立場が変わって見えたもの

創作において、作品を完成させるという第一の壁を彼は乗り越えることができた。


そんな彼の初作品の1話目は、数十のPVをつけることができた。

そして、1つのレビューもついた。

しかし、今はそこまでだ。


「だめだ、燃え尽きた。次どうすればいいんだ。」


彼は思いつきで筆を手に取ったために、1話までは勢いで書くことができた。

しかし、その次が続かない。2話目が書けないのだ。


彼は元々は読者だ。

様々な小説を読むにあたって、たくさんの1話目を読んだ。

そこに掴みがあるかどうかは、自分が読みたいかという視点で散々経験してきたし、そこにこだわった1話目を書くことができた。


しかし、2話目と1話目には大きな差がある。

それは、前回の話があることだ。

彼の1話目は、次に繋げることを考えていなかった。


「どう繋げればいいんだ……ネタはないのか……」


追い詰められた人間は、目の前に藁が、手がかりになりそうなものがあれば、すがるようにそれを掴む。

彼がその時に掴んだのは、唯一残されていた一つのレビューであった。


「掴みはいいけど、後に繋げることを考えてない。先を考えないと、このままだと続かないよ」


彼はレビューアーでもあった。

辛辣な言葉であっても、作者の今後のためになるのであれば、それは良いことなのだと信じていた。


そんな彼がこのレビューを見て、こう思った。


「作品も書いたことないやつが、偉そうなこと好き勝手言いやがって、何もわかっちゃいねぇ!」


全く、役に立たないレビューだな、と。

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