第15話 実技試験

 三日間の筆記試験が終わる。ルークはその解放感からグッと背筋を伸ばす。凝り固まっていた筋肉が気持ち良く伸びる。


 試験の出来は八割から九割ほど答案用紙を埋めれたためそこまで悪くはない。進級の目安として六割正解すれば実技がよっぽど悪くなければ大丈夫だ。

 実技にはそれなりの自信があったルークは筆記が乗り越えられて一安心する。


「気が抜けている様だけど進級試験はまだ終わってないぞ」


 後ろから声をかけてきたのはハラルトだった。


「確かに明日からは実技の試験だよな」


「そうだぞ。体調崩して実技で実力が発揮出来なかったら今までの努力が無駄になるよ」


 ハラルトの言う通り実技に自信があっても当日実力を十分に発揮出来なければ意味がない。まだ、気を抜いて良い段階ではない。


「よし! 今日は早く休んで明日がんばるぞ!」


「張り切り過ぎて眠れませんでしたってなるなよ」


 怖い事をにやけながら言うハラルトにルークは苦笑いをして帰宅した。


 帰宅したルークはハラルトの言葉を思い出しいつもより早めに就寝の準備して明日に向けて眠りについた。







 実技試験初日は主に持久力や身体能力の検査で、前日にしっかりと睡眠をとり万全のルークは自己ベストを記録して悪くない結果を残した。


 そして最終日、この日の試験内容は先生との一対一で行われる模擬戦であった。


 万全の状態で室内の試験会場に向かうルーク。試験会場には模擬戦を行う先生の他にも記録用紙を持った先生が数名いる。


「来たねルーク君。緊張するだろうが今までの成果を十分に発揮してくれたまえ。ちなみに、攻撃は当てるつもりで全力で振るってくれて構わない」


 模擬戦の対戦相手であるマルクスが木剣を片手にルークの準備を待っていた。直ぐにルークは木剣を取り出して中段に構える。

 ルークが構えるとマルクスとの間に記録用紙を持った先生がやってくる。


「それでは試験を始めます。よーい、始め!」


 記録用紙を持った先生が試験開始の合図をする。ルークは先ず様子見のためマルクスをじっと見つめる。


 しばらく2人は見つめ合っていたが、ルークの様子見に痺れを切らしたマルクスが言う。


「来ないのかいならこちらからいかせてもらう!」


 マルクスは僅かかな時間で力を溜める。筋骨隆々である彼の筋肉が更に一回り大きくなったかと思うとルークへ突進する。


 フェイントのない直線的な上段からの切り下ろしであったがそのスピードとキレに驚きながら木剣でガードする。木剣同士がぶつかり大きな音がしたかと思うとルークは後方へ吹き飛ばされる。


 バランスをとり何とか転ぶのを防ぎマルクスを見ると追撃とばかりに迫って来ていた。今度は左から右への横薙ぎを木剣を縦にして防ぐ。再び木剣は大きな音を立て、ルークは右へ吹き飛ぶ。


 今度は直ぐに体制を立て直して相手を牽制する。


「反射神経は中々だね」


 マルクスは余裕の笑みを浮かべながらルークを評価した。


 余裕があるマルクスに比べてルークには余裕がなかった。それはたった二撃であったがそれを防いだ事により腕が痺れていたのである。後一撃まともに防げば木剣を持っていられなくなるのは明白だった。


 攻撃は最大の防御と考えマルクスへ剣を振るう。フェイントをかけながら切り付けるがその全てを悉く避けられる。


 全てを避けられた焦りにより若干大ぶりとなった瞬間、それを待っていたかの様にマルクスはルークに木剣を振り下ろす。


 避けれるタイミングではない。しかし、木剣で防いでも耐えきれない。そこでルークは耐えるのではなく受け流す事にした。


 上手くできる自信はなかったがやらなければ負ける。負けたくない一心でルークは木剣を振るう。


 木剣同士が衝突するが上手くマルクスの攻撃を受け流す事に成功して、受け流されたマルクスはバランスを崩し前傾姿勢となる。


 その瞬間を逃さずルークはマルクスの顔目がけ剣を振るうがそれもギリギリで体を仰け反らして避けられる。

 追撃を振るうルークだったがど同じタイミングでマルクスの左の蹴りが脇腹へ襲う。それによりルークは左へ派手に吹き飛ぶ。

 

 吹き飛んだルークは壁に衝突して尻餅をついてしまう。追撃を警戒して直ぐに立ち上がろうとするがマルクスか追撃してくることはなかった。


「時間です。試験を終了してください!」


 試験終了の合図と共にマルクスが近づき手を差し伸べる。それをルークは握り立ち上がる。


「最後は中々良かった。蹴りのダメージを抑えるため横に自分から飛んだのは良い判断だ。それに生徒の一撃を食うつもりは無かったが最後の一撃は私に掠っていたぞ」


 ルークは最後のマルクスの蹴りを横に自分から飛ぶ事でダメージを最小限にしていた。咄嗟の判断を褒められて満更でもなく笑顔になってしまう。


「それとルーク君。疲れているところ悪いのだが校長が君の事を読んでいるから校長室まで行くように」


「わかりました」


 ルークは直ぐに休みたかったが、マルクスに言われて試験会場を後にして校長室へルークは向かった。


 

 

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