第9話 「ここが、なんかこうぎゅーってされるの」


そして、それからしばらくして。

「みーちゃん、ここがねなんだかこう・・・ぎゅーってされるの。ドーンっていうのかね・・・説明できないけど・・・」


そう言いながら胸を抑える祖母。

肩で息をするような苦しそうな様子はない。


「それはどんな時にそうなるの?いつも?ご飯食べた後?」


「うーん、歩くとぎゅーってするし・・・ご飯食べてもぎゅーってされるの・・・。でも私、若い頃に胃潰瘍で胃を半分取ってるから、少しの量のご飯でも胃がいっぱいになって、胸が苦しくなるのかなぁ」


祖母は若い頃、胃潰瘍で胃を半分切除している。

そのため、お茶碗に軽く盛った一人前にまでいかないご飯でも、胃もたれを起こしたりお腹がいっぱいになり動くのが辛くなる。


私も遺伝で胃が悪い。

20代前半で、毎日胃もたれが続きしまいには戻してしまう事が多かったので、人生初めての辛い胃カメラをして、慢性胃炎と食道裂孔ヘルニアだと診断された。

今はもう症状はないが、あの頃の辛さはもう経験したくない。

だから、私は見逃してしまった。


「あぁ〜・・・わかる。胃がムカムカして、水も飲みたくなくなるよね」と返す私。


「あ!みーちゃんも?!やっぱ遺伝だねぇ。ごめんね、こんなの受け継がせて。」


「そんな事ないよ、私はゆきちゃんの孫で幸せだもの」といつものように2人笑いあっていた。


そして、祖母は強がりだ。

人が耐えられない痛みでも、大丈夫と耐えて頑張ろうとする。

強がりと知っていながら、私はどの程度祖母が強がりなのかをまだよく知っていなかった。


その時の祖母の写真を見返すと、瞼は下がり目を思いきり開いても少し眼球が見えるくらいで、顔全体も浮腫気味だった。


この時に病気なのでは?という思いを持って、病院に連れて行っておけば入院なんてしなかったのだと思うと、当時の自分を思い切り叱ってやりたいくらいだ。

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