11話 驚愕は襲撃に
さて、予告通り俺たちは雷の登録と依頼を受けるためにギルドを訪れたわけだが、
「帰りたいわ」
「私も最初はそうだったよ。分かる分かる」
美少女2人がマゼンタな建物に拒絶反応を示しています。俺だって入りたくないぞ。
「良いから行くぞ。ただ飯食らいになるなら追い出すからな」
「くっ、卑怯よ!」
「どこがだよっ!?」
まさかヒモにでもなるつもりだったのか? 家にそんな余裕はありません!
「は~、リーガルさん、元に戻ってると良いね」
「雷のこと考えると今の方が良い気もするけどな」
「私は前の方が……どっちも困るかも」
そりゃ我侭だ。
とにかく入る。
カウンターで注文された軽食を作っているリーガルの所まで行く。
今日はどっちだ? この前のは娘が来るからキャラ作りしていたんだと思いたいがあっちが素なら見た目通りだ。逆にオネエが本性なら詐欺で訴えても良いレベルだが。
「リーガル、新人の登録を頼む」
どっちだ? どっちが来る?
「まっかせて~ん! あらやだっ! コールくんったら新しい女の子連れて、これはホムラちゃんピ・ン・チッ?」
オネエの方だったか~
少しでも期待した分、残念感が強い。焔の視線の温度がマイナス行ってるけど今は無視。
雷は、固まってるな。でも渡された書類はキッチリ書いてる。項目の少なさに驚いてるけど。
「アズマちゃんって言うのね。ホムラちゃんやコールくんと同じであんまり聞かない響ね。それにしても皆16歳だなんて、若いって羨ましいわぁ~」
やっぱキツい。そろそろ依頼受けて出て良いだろうか? 雷は1人で雑用頑張ってくれ。
俺は2度目だから細かい説明は聞き流す。
「じゃ、アズマちゃんはコールくんたちとCランクの依頼を受けれるけど、どうするの?」
「一緒に受けさせてもらうわ。その方が効率的ですもの」
「わかったわ。コールくん、優しくしてあげなきゃ駄目よ?」
は? DランクなのにCランクの依頼受けれるの? 初耳なんだけど?
「Dランクの冒険者だけに限った処置よ。CランクがBランクと一緒に居てもBランクの依頼は受けれないわ」
そうかい。
とりあえず良さげな依頼を見繕う。洞窟のミノタウロス討伐、洞窟が未知数だから却下。森の昆虫魔獣の駆除、これなら良さそうだ。
リーガルに依頼書を通して森に向かった。
「あそこまで動揺したのは久しぶりだわ」
リーガルに大分衝撃を受けたらしい。俺も最初はそうだったよ。
「悪い人じゃないんだけど、キャラが濃すぎるんだよねっ」
「そうね。あれでは違う意味で疲弊してしまうわ」
「だよねっ」
言いたい放題だな。
駄弁っている内に森に到着。雷と出会ったのとは別の森だ。あっちが針葉樹ならこっちは広葉樹が生えている。
さて、依頼内容はカブトムシ、ローパー、カマキリをそれぞれ3体ずつ倒してこいとのことだ。このメンツで負けはないだろうな。
だが今日は雷に人間の武器に慣れてもらわなければならない。そして今日は俺の銃は散弾ではない。威力のない散弾ではカブトムシの甲殻に対して無意味なのだ。
オッチャンが調子にのって魔石を入れる弾倉を変えるだけで散弾と単発の変更ができるようにしやがったのでこの銃は弾の種類が変えられる。リボルバーの弾倉を開くとスリットが2つあり単発、散弾を簡単に変えられるようになっている。最初は驚いたが、まあ使い分けができるのは嬉しい。単発の方は要練習だが。
「人間の武器に頼ることになるなんてね。でもこの斧槍は手に馴染むわ」
森に入って即行で遭遇したカマキリを両断した雷が皮肉気に呟いた。
オッチャンの武器に文句はないようだ。調整が終われば更に馴染むだろう。
俺も空飛ぶカブトムシを地面に蹴り落とし、銃口を突き付け撃ち抜く。
あ、銃で叩くの忘れた。
「でも人間の武器使っちゃったら本当に手応えないよね。これだったら家で凍と遊んでるほうが楽しいよ」
カマキリの首に法剣を巻き付け、一気に引き戻すことで喉(?)をズタズタに引き裂いた焔が退屈そうに言った。
そう思ってくれるのは嬉しい限りだが、その殺し方は酷いと思うんだ。あれじゃ息できなくて少しずつ死んでいくよな?
