第六話
神官の話が終わった後、私たちは王都にいる間滞在することになる宿へと案内されることになりました。私たちが王都にいる間に滞在することになる宿は教会の隣にあるものでこれまた豪華な造りでした。
ただそれも当然のことらしくこの宿屋は一般向けに解放されているものではなく教会の関係者であったり一部の貴族が利用するそうなのです。となればこれだけ豪華なのも頷けるのですがどうにも落ち着きません。てっきり普通の宿屋に泊まることになると思っていたわけですから本当に驚きです。
ただ、私にはもっと気にしなければならないことがありました。というのもこの宿では私たちは二人一部屋で部屋わけがされているらしいのです。
ここまで言えばもう分かるでしょう。もしも仮に私が金髪縦ロールの少女と同じ部屋になったらどうしましょう。
普通に考えて嫌がらせはされるのでしょうか。まぁ、それくらいなら村でのこともありますから多少なりとも耐性はあります。でもそれは最も軽く考えた場合です、最悪の場合、というかほぼ確実に寝込みを襲われることが考えられます。だってあの目は本気でした。
本当に知らないうちに恨まれることでもしてしまったのでしょうか。
でも、会うのは今日が初めてですし、私はこれまで村から出たことすらありません。接点らしい接点もないのに一体全体どうしてあそこまでの目で睨まれなければいけないのでしょう、本当に意味が分かりません。
というか本当に怖いのでそんなに私のことを睨まないでください。ほんと、私が一体何をしたっていうんですか。
「イリスちゃん、どうしたの? なんだか顔色悪いけど……」
「私、シスカちゃんとおんなじ部屋がいい」
どうすることもできないとはいえ本当にそうすることができたらどれほど幸せか。
もう、他には望まないのでせめてあの金髪の子以外、出来ればシスカちゃんと同じ部屋でありますように。
「ん? ならそうしようか」
彼女のの思いもよらない返答に私は首を傾げます。てっきり部屋割りはもう決まっているものだとばかり思っていましたがこれはまだ希望はあるのかもしれません。
「イリスちゃん、もしかしなくても神官様の話聞いてなかったでしょ」
「え、いえ、そんなことはないのですが。とりあえず同じ部屋でお願いします」
思わぬ収穫でした。
これで朝起きたら死んでいるという可能性は限りなく無くなりました。それにシスカちゃんと一緒なら多分ここでもやっていけるはずです、これといった根拠はないのですが。
とはいえ、手放しで安心出来ると言う訳では無いのです。どうであっても最低限自分の身を守れるくらいに強くなっておかなければ……。
「シスカちゃんは剣術とか護身術は得意?」
「なに、いきなり。でもまぁ、それなりなんじゃないかな。我流だし生きていくために仕方なくって感じ」
「じゃあ私にそれを教えて!」
私の即答に驚いた様子のシスカちゃんでしたが最後には笑って了承してくれました。
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