第20話 期末テストとちょっと贅沢
◆
遂にやってきた期末テスト。
テストということは、やはり順位が張り出されるということ。
それにプラス、自分の努力までもが可視化されるということになる。
俺は、この期末テストを頑張ると決めた。
憧れの夏凪さんに近づくと決めたからには、努力は怠らなかったはず。
きっと、良い結果が来るに違いない。
てかそう思ってないと心が持たない。
それはさておき。
遂に期末テストになるわけだが、俺はこの日のために準備を沢山してきた。
夏凪さんという頼りになる助っ人と一緒に、自分ではありえないほどの勉強をすることができた。
───そして現在。
「これから、1科目のテストを始めます。
起立!」
「「「お願いします」」」
「着席」
「じゃあ今から配っていきますね」
遂に1科目目のテストが始まろうとしていた。
もちろん、あれだけ復習してきたんだから、緊張なんてしない───はずが無かった。
今までのテスト以上に、手がブルブルと震えている。
でも、この震えを抑えないことには何も始まらない。
(頼むから静まってくれ……)
そう願っても静まる気配が見渡らない。
こういう時こそ、素数を数えるのが良いとどこかで聞いたことがある。
「2,3,5,7,11.13……」
そんなことをしていると、隣に座っている夏凪さんから小声で「雪下くん、雪下くん……」という声が聞こえてきた。
「雪下くん、大丈夫です。自分のやってきたことを信じればいけるはずです。落ち着かないとだめですよ。頑張ってくださいね」
その言葉を聞いてハッと目が覚める。
自分を、信じて……。
バチッ
頬にビンタを入れ、テストに集中させる。
よし、行ける。
───雪下関、高校初めての戦い、行きます。
◆
───キーンコーンカーンコーン
テスト八時間目を終えるチャイムが鳴り響く。
今回の期末テストは8教科。
つまり、このテストで終わりになる。
まず思うことはだた一つ。
(やっっと終わった……)
本当に緊張感がやばかった。
何度も何度も見直して、「これ本当にあってるよな?」と考えながらテストを受けるのは精神的にもきつかった。
でも、これでテストは終わり。次は夏休み明けにテストがあるぐらいだ。
これでテストの驚異は過ぎたと言ってもいいだろう。
「これでテストは終わりだ! 今日は騒ぐぞ~」
なんてことを言い始める人も出てきた。
正直、教室でそんなに騒がれると迷惑だが、騒ぎたくなる気持ちもわかる。
(こんなに騒げるのも高校生の醍醐味だしな……)
自分が言うのもなんだが、後悔だけはしないでほしい。
自分が中学生の時、家事と学校生活を両立できたらなぁ。なんて考えることが多々ある。
クラスメイト達にはそんなこと考えるようになってほしくない。
閑話休題。
帰ったらまず何をしようか。
テストの復習をするのは確定として、少しハメを外すのも悪くはないだろう。
ちょっと贅沢でもしてみようか。
(ならあそこに行ってみるか……)
俺は、商店街にあるとある店に向かっていった──。
◆
───カランカラン。
俺が向かった場所は、商店街にあるケーキ屋さん。
普段は、やろうと思えば自分でケーキを作ることができるため、めっちゃにこういう場所には来ないのだが、ここにはこのケーキ屋の娘であり、俺のクラスメイトである
もちろん、白羽さんと関わりたいからここに来たわけではなく、前にここでケーキを買わせてもらったときに一つ多めに入れてもらったことがある。
そのお礼、というわけではないが、こんな日にこそ、このケーキ屋で買いたいという気持ちがあったからだ。
しかも、ここのケーキ屋は今まで食べてきたケーキの中で一番と言ってもいいほど美味い。
流石に、今の自分の実力ではこんなに美味しいケーキを作ることができないだろう。
いつか、このケーキの作り方を教えて欲しい。
───なんて考えていると、
「いらっしゃいませー、って雪下くんじゃん。久しぶり」
「あぁ、久しぶりだな。テストお疲れ様」
「関くんこそお疲れ様。今日はどうしたの?」
「普通にケーキを買いに来たんだ。テストも終わったから息抜きにな」
「なるほどね。こちらとしては願ったり叶ったりだね」
店から出てきた白羽さんと少し会話をしながら、美味しそうなケーキを選んでいく。
前回はショートケーキを2つ食べさせてもらったが、今回は違うケーキも食べてみたい。
何か良さそうなケーキは無いだろうか……?
「いちごケーキ……」
目に止まったのはいちごケーキ。
どうやら、他のケーキよりもいちごが多いのが特徴らしい。
(夏凪さんが好きそうだな……)
真っ先に浮かんだのは夏凪さんの笑顔。
きっと、このケーキを持って行けば喜んでくれるに違いない。
「えっと、このいちごケーキ貰ってもいいかな?」
「ふーん、誰に渡すか教えてくれたらいいよ」
「理不尽だろ……」
職権乱用だろ。
何故か白羽さんはニヤニヤしているし、そんな顔に出ていただろうか。
「で、誰なの?」
「……自分で食べるんだよ」
「うーん、なんか、このケーキを渡したら喜ぶだろうなぁ……みたいな顔してたからさ」
「どんな顔だよ……」
「まあ、反応から察するに、誰かに渡すのは確実として、誰とは教えてくれ無さそうだなぁ……」
「もうそれでいいよ……」
このままじゃ埒が明かないため、俺が折れることにしよう。
本当に、これからは自分の表情にも気をつけないといけないな……。
それはさておき。
自分が食べる用のケーキも探さないといけない。
どれか良さそうなケーキは無いだろうか。
(食べるなら、少し参考になるやつがいいよな……)
と、なると。
自分で作ることのできないケーキの方がいいだろう。
自分が作ったことの無いケーキ……チョコケーキはどうだろうか。
まだチョコケーキは作ったことがない。
参考にさせてもらおう。
「じゃあ、チョコケーキ1つもらおうかな」
「はーい」
慣れた手付きで白羽さんはケーキを取り出す。
「えっと、この2つでいいのかな?」
「あぁ、それで頼む」
「了解ー」
「あ、マカロンおまけね。遠慮しなくていいから」
「ありがたく受け取っとくよ。ありがとう」
「いえいえ」
白羽さんから、ケーキの入った袋を受け取り「ありがとうございましたー」という声を聞きながら、店を後にする。
夏凪さん、喜んでくれるだろうか……?
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