが僕の発言を異世界語に翻訳したようだ。それを聞いた周囲の異世界人がざわめく。

しかし、最近のスマホはすごいな。何でも翻訳できるんだ。僕のスマホでもできるのかな。

猫耳娘がスマホに何か話かけて、再び僕に向けた。

『どのような能力を持っていますか』

どのような能力?英検4級とか……ではないよな。多分異世界で使える能力のことだろう。

戦闘はやったことないけど苦手そうだ。魔法も使えるのかな。ああ、でも一つできることがある。

「自由に空を飛べます」

スマホに向かってしゃべると、また翻訳される。

『××△◎▲□〇×◆■』

それを聞いた瞬間、周囲の空気が変わったのがわかった。

あれ、僕何かやっちゃいました?

猫耳娘がまたスマホに喋る。

『わかりました。渡したいものがあるのでついてきてください』

なんか一瞬冷っとしたが、大丈夫なようだ。僕は頷いて猫耳娘の後に続いた。

しかし渡したい物ってなんだろな。とりあえずこの世界の服が欲しい。スーツは目立つし、

暑いし動きにくい。

しかし、他の冒険者連中もぞろぞろついてくるの気になるなぁ。

猫耳娘はごく普通の民家に入っていくので僕も後に続いた。

「おじゃましま……」

玄関をくぐった瞬間、背後で扉が勢いよく閉められる。

え、何?

そう思った瞬間、後頭部に凄まじい衝撃。視界が真っ白になる。

何だ?痛い!殴られた?誰に?なんで?

立っていられず、床に倒れこむ。頭皮を液体が伝う感触。血が出ているようだ。

わけがわからない。猫耳娘は?あれ?僕は?異世界で?死………?

…………………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る