第2話 古代遺跡
「ルークー、朝だよー」
エミリーの元気な声で目が覚める。昨夜の雨風の音のせいか眠りが少し浅い。ルークはまだ眠く起きる元気がない。もう一眠りしようと布団を頭にかぶりもう一度目を閉じる。
「起きてよ。もう少ししたら朝ごはんできるから」
もう一度寝ようとしたがそれを拒むようにゆさゆさと体を揺らしてくる。流石に揺らされては眠ることができない為起きることにした。
「エミリー、おはよう」
眠い目を擦りながら上半身を起こすとエミリーからタオルを渡された。
「ほら、ご飯前に顔洗って来なよ」
朝の挨拶だけ行い大きなあくびを噛み殺しながら顔を洗いに向かう。
顔を洗い終わると少しだけ眠気は残っているが目が覚めた。雨風は収まっているのか外は静かで窓からは陽が差し込んでいる。
受け取ったタオルで濡れた顔を拭き終わるとエミリーの声が聞こえて来る。
「ルーク、朝ご飯できたよ」
どうやら朝食が出来たようだ。2人を待たせる訳にもいかないため急足でリビングへと向かう。
リビングに着くと既に料理が机の上に並べられエミリーとダナさんはそれぞれの席座っていた。俺用に用意されたご飯の前に座るとすぐに食事が始まった。
朝食を食べ終わり、そろそろ家に戻ろうとするとエミリーが話しかけてくる。
「ルークは今日何するの?」
「とりあえず、家に帰って家と畑が大丈夫か確認してあと、村でも見回ろうかと思ってる」
「私も畑とかが大丈夫か見て回ろうと思うからもし何かあったら手伝って欲しいの。駄目かな?」
「何かあったらいつでも言って、エミリーの頼みなら何でも聞くから」
「ルーク、ありがとう」
それだけ言葉を交わした後、ルークは自分の家へと向かった。
家に着くと外にはルークの父親がスコップなどの道具を持って家から出て行こうとしている所だった。
「ちょうどいい所に帰って来たな。昨日の大雨で土砂崩れが起きて道が塞がったらしい。今から復興作業を手伝いに行くからお前も来い」
父親に言われるがままに後を着いて行くとそこには道の土砂の撤去作業をする村長を含めた数人の男性がいた。
この道はこの国の王都へ繋がる最短の道であり、ここの道が使えないとなるとかなりの痛手であるため早急に復旧する必要がある。
そんな重要な道の復旧作業を行い数時間が経ち皆が休憩をするタイミングで1人の村の男性が村長の元に走ってやってきた。
「村長、山で古代遺跡が見つかりました。どうやら土砂崩れの影響で埋まっていた入口が表に出た様です」
村長と男性の会話に聞き耳を立てているとそんな会話が聞こえてきた。
古代遺跡とは人類側の文化圏でしか見つかってないとされている大昔に存在した文明が残した遺跡で歴史的価値が高いがそれ以上に重要なのは現代文明では構造が分からず作れない
遺物は過去に魔族との戦争で劣勢だった状況を遺物一つで一変させた記録さえある。
ただし、遺物は使い手を選ぶうえに見た目や能力は千差万別、もちろん使い方がはっきりとわかる遺物の方が珍しいため使い勝手はかなり悪い。しかし、それでも放置できないほど強力であり、古代遺跡で見つかった遺物の影響で戦争が終結する可能性さえある。
「すぐに、王都へ報告をしよう。この道は使えないため遠回りだが別の道を使い迂回して行くしかないが復旧を待つより早かろう」
村長はそう言うと書状を書く為か土砂の撤去作業の指揮をルークの父親へ任し自宅へと戻って行った。
その日村長は土砂撤去作業に戻ってくる事はなく1日が終わった。
嵐を無事耐え切った自宅でルークは目を覚まし、畑仕事の手伝いを行い、昨日と同じように土砂撤去作業へと向かった。
現場に着くと既に数名が作業を始めていた。
ルークが作業を始めると村の同年代の男子が話しかけてきた。
「ルーク、一緒に古代遺跡見に行ってみないか?」
「こら、危険だから古代遺跡には近寄っちゃだめだぞ」
どうやら、ルークへの誘いを大人が聞いていたようで注意される。