その後襲い掛かってきた触手ウニョウニョのローパーも瞬殺して討伐部位を切り落として王都に向かった。カマキリは鎌、カブトムシは角、ローパーは中央の太い触手だ。
「あれ? 火の匂いがするよ」
王都の直前で焔が不思議そうに言った。炎琅である焔は何かが焼ける匂いに敏感だ。
王都で火事でもあったのだろうか?
だが王都が見えてくるとそれどころではないと分かる。俺たちが居る王都の反対は全体が燃えている。
「っ! 急いで戻るぞ!」
「うんっ!」
「分かったわ!」
王都に入ると魔獣が暴れているのが見えた。冒険者や騎士が戦っている。
「ヒャッハーッ!」
家の上に居た蠍が騎士に飛び掛り、押し倒し、その大きな尻尾で頭を刺し潰した。その目は赤く発光している。
「黒スライムかっ!」
「なんですって!」
「本当みたいだよっ。目が赤く光ってるもん!」
これは面倒なことになったな。アレに効くのは焔の法剣くらいしかないんだが。とにかく冒険者に混じって魔獣を倒し、黒スライムを攻撃してみるか。
俺が銃で撃ち抜く、元に戻った。
焔が法剣で切り裂いた、霧散した。
雷が斧槍で叩き切る、霧散した。
斬撃なら消えんのかよっ!?
「魔獣を倒したら出てくる黒い霧は斬撃武器で対処しろっ! 打撃は効かないぞっ!」
こんな簡単な弱点だったのかよ。どおりで雷狼得意の殴りが通じないわけだ。
そして俺は魔獣を倒すことに専念するしかない。氷の爪で切り裂きたいが人間の前でやるわけにはいかない。そうなると黒スライムに対して無力だ。
大声で指示を出したのは良いがまともに魔獣を倒せているのは俺たちだけだった。黒スライムに乗っ取られた魔獣は微妙に頭が良くなっているようで不意打ち、連携して人間を攻撃している。
もうちょい頑張ってくれよ!
「1番隊は防御陣を展開! 2番隊は前に出て3人で1匹を攻撃! 5番隊は後方の魔獣を穿て!」
聞き覚えのある声で指示が飛び、それに合わせて騎士が動き始めた。
大きな盾を集団で構える者たち、3人で魔獣を囲む者たち、盾の集団の後ろで弓を一斉に構える者たちだ。
「お前たち、よくここを死守してくれた。礼を言うぞ」
王子だった。馬に乗りどこかから急いで来たらしい。馬がゼーハーゼーハー言ってる。
「マジ勘弁してくれよ! 尻が3つに裂けるとこだったじゃねえかっ!」
馬、頑張ったな。でもその下品な顔を焔と雷に向けるな。2人が下ネタ言いかねない。
「私はこの区域の掃討する。お前たちは武器屋のある通りに行け!」
事情は分からんが俺たちは信用されているみたいだ。
この王都がなくなると幻狼の情報が入らなくなる。
それは困る。
このまま村に帰らないというのは有り得ない。
最近は人間の作る食事が美味しくて旅をしてみたくなっているが、まずは両親にそのことを伝えなければ。
今まで育ててくれたのだからそれくらいは言うべきだろう。
それに焔の親父さんの安否も確認しなければいけない。
やはりこの王都はまだ必要だな。
「凍、どうするの?」
「正直、私たちにこの王都を守る義理はないわよ?」
2人には悪いが俺にはこの王都が必要だ。まあ俺が気持ち良く生きていくためだけのプライドだから2人には関係無い。
「俺にはまだこの王都は必要なんだ。2人は自由にしてくれ」
この2人のことを束縛する気はない。誰かを束縛するのは苦手だよ。
「私は凍と一緒に居るよっ」
「私、ペットの面倒は最後まで見る主義なのよ」
物好きな幻狼たちだ。
ま、有難く頼らせてもらうけどな。
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