第14話 進級試験
ルーク達とアビサルの戦いから数ヶ月が経過した。ルーク達学校の生徒には詳しいアビサルの情報は公開されなかった。ルークも気になっていたが調べる方法も無く諦めていた。
その間何事もなく日々が過ぎ去って行った。
年が変わり騎士学校の進級試験が始まろうとしていた。成績優秀者の集まりであるルーク達のクラスには進級試験を突破出来ずに留年した生徒は居なかったが他クラスには少ないながらも存在した。
進級試験には実技と筆記の大きく分けて二つ存在する。ルークは実技についてはそれほど心配はしていなかったが問題は筆記であった。
転入してから毎日のように勉強会をクラスメイトのハラルト達と行っていたがそこでは常に自分が教えてもらう側であり、他の人と比べて学力が劣っている事を実感していたのである。
「今日もみんなありがとう」
日が傾き夕方になった頃、教室に集まったハラルトとペトラを含む10人ほどのクラスメイトにルークは勉強のお礼言う。ちなみにここにミカルはいない。彼は勉強会には参加していなかった。
「気にするな。こっちも勉強になるからな」
代表としてハラルトがそう言うと他のクラスメイトは彼に賛同する様に頷いた。ルークはいつも勉強を教えてくれる彼らに頭が上がらないほど感謝していた。いつかは彼らにお返しをしようと心に決める。
「いよいよ、来週から進級試験だな」
ハラルトは机の上に出していた勉強道具を片付けながら呟いた。それを聞いたルークは進級出来るか不安になり渋い顔をする。
もし、自分だけ進級出来なかったらそう思うと片付けている手が重くなる。
「あまり根を詰めないほうが良いわよ」
そう言いながらルークの肩を叩いたのはペトラだった。渋い顔をしたルークが心配だったのだろう。
「そうは言っても筆記試験が心配で」
「わかるけど来週には試験が始まるのよ。実技の試験もあるんだから筆記が心配で体調崩しましたってのは笑えないわよ」
ペトラの言うことも正しかった。実技に向けて自分の体調をベストに持っていかなければならない。
「もう来週からは試験かぁ」
ペトラの言葉を聞いたクラスメイトが憂鬱そうに呟いた。試験が不安なのが自分だけではないとルークは感じ少し安心したが気が抜けないと自分を律する。
「まぁ、各自自分のベストを尽くすしかないからな。みんなで一緒に進級しようぜ!」
ハラルトの言葉に全員は「おぉー!」と声を上げて手を上に振り上げる。気合いが入ったところで解散となりそれぞれは帰路に着いた。
学園の寮に住んでいるルークは自分の部屋に着くと直ぐに勉強の復習を始める。
みんなに追いつくには勉強会だけの勉強では足りないと思い家に帰ってからもルークは勉強を行っていた。
「疲れたな」
疲労を感じたルークは手を止めてそうぼやいた。もう今日はここまでにしようか。そう思ったルークの視界にふとエミリーから貰ったペンダントが入る。
ルークはそれを握るとあの時の怒りと悔しさと情けなさを思い出す。そして、自分が心に決めたことを再確認する。
魔族を倒し世界を平和にする。
「よし!」
気合いを入れ直したルークは再び勉強を始める。あの時の様な事が起きない様に少しでも自分を高めるために。
勉強に集中したルークは夜が更けていくのを気が付かなかった。
それから1週間が過ぎてついに試験当日となった。試験は1週間行われる最初の3日間は筆記試験、次の2日間は実技試験の予定だ。
ルークは席に着くと若干の寝不足であったため欠伸が出そうになりそれを噛み殺す。両手で頬を叩き眠気を飛ばして気合いを入れる。
気合いを入れていると横からペトラの声がした。
「眠そうだけど大丈夫?」
「ちょっと眠いけど全然平気」
「そう。なら良いけど。お互い試験突破できる様頑張りましょ」
心配そうな顔をするペトラに平気だとアピールする為に笑顔をみせる。彼女は納得した様なしていない様な何とも言えない顔をする。
「ペトラは結構ルークの事を気にするよな」
ペトラとルークは話をしているとそこにハラルトがやってそう言う。
「まぁね。ルークはちょっと危なかしいのよね」
「そうか?」
ペトラの言葉にハラルトが疑問を投げかけるか彼女自身もそう思った理由を言語化出来ないのか口籠もってしまう。危なかしいと言われたルークは自分のどこにそう言われる要素があるのかわからなかったが深くは追求しなかった。
「まだ、試験には時間があるし今のうちに予習しとくよ」
ルークはそう言って話を切ると試験勉強を始めた。二人とも勉強を始めたルークを見て自分の席へ着き勉強をする。
勉強を開始してから少ししてマルクスがやってくる。
「全員。机の上は筆記用具のみにしてくれ。今から試験用紙を配布する」
マルクスの言葉にルーク達は筆記用具のみを残して片付けを始める。片付け終わったのを確認してから試験用紙が配布された。
裏側にされて配布された試験用紙を前にルークは緊張のせいなのか心臓が大きくなる。
目を閉じて深呼吸をする。
やれる事はやった後は全力を出すだけだ。そう心の中でルークは思う。
「時間だ。試験始め!」
マルクスの言葉に一斉に試験用紙を表にして問題を解き始めた。
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