第94話 太鼓判

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 待たせていた馬車に乗って、あたしたちは、カルト寺院の敷地を出た。


「あんたら二人、やっぱりいらなかったわね」


 あたしは、ランとスーに言った。


「おまえがカルト寺院に行ったのを、知ってて待たされる身にもなれ。寿命が縮むわ」


「ルマレクさんに、本当に連絡をとるつもりなのかと冷や冷やしてました」


「そんなわけないじゃない」


 ぷくくくく。


 アイアンが、肩を震わせている。


 ぎゃはははは。


 とうとう、堪えきれないといった様子で笑い出した。


「なに、おまえら、カルト寺院の聖女だったの?」


 アイアンの目には、涙が滲んでいる。


「なんか揃って変な服だしてきたなと思ったんだよな」


「はったりよ、はったり。『白い輝きホワイトシャイン』以外知らない話なんだから、誰にも内緒よ」


「言ったって誰も信じねぇよ」


 アイアンは、太鼓判を押した。


「だって、おまえらが、聖女様だぜ」


『聖女』だ『教皇』だと言ったって、信者以外には、意味のない肩書だ。


 もともと、探索者は、権威なんか興味ない人種の集まりである。


 あたしら三人の経歴を知っても、アイアンの態度は変わらなかった。


「いや、笑いを堪えるのに苦労したぜ」


 人の顔を見て、にやにやする。


「へぇ、おまえらがねぇ」


 ぷくくくく。


 こいつ。


「焼くよ」


 あたしの脅しなんか通じない。


 ぷくくくく。


 アイアンは、馬車が、うちの店につくまで悶えていた。

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