第7話「何時だと思ってる葵さん」
夏休みが始まって三日目。一日をかけて課題を半分ほど片付けたところすでに夜22時となっていた。
時間を見た途端、げっそりと気分が悪くなった。夏休みの初めに俺は一体なぜ課題に尽力してしまったのか。普通こういうのは満遍なく分けて行うのがセオリーじゃないのかと自分を責めた。
「はぁ…もう寝よう。」
お風呂に入り、二階の自室に戻っていると何故か姉がドアの前で立っていた。俺より3つ上ですでに社会人として働いている姉、諸星すみれ。まだスーツ姿ということはお風呂に入っている間に帰ってきたようだ。
「姉さん?どうした?」
「ねぇ、部長殺す道具ない?」
「酒くさ。そんなのねぇよ。ぶっそうだな。」
「ムカつくんだもん!私仕事終わってるのに自分の仕事押し付けてきて!なのに自分は定時で帰ったんだよ!?ブッ殺してやる!」
「そりゃあよお〜、部長は死んでも当然だなぁあ〜?だが姉さん、ブッ殺してやるってのは間違えてるブッ殺したならいいんだ。つまりおやすみなさい。」
「ひぃん!明日殺してくるもん!」
このセリフは半年ほど前から聞いているから聞き飽きた。
部屋に入り水を飲んでいると日付が切り替わるところだ。
時計の日付が切り替わり00:00となった瞬間、ベッドの横にある窓からコンコンコンとノックが聞こえた気がした。
「え、嘘だろ?怖っ!?」
俺は幽霊は信じるタイプだから、マジで怖い。
「ね、姉さん!まだいるか!?」
返事はない。酔い潰れて寝たんだろう。
「仕方ないっ。めっちゃ怖いが。」
勇気を出してカーテンを開くと、真っ白な服を着た女の霊が立っていた。
「んひっ!?……葵さん?」
幽霊ではなく、汗だくの葵さんが立っていた。窓を開けてみる。
「な。何してるんだ?」
「遊びましょ?」
「何時だと思ってるんだ葵さん。それにどうやってここに上ってきた?」
「はしご。家から持ってきたの。」
外を覗くと家にがっつりとはしごがかけられていた。キモい。
「あれ家から持ってきたのかよ。とりあえず入ってくれ。あと汗だくじゃないか。今日両親夜勤だし、いるのは姉さんだけだからシャワー浴びてきていいぞ。」
「っ……。お借りします」
そそくさと葵さんはシャワーを浴びに行ってしまった。とりあえず冷たい飲み物と着替えくらいは準備してやるか。眠いけど。
「あれっ…そういえば葵さんうちに来たの初めてだよな?なんでお風呂の場所分かってんだ?」
下で迷っているかもしれない。俺は階段を降りて行くとすでにシャワーを浴びる音が聞こえてきた。
「着替え、予備のジャージで許してくれよ。あと中には入らないからタオルと着替えはドアの前に置いておくから」
「一緒に入る?」
「入らない!!」
無事辿り着いて入っているなら問題ない。俺は部屋で待つことにした。
待たないで家から逃げるべきだったと後悔するのは30分後だった。
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