第6話 騎士学校での日常
お腹も膨れ食休みをしているとペトラが思い出したかの様に語りかけてきた。
「そうそう、ミカル ティーミには気をつけた方が良いわよ」
「あぁ、確かにルークは平民ぽいしミカルには気をつけた方が良いかもな。騎士の家系か貴族しか認めないって感じだし。ちなみに俺とペトラは騎士の家系ね」
「学校内では身分は関係ない事になってるけど、そうは言っても中には身分をひけらかすやつらがいるから気をつけてね」
「わかったよ。それでミカルってどんなやつ?」
「金髪でいっつも眉間に皺が寄ってるおっかないやつだよ」
ハラルトの言葉にルークは挨拶の後に睨みつけてきた人物を思い出した。彼がミカルならあまり関わり合いたくない。
「にしても不思議だよな。うちのクラス成績優秀な貴族と騎士家しかいないのに何でルークが転入生してきたんだろ? 普通他のクラスだろ」
「ハラルト! 失礼でしょ!」
ハラルトの言葉を聞いてペトラは肘で脇腹を小突いて注意する。
「あっ!ルークすまん」
「いいよ。成績優秀者のクラスならハラルトの言う通りだし。まぁ、多分俺がこのクラスに入ったのはこれが原因かな」
ルークは手を前に出すと剣の遺物を亜空間から取り出す。
「すげぇ! まさか遺物か?」
「ちょっと何食堂で出してんのよ!」
「ごめん」
ペトラの言葉に直ぐに謝り剣の遺物をしまう。
ペトラはため息をつきハラルトは興味津々な目でルークを見つめていた。
「ハラルトの言ったとおりさっきのは遺物だ」
「いいなぁ、遺物があれば実技の試験満点だろ」
「いや、学校の授業や試験では遺物は使えないんだ」
「それはそうよね、遺物なんて使ったら授業の意味がないもの」
3人はそんな雑談をしながら昼休憩を過ごした。
昼休みが終わり午後の授業が始まった。
午後の授業内容もルークにとっては難しくノートをとるのが精一杯で授業内容の理解はおいついていなかった。
1日目の授業が終わり、自分の知識不足を実感したルークは成績が良いらしいハラルトに相談する事にした。
「ハラルト、ごめんけど勉強教えてくれないか?」
「いいぜ」
ルークの申し出に勉強道具を片付け中のハラルトは笑顔で了承してくれた。
「で、どこがわからないんだ?」
「……ほぼ全部」
言い淀みながらハラルトにほぼ分からない事を伝えると別の誰かが悪態をついてきた。
「全部わからないとはやはり平民ごときはこのクラスに相応しくないな」
そちらを振り向くと険しい顔をした男子生徒が睨みつけていた。
「ミカル、そうは言っても転入初日だ。ルークが授業に付いていけないのも仕方ないだろ」
ミカルと呼ばれた男子生徒はバンっとハラルトが座っている前の机を叩いた。
「転入初日かなど関係ない。無知な平民が居るだけでこのクラスの品位が下がるんだよ」
ミカルとハラルトはしばらく睨み合っていたが、ミカルが舌打ちをしてルークに向き直る。
「遺物使いだろうが何だろうがお前みたいな雑魚はさっさと田舎に帰れ」
ミカルはそう吐き捨てると教室を後にした。
「ミカルが言った事は気にするな。それより今日の復習しようぜ」
ハラルトはそう言うと片付けていた教科書とノートを出して勉強の準備を始めた。
勉強中わからない箇所があるたびハラルトに質問したが彼は嫌な顔一つせず全て答えてくれた。
自分で成績が優秀と言うだけあり説明はわかりやすくルークでも理解する事ができた。ハラルトのおかげで何とか今日受けた授業を理解する事ができた。
「ハラルトありがとう。おかげで助かったよ」
「気にするなよ。こっちも勉強になったし。それじゃあ、いい時間だし残りは明日にして帰りますか」
ルークはハラルトと明日も勉強する約束をして帰路に着いた。
翌日、今日も座学の授業に参加するルークだったが一日ハラルトと勉強したぐらいでは授業についていけなかった。
午前の授業を何とか凌いだルークは昨日と同じように机に突っ伏した。
このままではハラルトに迷惑をかけっぱなしになってしまうし、戦術などの色々なこと知らなければ魔族を倒し世界を平和にできない。そう思うとルークの中に悔しさと苛立ちが溢れる。
「おーい。大丈夫?」
声のする方を向くと心配そうなペトラがルークを見ていた。
「自分の勉強の出来なさに絶望してたとこだよ」
「出来ないなら出来る様に努力するだけよ。昨日、ハラルト勉強してたし努力を続けたら出来る様になるわよ」
ペトラはルークの肩をポンポンと叩きながらそう言った。
「ペトラの言う通り凹んでても仕方ないか」
「そうよ。ほら、食堂に行きましょ?ご飯食べないと午後からの実技授業耐えれないわよ」
ルークはペトラに促されるまま食堂に向かった。
食堂に向かう途中ハラルトと他数名のクラスメイトと合流して一緒に食事を行った。
食事が終わり午後の実技授業が始まる。
実技授業は校庭で行われるため皆が校庭に集まると担任のマルクスがやってきた。
「全員いるな。では、私がいいと言うまで校庭を走れ」
ここから地獄が始まった。
体力の限界まで走らされてそこから筋トレをさせられた。
ルークは立ってられないほど疲れ校庭に仰向けで倒れ込んだ。周りを見るとルークと同じように倒れ込んでいる生徒がちらほらいる。
「よーし、暫く休憩した後模擬戦を始める」
マルクスの言葉にまだやるのかと絶望をしていると近くにハラルトがやってきた。
「おつかれ、ちゃんと水分とってるか?」
ハラルトにも疲労が見えるがルークほど疲れていない。その証拠に汗を掻き軽く息を荒げているが立って動けている。
「とってるよ。にしてもハラルトは凄いなあれだけやってまだ元気そう」
「慣れだよ。それに俺より凄いやつはいる」
ハラルトが指差す先を首だけ動かし振り向くと疲れを見せていないミカルがそこにいた。
「あいつは口は悪いが文武共に優れている」
いつか追い付きたいそう思いルークなミカルを見ていると目が合ってしまった。ミカルは目が合うと不機嫌そうな顔をして近付いてくる。
「頭も悪ければ体力もないとはな。お前には何が有るというんだ」
「……」
ミカルの言葉に何も言い返せずにルークは黙り込んでしまった。それに苛立ちを覚えたのかミカルは語気を強める
「この後の模擬戦、私と戦え。貴様ごときこのクラスに相応しくない事を思い知らせてやる」
「ミカル、いくら何でもそれは……」
「黙れハラルト。平民もちろん逃げないよな。バカで愚図でその上腰抜けか?」
ミカルの発言に苛立ちを覚え疲労で動かない足を必死で動かして立ち上がりルークはミカルを睨みつける。
「その勝負受けて立つ」
「おい、ルーク挑発にのるな」
ハラルトの静止を無視してルークはなおもミカルを睨みつける。それをミカルは鼻で笑う。
「根性は認めてやらんでもない。まぁ大怪我をする前に荷物を纏めて田舎に帰るんだな」
ミカルはそう言うとその場を離れていった。
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