弐
日本の首都、東京は面積としては
1つの都市、地域にしては異常なまでに
そんな中で何の
『
日本では妖魔が発生すると警察機構に所属する鬼、
そして鬼になる権利が認められるのは四鬼に所属する者だけであり、それ以外の者が鬼に成る事は例外無く
そんな犯罪者達の中、影鬼と名乗り活動する
それが男が所属する影鬼であり、男はその中でも蒲田で活動している者の1人だ。
駅前から伸びる大通りに面した事務所でありながら看板は無く空きテナントだと思っている地元住民も居る程に
十字路の
しかしながら同居人である朱夏としては不満も多い。
「洗濯物は全部
「まあまあ、知ってるでしょう、影鬼は日陰者なんだよ」
「言葉通りに日陰に入らなくても良いでしょうに」
「名は体を表すと言うじゃないか」
朱夏が船から連れ出されて2週間、脱出時には船のスタッフを何人か殺害して朱夏の事が記述された資料を焼いたりと乱暴な手段を取った翠の印象は1つも変わっていない。
影鬼としての仕事を3日に1回程度受けているが
事務所に居る時はネット
駄目人間かと思えば街のチャリティイベントやボランティア活動をしたり朱夏のような
「何で反社会的勢力の影鬼がボランティアしたり警察より市民の為に動いたりしてんのよ」
「『悪党が募金してはいけない』って法律は無いだろう?」
「……確かに」
「俺は影鬼から仕事以外は好きにしろと言われてる。逆に仕事以外まで口出しされるなら影鬼にも所属してないだろうし」
「自由人」
「犯罪者なんて多かれ少なかれ、だと思うけどね」
事務所の中、事務机に置かれたノートPCを操作しながら応える翠に朱夏は机に腰を乗せて
見た目だけなら翠は20代前半なのだが朱夏にしてみればそれすら疑わしい。整形で見た目年齢は有る程度は誤魔化せる。朱夏からすればその程度に疑わしいのが翠という男だ。
そんな時、事務所の扉がノックされた。
「ここに直に来る客が居るなんてね」
「ふふん、
これでは家政婦ではなく
少し驚いた顔をして入って来たのはフォーマルなスーツ姿の女だ。明らかに朱夏を見て驚いており、直ぐに事務机に居る翠に視線を移す。
「ここはいつから
「ベタな
女の言葉を流した翠が朱夏を見れば何も感想は無いようで事務所の奥に有る
何の反応も無い朱夏に
「あら、
こんな怪しい事務所に来るには整った身なりの女は地味な
「ウチの助手は優秀でね」
「え?」
「……本人が驚いてるんだけど?」
「ふふん」
「いや、ドヤるところ? まあ良いわ、仕事の話をしましょう」
翠の知り合いが来た事に朱夏は何の反応も示しておらず女としては意外だった。
しかも翠が人を
それでもコーヒーを
時間も限られているのでコーヒーで口の中をすっきりさせて早速仕事の話を始めた。
「明日の
「そうか」
「その荷物を強奪する連中から守って」
「あ、そっち?」
「ちょっと面倒なのは護衛が他にも居るのよ」
「他? もしかして、四鬼か?」
「ご
「四鬼だけじゃ足りない理由は、聞かない方が良いか?」
「そうね。いつも通り何も聞かないで欲しいわ」
「分かった。四鬼はこっちも狙ってくるんだろう?」
「ええ。共闘は出来ないわ」
「それが事前に分かっていれば充分だ」
「必要な情報と考えられる危険はこれに
女は
その無機質さに朱夏は不気味さを覚えたがそれは彼女がそれなりに裏家業の雰囲気を知っているからだろう。その自覚は有るので朱夏は特に何も言わずに2人の会話に口を
女は席を立って朱夏と1度目を合わせ、事務所を出て行った。
コーヒーを気に入ったのは本心のようでしっかりと楽しめる量が減っていた。
「影鬼ってこんな仕事もしてるの?」
「時にはね」
「影鬼が四鬼の仕事を手伝うって、マジ?」
「意外と有るんだけどな。四鬼の方でも全国の妖魔退治の為に人手が
「互いの
「多少、って
「分からないんだけど、影鬼にとって妖魔を狩るメリットって何なの?」
朱夏の当然の質問に翠は困ったように
2週間で
「実は俺も知らない」
「えぇぇ……」
「まあ影鬼に所属している異端鬼はそれぞれに事情を抱えているからな。正しく答えるなら、人による、だ」
「じゃ影鬼本家の目的は?」
「それこそマジで知らないな。というよりも知らない方が良い」
「え?」
「仮にも警察とタメ張る裏組織のボスだ、俺みたいな
「そんなレベルなの?」
「そんなレベルなの」
嫌そうに顔を
「何て所に来ちゃったんだろ」
「人生何が起きるか分からないものさ。君は四鬼、シスター、影鬼と
「シスターは特殊も特殊よ」
「四鬼から影鬼よりは少ないと思うけどね」
考えると
翠もこれ以上に軽口を言うつもりは無かったようでノートPCを手元に寄せる。事務所にタイピング音を響かせながら次の仕事の為に翠は羽田空港の
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