男子は不満そうに「はーい」と返事をしてその場から去り作業へと戻って行く。
ルーク自身古代遺跡が気にならないかといえばそうではなく、あのまま注意されなければ一緒に古代遺跡へ行っていただろう。
注意されたため一緒に行く事はないだろうがこっそり一人で古代遺跡の中を見てみようと心に思い土砂の撤去作業を始めた。
数週間後、土砂の撤去作業もほぼ終わり日常を取り戻しつつあるが、古代遺跡が見つかったと聞いた人々が一眼見ようと集まりいつもより少し村が賑やかになっている。
古代遺跡には村長を含む数名で調査をしたようだが遺物は見つかっていなく、詳しい調査は王都から派遣される予定の調査隊に任されるようだ。
村長は古代遺跡入るのを禁止にしているがそれを破りこっそり入る者もいる。古代遺跡で何も見つかっていなく復興にも忙しかったため見張りはいなく王都の調査隊が来るまで黙認されている。
ルークは古代遺跡に入ってみたいと思っていたがチャンスがなかなか無く今日まで古代遺跡に入れていない。しかし、やっと今日そのチャンスがやって来て噂で聞いた古代遺跡の場所までやってきたのである。
古代遺跡の入り口は大人が余裕で出入りできるぐらいの大きさである。外から覗いてみると光の当たる範囲は見えるが他は薄暗くてよく見えない。
辺りを照らす為に持ってきたランプに火を灯しいざ古代遺跡の中に足を踏み入れたタイミングで肩を叩かれた。
一瞬大人の誰かに引き止められるかと思ったが違った。振り向いた先に居たのは幼馴染のエミリーだった。
「いけないんだぁ。村長に立ち入り禁止って言われてるのにこっそり遺跡に入ろうとするなんて」
意地悪な笑みを浮かべながらエミリーが話しかけてくる。そんな笑みを浮かべてくる時は大抵何かを要求してくる合図だ。
「わかった。何が欲しい?」
「物はいらないかな。私も連れてってくれるだけでいいよ。もちろん危ないから駄目なんて言わないよね?」
こういう時の彼女は何を言っても聞かない。仕方がないとため息をつきエミリーと2人で古代遺跡へ入って行く。
古代遺跡の中は埃っぽく独特な匂いがする。100mほどの道が続き途中途中に部屋がある。部屋の中には落石で埋まっている場所や何やらよくわからない機材が置いてあったりと様々だ。
部屋の探索もそこそこにしてルーク達は部屋の一番奥へとやってきた。
一番奥は円状の部屋になっており円の中心には四角い台座が置かれていた。
ルーク達は台座に近づきそれを調べて見たが台座の上面には解読不能な文字らしき物が掘られているだけで他には何もない。円の外周部も調べたがこれといって何かがあるわけでもなかった。
「やっぱり特に目ぼしいものないね」
少しつまらなそうにエミリーはぼやいた。他の遺跡を調査した人が言っていた通りで少し味気なさをルークも感じていた。
もしかしたら遺物が見つかるかもと淡い期待をしていたが現実はこんなものかと感じ誰かに見つかる前に村へ帰ろうと考えた。
「エミリー、そろそろ村に戻ろうか」
エミリーはその言葉に頷きぺたぺたと触っていた台座から手を離しルークの元へやってくる。来たことを確認してからルークは出口へと歩いて行った。
「遺物があるかと思ったんだけどね」
「そんなに簡単に遺物が見つかってたら魔族との戦争なんてとうの昔に終わってるよ」
「ルークが言ってる事も分かるけど女の感がここには何かあるって囁いてるんだよ」
そんなくだらない事を話しながらしばらく歩くと見えていた出口の光が大きくなりあと少しで外へ出る所で2つの人影が入り口に立った。
村人の誰かにバレてしまった。怒られるかな。ルークがそんな事を考えていたが直ぐに違和感に気がついた。
あの人影人間ではあり得ない形している気がする。そう思い恐る恐るランプで人影を照らした。
そこに居たのは村人ではなく魔族であった。
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