第5話 後悔の後に変わった習慣
先輩の事故から、私の習慣は一転した。
何をするのにも、「気が向いたらやろう、今疲れてるから。」と思っていた私の感情は「今しかない。この瞬間は今しかないから今やるしかない。」という考えに変わっていった。
こんな辛い経験が無ければ、私は一生あの時のままの私だったろう。
しかし、それと同時に大切な人を無くさないと変われなかった自分にも腹が立つ。
だが、正直なところ過去のことを悔やんでいても仕方の無い事なのだ。
その先輩は生き返らないし、事故も白紙になる訳が無い。
それなら、自分が毎日後悔のないよう何事もやり遂げる事で、もし後悔をしてしまう出来事が訪れたとしてもダメージを最小限に抑えることが出来るのではないかと考えるようになった。
ここまで前向きに考えられるようになるのにかなり時間もかかったが、これは私の中での1つの成長だと思って受け入れている。
私の中で変わった習慣、1つ目。
「何事も後回しにしない」
元々、忘れっぽい私だからこのやり方はかなり合っていた。
頼まれた事を忘れて、ごめんなさいで済むのが1度や2度ならいいと思うが、この忘れっぽい私なら何度だって同じ事を繰り返すと思うのだ。
そのため、後でやるという選択肢を無くし何か頼まれたり気付いたら、その場ですぐ動くようになった。
そのせいか、祖父母のいつも飲んでいる薬を薬局まで取りに行ってきて欲しいと頼まれると、スティルバーグ(私が乗っている自転車の名前。(笑))に跨り往復10分以内で薬を調達するのだ。
この速さには祖父母も驚き、目を大きく見開いて口まで大きく開けていた。
だが、私の本音は「さっさと要件を済ませて大好きな祖父母と1分でも同じ時間を過ごしたいから早く帰ってきた」というところなのだ。
この本音は照れくさくて祖父母に言ったことがないので、初めてここに吐き出す。
この私の本音を知った皆さんは、どうか内緒にしてください。
私の中で変わった習慣、その2。
「感謝の気持ちをしっかり伝える」
「ありがとう」という言葉にも色々種類があると思うのだ。
誕生日を祝ってもらって、喜びのありがとう。
自分のやるべき事を誰かが代わりにやってくれて、申し訳ない表情でのありがとう。
遅刻しそうな時に、急いでお弁当を持ってきてくれた母にサラッと言うありがとう。
だが、私はやはり相手の目を見て「ありがとう」と伝えたい。
後悔したくないから。
それからは「ありがとう」の伝え方もだいぶ変わった。
私の大好きなりんごジュースをスーパーで5本も買ってきてくれた祖父母には、「5本も?!重かったでしょう?私のために、ありがとうね。」
私の大好きなお煮しめを作って届けてくれた母には「あら!お煮しめのおかわりはありますか?・・・なーんてね!沢山ありがとう。」
私の誕生日に大好きな向日葵の花束を贈ってくれた旦那には「この日のために予約して、受け取りに行ってくれたの?!お仕事忙しかったのに、素敵な日にしてくれてありがとう。」
ただありがとうだけでなく、どういう事をしてもらって、こんな気持ちになったから嬉しい。ありがとう。までを伝えられるようになった。
私の中で変わった習慣、その3。
「何かある事に、お墓参りにいく。」
曾祖母と、祖母の後に生まれその後栄養不足のため大人になれなかった妹達がいるお墓が、私の家から自転車で約15分くらいのところにある。
亡くなった人は「お墓参りに来て、顔を見せておくれ」なんて言えないし、寧ろ曾祖母や祖母の妹達に関しては私がお墓参りに行ったとこで「アンタ誰や?」なんて思っているかもしれない。
急な坂の上の、その更に上にあるお墓だから辿り着くまでがかなり大変だ。
そのため、足腰の弱い祖母はもうその坂を登れない。
けれど、窓の外を見ながら言うのだ。
「坂を上がれるかわからないけど、お墓参りに行きたいねぇ」
幼い頃、祖父母に手を引かれて夏休みは毎年お墓参りに行った。
ここに誰が入ってる、この人は私とこういう関係の人よ。なんて言われても、その頃はわからなかった。
大好きな祖母がお墓参りに行きたいのに行けないなら、私が代わりに行って祖母の気持ちを伝えてあげるのが、私なりの正解と解釈した。
祖母が情緒不安定になり始めた時。
祖母が去年緊急入院した時。
祖母が退院した時。
私が結婚して祖母が大喜びした時。
あなたの大事な娘さん、今こんな感じですよ。
いつもこんな話をして、笑ってます。
親だから不安に思う事もあるかもしれないけど、私があなたの娘さんの隣で見ておきますよ。と、祖母の活動記録を報告しに行っている。
そろそろ、曾祖母も私が誰であるのか分かってもらえた頃だと思う。
お墓を綺麗に掃除し、沢山のお花を添えて、今の時代にはこんな飲み物や食べ物がありますよ、とお供えする。
雲の上で喜んでくれているだろうか。
もし良かったら、次はどんなお供え物が好みなのか教えて欲しい。
大事な祖母の大事なお母さんや妹達が、食べたいと思うものを持っていってあげたいのだ。
ちなみに、先日は三浦半島に眠っている曽祖父のお墓参りにも行ってきた。
誰かがお墓参りをした形跡があり、お線香とともにタバコが1本添えられていた。
曽祖父は喫煙者だった。愛煙家だ。
私も喫煙者である。
曽祖父のように、私も何十年後かにお墓に入って眠ったら頼もうと思う。
「メンソールのタバコを添えてもらってもいいですか?」
まぁ、そんな注文をする前にヘビースモーカーだった両親と祖父母に「禁煙しなさいよ〜!」とこっ酷く言われている。
そう言われても笑って流している私は、まだ子供だ。
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