第24話最終話になる覚悟で

民法の壁。貞操を守れというルール。私はひたすらなぜかここが越えられなかった。大好きな彼に求められることがあってもその要求だけは後回し後回しにしてきた。ある意味どんな攻撃をしても、壁にひびさえ入らなかったのかもしれない。いや、もし入っていたとしても修復可能な程度だったんだと思う。でも、理不尽な事実に気づいたことで『通り抜けフープ』(←ドラえもんの道具の一つ)を手に入れてしまった。壁を壊さなくとも、たやすく向こう側へ行けてしまう禁断の道具だ。

そもそも一線を越えていることがバレなければいいという基本に立ち返ればいい。私はバレたらどうしようかばかり不安になっていた。それも今となってはバレたらどうしていけないのかという理由が変わっていた。バレたら子供が可哀想、最低な母親の子供というレッテルを貼られるのはいけない。ただその一点だった。でも今はどうかというと、子供の心配より彼の心配のほうが優先になっている。彼の家庭に何かあっちゃいけない、夫が彼に危害を加えたらどうしよう、そんなことだ。つまり、私は子供以上に彼の存在を大切にしたいと思っているということで、そんな尊い存在が自分のことを求めてくれているのに応えない自分に疑問をもつようになっている。彼と一線を越えていないからといって、子供に対する私の愛情のなさとか邪険な扱いのレベルとかが変わるわけでもない。だったら、もはや十字架を背負っている負い目からでも子供をもっと大切にするような態度や行動にでた方が子供は喜ぶんではないのだろうか。

彼は体もつながることを愛情表現だと言っていた。私は単に愛情表現ならキスとか好きということとかで代用できると思っていた。でもそれって、私個人が代用とか置換とか換算とかできるものだと捉えているだけで、彼にとってはそれは他のものに置き換え不可能なものなのかもしれない、という考えも出てきた。だとしたら、私がそれを一方的に批判して拒むというのもいけない気がする。今は彼が私に合わせてくれている状態だとすれば不公平だ。あのミラクル事件から今までずっと、彼は自分の考えに私を一切従わせようとせず、見守ってくれているようなものだ。自分の考えに引きずり込もうとすることなんていくらでもできたはずなのに。私はここでも脱帽。こんな優しさのかたまりみたいな男性、他にいる?最低でも私が死ぬまでには二度と同じような人には出会えないと思えるくらい、今は本当に彼を尊敬している。

たとえバレて自分が離婚されて子供をとられて独り身になったとしても私はさほど痛くないと思う。それよりも、人生で一度出会えるかどうか分からないような心から尊敬する貴重な人と共有する時間がなくなることの方が、自分の人生において、その存在意義をなくすような気がする。夫と子供が自分に残されて、彼の存在が記憶から消されることの方が、今の私には自分の人生を楽しもうとする前向きな気持ちを失わせることに近いかもしれない。もちろん、それは彼に依存するというものではない。彼が私をいらないものとするなら、それはそれでいい。それだけ私には価値がないと判断されたまでで、尊敬する彼の行動に異議はない。その証拠に、以前関係をやめたいと言われたときにも私はすんなり引けた。とにかく、尊敬からくる彼への好意には依存はなく、全ては彼が嬉しいとか幸せとか思えることだけを目的としていれば、今はすごく素敵な充実した日々をおくれているのが現実だと思う。

ここまで考えがまとまっていれば私はもう十分だと思う。通り抜けフープを使って向こう側へ行ってしまっても。きれいごとを言えば、尊敬する彼が向こう側で待っててくれてるので、それを楽しみに壁を通り抜けるだけ。一般的に客観視していえば、凡人主婦、ついにゲス不倫突入!といったところだろうか。人の夫をねとったクズ女。最低な母親。悪い表現なんていくらでも挙げられるくらい、一線を越えるなんていいところは一つもないかのようだ。

それでもいいのか、私は。それでも行ってみないとわからない世界は存在する。分からないままでよしとするか、踏み込んで探求するのか。その世界はまさに剣山のようなもの。常に痛みはともなう。足の置き方を一歩でも間違えれば命取り。いちかばちか。人生でこんな大きな賭けをしたことがあったろうか。

読んで頂いて下さった皆さん、本当にありがとうございました。一線を越えないのが条件の私の婚外恋愛日記は恐らくここまでです。この後は、剣山の中をどう生活し、何を考え、その先に何が待っているのか、そんなことを皆さんにお話できたらいいなと思いつつ、私自身が世間からの圧力に耐えられなければこのままさようならのかたちになりますことをご了承頂きたいと思います。

いざ、出陣!!笑

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続・変貌〜凡人主婦の徒然考察記〜 生涯現役恋愛宣言☆ @sweet-tooth

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