優しい人
伸ばされた手を取るのにも、それ相応の勇気と覚悟が要るんだ。もしもこの手が海月みたいに頼りないなら、私は君と底まで落ちてしまうから。浮き世には歪んだ鏡しかないから、私は自分の形も知らないままだ。滴る雫にそっぽを向いて、たった一枚の木葉として息を吸う。こうやって私はまたひとつ、優しくなれずに目を瞑る。雪が降る前に会えるといいね。
(それでも浮かんでほしくないなんて、そんなのただの傲慢だ。)
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